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KFC前でのvegan活動に思うこと⑤

 今回の記事は、アベマプライムが取り上げた過去の主なヴィーガン関連討論の考察2つ目です。

グリーンカルチャー金田さん出演回

2021年9月29日放送のこちらもフル版は既に配信期限が切れており、ダイジェスト版のみ下のリンクで視聴可能です。
【肉食】「迫害されるのは悲しい」畜産農家&ヴィーガンと考える脱炭素と食文化 牛のゲップだけが悪いのか?

 この回にリモート出演されたのは、独自のプラントベース食品開発と販売で有名なあのグリーンカルチャ―を運営している金田さんです。ヴィーガンの方なら一度は買い物をされたことがあるのではないでしょうか❓私も「菜食つゆの素」にはものすごくお世話になっています😊

聞く姿勢

 金田さんご自身もヴィーガンです。司会から紹介を受けた直後の最初のコメントで「(中略)みなさんの意見もぜひお聞かせいただきたいと思ってます。」とおっしゃるあたり、ヴィーガンへの警戒心を解く「聞く姿勢」を大事にしてらっしゃる方であることが伺えます。畜産農家の方とセットでゲストに呼ばれていることに対して面白い試みだと思うという主旨の発言もされているので、金田さんの聞く姿勢は決してポーズなどではなく、本心から異なる意見を聞いて参考にしたいと考えておられるのだと感じます。

圧迫質問への対応

 前回記事にて、ヴィーガンになる動機には動物の他に環境と健康があると書いたのですが、ヴィーガンという言葉を作った英国ヴィーガン協会の人々の思いは間違いなく動物目線です。それにも拘わらず、司会の白石氏は金田さんへ、動機は環境と健康のどちらですか?となんと動物を除いた二択で尋ねました。動物目線があることを彼が知らないはずはなく、圧迫質問の一種と言えると思います。金田さんは、どちらでもなく動物愛護目線だとはっきり答えてらっしゃったので、大変好印象でした。私なら「なんでその二択なんですかね⁉」と嫌みの一つも言ってしまいそうなところですが、そんな無駄なことは一切おっしゃらず、さらりとにこやかに回答されていました。

主張の仕方

 金田さんは、その後の議論でも「工業的畜産の倫理的問題点」といったヴィーガンの主張についてはしっかりと伝えつつ、他者を責めたり否定することのない発言の仕方をされていたので、ノンベジの視聴者の方々もきっと聞きやすかったろうと思います。肉食をゼロにするのは難しいと考えていると前置きしつつ、減らそうという意識の大切さを説いたところも受け入れられやすかったのではないでしょうか。

視聴者コメントの様子

 そんな金田さんに対しては「まともでよかった」というコメントが数多く寄せられています。そんなにもヴィーガンはまともではないという前提なのかと複雑な気持ちにもなるのですが、もう一歩進んだコメントを拾うと次のようなものがありました。

ヴィーガンでもフェミニストでも、こういう人が先頭に立ってメディアに出てくれば、しっかり考えようって人も増えそう。 ちなみに自分は考えた結果、普段は野菜メインの食事を心がけつつ、肉食べたいなーというときは食べる感じにした。

K.Hさん

 K.Hさんには200件以上のいいねがついていました。

 相手の話をよく聞き、聞かれたことには的確に答え、異なる意見を決して全否定せず穏やかに話し続ける姿勢は、異なる意見を持つ人の理解を得る上でとても大切だということが伺えるコメントだと思います。
 「他人を変えることはできない」とはよく言われることで、せいぜいきっかけを作るくらいのことしかできないと私も思います。相手を全否定して一方的に持論をまくし立てても、反発心が芽生えるだけで決して上手くは行かない気がします。

番組内容のあらまし

 この番組も、前回の工藤さん出演回と同様にヴィーガンの方が見るには苦痛な内容です。ただ、前回よりは金田さんから「ヴィーガンは、命をものとして扱う工業的畜産を特に問題視している」という話が出たり、畜産農家さんの口から「涙を流して命をいただく」という言葉が出たりと、牛たちの境遇を辛く思う人がいることを語るシーンが少しはありました。

