見出し画像

「ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました」書き下ろしショートストーリー公開!

「ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました」ノベル第1巻の発売を記念し、キャラクター人気投票を2024年5月に開催しておりました。

1位にランクインしたキャラクターは、超スペシャルな特典が!
★原作者・エリーゼ先生による書き下ろしショートストーリー
★イラストレーター・がわこ先生による描き下ろしイラスト

推しへの愛が試される「おひとり様一票」にて開催された人気投票は、たくさんのファンからのアツいコメントを頂いて終了!
強者ぞろいのランキングに天使も真っ青!?
気になる結果は――

担当編集はひっそりとオーレリアに投票しておりました。
今後も加速する「悪い子」から目が離せませんねッ!!



見事第1位に輝いたのは・・・
ゴスロリに身を包む魔を統べる女神・バビロン!

好物はふわふわのパンケーキ。カリカリベーコンが乗っていると喜びで小躍りしちゃいます。

それでは、第1位のバビロンが主役となったスペシャルショートストーリー&イラストを本記事にてお楽しみください…♡


バビロン様の幸せな時間


 ワタシには誰にも言えない悩みがある。誰かに言ったら鼻で笑われるだろうけど、ワタシにとっては切実な悩み。

「パンケーキ……。パンケーキが食べたいわ」

 そう、パンケーキ。ワタシを悩ませる魔性のスイーツ……。急に思い出したら無性に食べたくなって、何をしていてもパンケーキが脳内にチラついて集中できないの。

 そんなに食べたいなら、料理が上手なお姉ちゃまに作って貰えば良いじゃないって? そうは思うのだけれど、お姉ちゃまに作って貰ったら絶対に『はいバビロンちゃん、あ~んして? あ~ん♡』ってされる……。あの羞恥には耐え難いものがあるわ。確かに美味しいけれど、味が思い出せなくなるぐらい恥ずかしいのよ。

 妹のカレンちゃんはワタシと一緒で料理の腕前は壊滅的だから無理、ワタシよりも酷いもの。それにカレンちゃんはよく食べるし、山盛りのパンケーキを作るのは大変だから……。

 じゃあ、信者に奉納して貰う? 絶対ありえないわ! だって、魔神の好物がパンケーキってバレたら、これから毎日パンケーキを奉納されて、ワタシ達のところに山盛りどころか世界樹盛りみたいなパンケーキが届くようになるのよ? 絶対に食べきれない、拒否するわけにもいかない、絶対に信者に好物を明かしてはいけないの。

「作るしか、ないわね……」

 作るしかない……。料理は苦手だけど、お姉ちゃまがいつも作っている姿を思い出して頑張って作れば、ワタシにだって作れるはずなのよ!

 まずはエプロン、お姉ちゃまが使ってるのを借りようかしら……。お、大きすぎるわね。汚しても良い服に着替えたほうが良いかしら……。い、いいえ! 何を怖気づいているの! 魔神は料理をするのに服を汚したりしない、ワタシにエプロンは不要よ! 別にこれはお姉ちゃまとの体格差に絶望した結果、自暴自棄になったわけではないのよ! 本当なんだから!!

「ざ、材料! 確か、保管庫に……。うっ、寒いわね……!」

 いつも使う食材を長持ちさせるのに作った氷壁の保管庫、いつ入っても寒いわね……。いつもこんなところに出入りしてご飯を作ってくれてるの、なんだかお姉ちゃまに申し訳なくなってきたわ……。いつもありがとうって、今度伝えなきゃ。

 ええと、まずはパンケーキの材料よね。卵と小麦粉とお砂糖でいいのかしら? 他にも色々と必要だと思うのだけど、いつも見ているだけだからわからないわ。いつも使っているのはこれだから、まずこの三つは間違いないわよね。

 あ! そうだわ、ベーコン! カリカリのベーコンが乗っていないとダメよ、絶対にダメ! バターやはちみつも良いけれど、ワタシはカリカリのベーコンが好きなの。これは絶対に外せない……わ……? 

