定点観測6

書くのを思いっきり忘れていた。つまりは精神状態が良いと言うこと。

いや、そんなこともない。

一昨日の晩、気を病んでいるわけでもないのに、気を病んだ青年が物語の中心にいる映画を見てしまった。粗雑に詰め込まれていた鞄の中身をひっくり返すように、半年以上前の感情を机の上にぶちまけた。

覚えのある名前を急にその青年が口走ったのがいけなかった。私の部屋にそれがあることを思い出す羽目になり、細心の注意を払う必要があることを思い知らされる。

まんまと架空の青年の口車に乗せられ、当時は寸前で辞めていた方法に手を出してしまった。のに、何も起こらなかった。想定していた最悪のことは何一つ。最悪にたどり着く前に遭遇するであろういくつかの小さな最悪にすら出会さず、ただ怯えていた頃の自分も、今の自分もやや惨めだった。


12時になる手前、急に連絡が来た。ここ数ヶ月、急に再会した気にかけている男の子からだった。少しの間なら電話ができると、何を焦っているのかわからないが、彼は私と話すことを望んでいた。数時間前に理由もなく着信を入れた私に対してなのか、別の要件に対してなのかわからなかったので、あなたは友人と過ごしている時間を大切にした方がいいと断ったが、そうではなかったようだ。

15分程度談笑をし、彼の不用心で無邪気な笑い声に、嫉妬と安堵を感じた。どこまでも素直で優しく遠慮をしていることを曝け出す無遠慮さが愛おしかった。


特別な感情を与えてくる人間に救われることをまだ許せないでいる。

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