 しかしながらやはり定番の「牛をやめたら鶏や豚の消費量が増えるのでは?」や「牛はだめで鶏や豚はいいの?」といった発言も出てきます。そして、視聴者の思いを代表する意図なのかご本人が答えを欲しているのかわかりませんが、司会の平石氏は繰り返し「牛は罪悪感を持って食べなきゃいけないのか?」という問いを発します。
 リモート出演ゲストで、後半の大部分をメインでお話しされた北海道大学農学研究院の小林教授は、その問いに対して「農耕には1万年の歴史があり先人の育種改良の努力と各地で培われた食文化があるから今さら牛やめましょうという話にしてはいけない」という旨の回答をします。

 おそらく平石さんにとっては欲しかった回答のひとつと思われ、大きく頷くように相槌を入れていたのですが、私を含め動物搾取の撤廃を望むヴィーガン目線で見ると、この回答は受け入れられないものです。「先人の方々の努力に敬意を払うこと」と「その成果を継続すること」とは直結しませんし、「文化だからやめられない」で片付けるのは人間主体の考え方であり、それで動物搾取を正当化することはできないと多くのヴィーガンは考えるのではないでしょうか。

 なお、小林教授の回答に対して異を唱えたのがスタジオ出演のパックンでした。「1万年前は温暖化が問題にはなっていなかった。今はエアコンの設定温度に気をつけたりしているのに肉は我慢しなくてもいいんですか?」という内容の質問を差しはさみます。小林教授の答えは「人間が増え過ぎたのが元凶」というものでした。ヴィーガンにはアンチナタリスト(反出生主義。人々が子供を持つことは不道徳だという信念。)でもある方が多くおられます。私自身はそうではないのですが、数を減らさなければならないということには同意です。

 ちなみにパックンは、牛肉が大好物であるものの環境に対してものすごく罪悪感があって、「ビーフほど悪いものないのにビーフほど美味しいものもない!」という悩みがあるそうです。ここまで正直に語る人を初めて見たように思います。実際どうなのかはわかりませんが、少なくとも番組内では牛たちへの罪悪感はまったく感じられませんでした。

番組を見ての個人的感想

 環境への罪悪感を語るパックンを見ていて、牛たちには何も感じないのかなぁ?ということが疑問でした。「かわいそうだけど食べたい」は「環境に悪いけど食べたい」よりも認知的不協和度(自己矛盾への不快感)がはるかに高い気がするので、①意識しないように自分をコントロールしてしまうのでしょうか?②意識はしているけれど認めたくないので口にしないのでしょうか?あるいは③本当に何も感じないのでしょうか?
 個人的にはたいていの人は①か②に見えていて、③の可能性を感じた人というのはあまりいなかったのですが、パックンは環境への罪悪感を清々しいほどに認めていたので②は考えにくく、初めて③のタイプの人かもしれないと思いました。

ヴィーガン実業家のありがたさ

 前回の工藤さんと今回の金田さんに共通するのは、他人に多くを求めたり、ましてや責めたりしないことでした。彼らはきっと他人に求めるよりも自分が行動することに価値をおいてらっしゃるのだろうなと思います。そうして切り開いてくださったヴィーガン食材の製造と販売の事業は、動物たちの置かれた惨状に気が付き生活を変えたいと思い立った人たちを支えてくれるとてもありがたいものです。
 お二人の語り口のやわらかさは、もともとの性格なのかもしれませんが、自身もヴィーガンというマイノリティの立場でビジネスを展開する上でぶつかる様々な困難を乗り越える中で培われた面もあるのではと思います。

 今回は、アベマプライムの金田さん出演回について思うところを書きました。読んでいただきありがとうございます。次回は、弁護士の箱山由美子さん出演回について書く予定です。

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