「ど、どうして、ベーコンが何種類もあるのかしら……。いつも、どのベーコンを乗せているのかしら……?」

 どうしましょう、ベーコンが沢山あるわ。いつもどれを食べているかわからないし、一番小さい切れ端になっているのを持っていこうかしら。

 ちょっと待って? ワタシがさっき取り出したのも、本当に小麦粉かしら……? 他にも別の粉があったらどうしよう、不安になってきたからもう一回確認して……あぁ~……!! 他にも粉があるわ! どれが何に使う粉なの!? どうしてこんなに粉がいっぱいあるの! どれを使えば……。一番サラサラしてるのを持っていけば良いわよね? 大丈夫、大丈夫よね?

「お姉ちゃま達に見つかる前に、早く作らないと……」

 後はそう、お姉ちゃまが作っていたのを思い出して作れば良いのよ。まずは小麦粉……だと思われるものに、卵を入れるのよね。一個で大丈夫かしら? あ、あら? 全然混ざらない、もっとこう、トロッとしたものになるはずなのだけど。他にもなにか入れなければならないのかしら……?

 あ、そうだわ! 牛乳を入れていた気がするわね! そうしたら早く、牛乳を……どれが牛乳の瓶なの……? これは、うっ……。酸っぱい臭いがするわ、多分ヨーグルトね。こっちは、うーん……? うーん……??

「多分これね」

 きっとこの、匂いがあんまりしないのが牛乳だわ。後はこれを混ぜて焼くだけ、どのぐらい混ぜれば良いのかしら? ちょっとずつ牛乳を入れて混ぜるべきよね、あっ……。

「……絶対に入れすぎたわ。どう見ても緩いわね」

 こういう時は、小麦粉を増やすしかないわね。卵ももう一個入れて、こんなに生地が増えて美味しくなかったらどうしようかしら。でももう引き返せない、やるしかないのよ。

 なんだかそれらしいものに仕上がってきたし、後は焼くだけ……砂糖ってどのタイミングで入れるのかしら? 先に入れておいたほうが良いわよね、乗っかってるの見たことないし。スプーンに一つだけで、良いわよね?

 後は火を点けてフライパンを温めて、生地を投入して焼くの。お姉ちゃまは結構じっくり焼いてたわよね? その間に、隣でベーコンを焼いちゃいましょう。小さく切ってカリカリにしたいわね。さて、ここからは焦らずじっくり焼いて……なんだか、焦げ臭い気がするのだけど? ちょっと裏を見てみようかしら……? あ、あっ! ひっくり返すものを用意していなかったわ! 大変だわ、ええっと、ええっと……!!

「あ、あったわ! 早くひっくり返さないと……あっ……」

 ま、真っ黒になってるわ……。炭みたいになって、ワタシはパンケーキをカリカリにしたかったわけじゃなくって、ベーコンを……あ!! ベーコンも!!

「ベーコンまで、炭みたいに、なってるわ……」

 なんということ。パンケーキもベーコンも、カリカリを通り越してパキパキの炭になっちゃってるじゃない……。でも、ワタシが作ったんだから責任を持って食べるべきよね。しょうがないわ、だってパンケーキを作るのなんて初めてなんだもの。初めてにしては多分、まだ原型を保ってるだけ良いほうよ。絶対にそう。

「ん~……♡ バビロンちゃん、これは天ぷら粉ね~♡ これは豆乳、それでこれは甘塩よ♡」

「い゛っ゛!?」

「焦げてる。炭。ぱりぱり」

「あ゛っ゛!!」

 お姉ちゃまとカレンちゃん!? い、いつからそこに居たのかしら!? フライ返しを持ってくるまでは居なかったわよね!? ど、どこから……!!

「ねえね、塩と砂糖もわからない?」

「このお塩は、お砂糖そっくりだからわかりづらいのよ~?」

「確かにそっくり。でもちょっとしょっぱい」

「あ、あのね、いつから……」

「ん~。エプロンが大きすぎて諦めた辺りからかしら~?」

「最初からじゃないの!!」

「バビロンちゃんが一生懸命お料理してて、あら~可愛いわ~と思って~♡」

「ねえね、腹ペコ?」

「ぐぅ……!」

 最初の方からずっと見られてたじゃない! 慌てすぎて全然気が付かなかった、なんて恥ずかしいの!! うう、どうせワタシの失敗作を見て笑いに来たのだわ……。

「はい、カレンちゃん半分♡」

「ん! 食べられないこともない。ねえねの努力が詰まった味がする」

「ん~♡ 美味しくな~い! 外がパリパリ、中は生焼け、味も独特だわ! 頑張った頑張った! じゃあ、バビロンちゃんが食べたかった、カリカリのベーコンが乗ったふわふわのパンケーキを焼きましょうか♡」

