「伺か異形頭ゴースト祭2024」感想

自作品を除く、全ゴーストの感想です。


something:obscure

スタイリッシュなイケメン異形であり、アニメーションがすごい。
外骨格あるいは牙のごとく動く3対の肋骨のようなものに対し、ふさふさの黄金色の尻尾というアンバランスさがゆえの存在感がある。
そして妙な色気を持つ服飾と細身のボディライン、波打ち帯電する1対の角と、頭部以外の異形も素晴らしい。
どうやら欲望に関連する存在であるようだが、一体何者なのだろう。

この世で最も純粋で悪辣、清廉にして汚濁、そして醜く尊いもの

死の象徴でもあるフラットラインをその頭に頂く何者か。
人間であったころに何かが起こり、そして病院で没したようであるが、過去への執着もなさそうである。
生への希望も死への恐怖もなく、そこにあるのはただの諦め。
ユーザがどのような経緯でここに来たのかは不明だが、そこに救いはなく未来もないのだろう。

バイト戦士の悲哀

なにやら大変そうな暮らしの話をしている。
パイロンのロコのバルーンが小さいのは声が小さいのだろうか。
話してくれる内容は、地に足ついたというよりは庶民的と言った感じのトーク。
その日暮らしの苦しい生活の一端が垣間見えるのが、妙に人間臭くある。
ときに人と異なる内容を話しつつも、人と違う異形頭の彼らが悲壮感漂う俗っぽい話をすることに悲哀がある。

ヘルメットウィズクロウ

クロウの軽いけど苦労人な感じ、面倒見のいい先輩感がある。
前任が何度もいなくなってしまったわけだし、これくらい軽く流せないとやってけないのかもしれない。
正体不明のエニグマと退治する仕事である以上、この軽さが救いであり癒やしにもなりそうだ。
エニグマの攻撃アニメーションのうち、クロウに化ける精神攻撃に対する本物のクロウの反応が面白い。
ホラーっぽい雰囲気があるが、彼のおかげでかなり軽減されているところがある。
得体のしれないボスはこちらに対して外面はいいが……いったい何者なのだろうか。
収集要素では、一覧にアイコンが並ぶのが収集欲も達成感もあって良いものだ。

ミュージアム_メテオポリス

近未来の博物館において、現在までの宇宙史を古典として博物館で見るというのは面白い発想。
地球と月のモチーフに、巡る星々という姿は案内員と施設のキャラクターを兼ねていて良い。
史実の宇宙論とSF的な近未来のトークが入り交じるところに幻想がある。
火星のテラフォーミングが終わった後、人類が移住し文化が安定した時代となれば、宇宙開拓は遠い過去になるのだろう。
科学の基本概念を知らしめるための展示に苦労するアンドロイドというのも、本来の技術との差がアンマッチで味がある。
赤い空の元、フォボスとダイモスが回る火星に生きる人々にとって、地球とその月はどのように受け止められているのだろうか。

むざむざザムザ

残滓あるいは敗北者の、その散り際。
得体のしれない何か、超常的な存在がまさに命を散らす直前であるようだ。
へし折られ叩き潰された、もはや生を手放した存在のただ諦めと戸惑いが交じる独白には、もはや説得どころか会話すらもできないのではないかとしか感じられない。
タイトルのザムザ、虫などからフランツ・カフカの『変身』を思い起こさせるが、それもまた人間に理解できる範囲で投影されたものでしかないのかもしれない。

メリー・ゴー・ガール

メリーゴーラウンドの頭というかなり巨大でインパクトのある異形は、重心が取れていると感じるせいかずっしりした安定感がある。
命を対価に始まる雑談はかなり軽い調子のものが多く、それが人外ゆえの価値観か、単なる言葉遊びなのか判別しかねている。
アトラクションとしての彼女は、他のアトラクションにも興味があるようだ。
人が人の見た目を評するように、彼女はそういったものを同類として感じるのだろうか。
いいでしょう付き合いましょう。あなたの回転か私の命の鼓動が止まってしまうその時まで。

らぁちゃんとわたし

そのハートは、ユーザからの親愛の証なのだろうか。
思春期の心はしばしば不思議な挙動をすることがあるが、その反面強い輝きも放つ。
明るくほわっとしたちょっと抜けている部分もありそうならぁちゃん。
ユーザは彼女のことがあまりにも好きすぎる。
きっとこの些細だけど幸せな時間は、いつまでも思い出として残り続けるのだろう。

最期のアフタヌーンティーを、貴方と。

午後のお茶の時間が、彼女は何より好きだったのだろう。
ケーキに紅茶は唯一無二の組み合わせ。
もうその組み合わせもこれが最後になってしまうのだろうけれど。
他愛もない話、しかしこの先もう手に入ることはない時間が、ゆっくりとだが無常に過ぎていく。
散りゆく桜を儚く美しく感じるように、この最後のお茶会がもう二度とないからこそ輝いて見える。

浜辺にて

失われてしまった愛の再構築における初期段階。
包帯の巻かれた奇妙な頭の彼女は、何を行い、何を差し出したのか。
記憶が戻るべきか否か、今は忘却の先にある真実に救いはあるのだろうか。
決定的な何かが後悔と共に失われていて、悔恨の言葉がただ物悲しさを奏でている。

異形列車

乗客の少ない電車は神秘的なものだ。
旅客として乗り合わせた異形存在には、妙に人間臭いものから、子どものようなもの、胡乱な言葉を吐くもの、様々なものがいる。
しかしそれらは、現代に生きる人々の象徴たるものを頭に抱く、彼らのはだけだされた無意識なのかもしれない。
人生に倦んでいる者達のどうしようもない諦観が、電車の中で交差する。
それは一つの悟りに到達したかのように輝いて見える。
最初に会った存在に、夜の列車で渡されたこの手札は、当然信じられる気はしない。
しかしイカサマだと分かっていても夢を見るくらいは構わないはずだ。

益体無しの人生だった

カプトの言う事が色々適当で、その場のノリで喋っている感があって良い。
そしてそこに本質はないし、カプセルの実存もない。
その割にカプセルであるアキのほうが地に足ついた発言をするのはいったい何なんだ。
無限に排出されるカプセルがどこに行くのかも不明だし、おみくじの存在しないラッキーカラーはなんだろう。
妙にシュールで脱力するようなネタが多く、シェルも相まってふわっとしたゆるさがある。

鳥籠の中の■■

自問自答を繰り返し、自縄自縛に陥っていく。
精神を病みつつある姿を見れば、彼に必要だったのが特性を除いてもモーリスであったことがよく分かる。
孤独は思索には必要なのかもしれないが、しばしば局所解に落ち込む。
落とし穴のような思考の泥沼は、もがけばもがくほど沈んでいくがそこに真の答えはなく、ただ彼に塗炭の苦しみを与えるだけ。
いつか終わりがあることが確定しているのは救いだが、ただ嘆きを見ているしかないというのも辛いものがある。


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