「…………はあ。結局、お姉ちゃまに作って貰うことになるのね」

「あらあら、バビロンちゃんも一緒に作るのよ? 一緒に作ったら、今度から自分で作れるようになるじゃない~」

 お姉ちゃまと、一緒に? 黒焦げしか作れないワタシなんかが、一緒にやったらまた酷いのが出来ちゃうんじゃないかしら……。

「ほ~ら、大丈夫! 次はきっと美味しいのが出来るわ、何度でも挑戦よ~!」

「……わかったわ。頑張ってみる」

「応援してる~」

「あら、カレンちゃん? 材料を運ぶのを手伝うのよ~? カレンちゃんが一番食べるんだから、手伝ってね?」

「う、うん。手伝う……!」

 作り慣れているお姉ちゃまの邪魔をするんじゃないかって、不安と心配で最初はいっぱいだったけど、どの材料を使えば良いかとか、いつも入れてる隠し味のこととか、弱火とか強火とか、ワタシの知らないことを沢山教えてくれて……凄く、楽しかった。

 それに、とても美味しかった。いつもお姉ちゃまが作ってくれる、厚みがあってふわふわのパンケーキだけじゃない。ワタシが作ったぺしゃんこで変な形のパンケーキも、結局料理に興味を持ったカレンちゃんが作った大きすぎてお皿からはみ出しそうなパンケーキも。テーブルを囲んで『ワタシが作ったのはちょっと焼きすぎた』とか『カレンちゃんのは大きすぎてベチョっとしてる』とか、あーだこーだ言いながら笑顔で食べるパンケーキは、本当に美味しかった。

「また、一緒に作りたいわ」

「あらあら、バビロンちゃんが一人で作れるようにって教えたのに~?」

「お姉ちゃまのいじわる」

「うっふふ♡ は~い、また一緒に作りましょうね」

「ん、夕食が楽しみ」

「カレンちゃん、たった今山盛りのパンケーキを食べたばっかりよね? もう夕飯の話が出るの!?」

「カレンちゃんがいっぱい食べるから、お姉ちゃまも作りがいがあって楽しいわ~♡」

 これからは出来る限り、お姉ちゃまの料理の手伝いをしようと思う。だって一緒に作ったほうが、いつもよりもずっと美味しいものが出来るんだもの。

 でもまずは……。そうね、これからのお話よりも大事な、これまでのことを先にやらなくっちゃいけないわね。

「お姉ちゃま」

「ん~? どうしたの、バビロンちゃん~♡」

「今日は……う、ううん。いつも! あ、あり、がとう……。ごちそう、さまでした……」

「うっふふふ……♡ はい、どういたしまして」

「ん! お姉ちゃま、美味しかった。ごちそうさま!」

「カレンちゃんも、ありがとう~」

 いつも美味しいパンケーキを作ってくれてありがとう、ティスティスお姉ちゃま。これからも迷惑をかけると思うけれど、いっぱい料理を教えてね。ごちそうさまでした。

「ところで、昨日作っておいたパンケーキもあるの〜♡ 自信作なのよ、まだ食べられるわよね? はい、バビロンちゃん! あ~んして、あ~ん♡」

「え、あ……!?」

 追加で現れたお姉ちゃまの自信作、いちごクリームパンケーキタワーも本当に美味しかった……。美味しかったのだけれど、暫くはパンケーキが食べたい欲求はやって来ないかもしれないわね。ご、ごちそうさま、でした。


改めまして「ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました」キャラクター人気投票にご投票いただいた皆様、誠にありがとうございました!
今後とも本作品へのアツく温かい応援をよろしくお願いいたします。

スペシャルCM公開中❤(バビロン:大久保瑠美、リンネ:阿保まりあ)

アース・スターノベル公式サイト 第1巻特集ページはこちら

第2巻も8月20日発売決定です👏 ぜひゲットしてくださいね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?