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「先生さようなら」 最終回に寄せて

2024年1月期の日本テレビ系列シンドラ枠「先生さようなら」。
ドラマは3/25に最終回を迎えた。

私は主演を務めた渡辺翔太のファンとしてこのドラマを見ていたが、ドラマが良すぎて黙っちゃいられなくなったので、受け取ったことをここに書こうと思う。
(ただの感想なので、考察的なことはしません!ごめんなさい!)

過去と現在。2つの時間軸で進むラブストーリー。私はこのドラマは簡単に言ってしまうと、田邑拓郎のグリーフケアの物語だと感じた。

(ここからは由美子先生との死別前の田邑拓郎を「田邑くん」、死別後の田邑拓郎を「田邑先生」と表記します)

(1)由美子先生と田邑くんの恋

由美子先生は田邑くんと出会って自分を好きになれたんだ。
「私を生きやすくしてくれたのはあなただから。」
この言葉に全てが詰まっている思う。田邑くんは由美子先生の良さをまっすぐに伝えてくれて、周りからどう見られるかなんて一切気にせずいつでも由美子先生の味方だった。田邑くんは先生と生徒という関係で出会ったことも、過去の選択も全部含めて好きだと言ってくれた。2人の間に立ちはだかっていた大きな壁を上手くかいくぐるんじゃなくて、正面突破で越えようとした。そういう田邑くんの愛に、由美子先生の心は動かされたのだと思う。

では逆はどうだろう。
私は、実は田邑くんが由美子先生を好きになった理由を考える方が難しかった。でも全話を見終わった今、2人の始まりを思い返すと、彼は由美子先生の綴る言葉が大好きだったんだと気付いた。由美子先生の言葉が好きで、そこに溢れ出る情緒の豊かさが好きで、その豊かな言葉で自信のない田邑くんの心を埋めてくれた由美子先生だから好きになったんだ。
「あなたはこんなにも素晴らしいじゃない!」ということを、先生としてだけじゃなく、1人の人間として伝えてくれたのが由美子先生だったんだ。空っぽだと思っていた心が、由美子先生で埋まっていく。田邑くんはそれがとても心地よくて、先生といる時間が大好きだったんだろうな。

ずっとお互いのことを思っているのにすれ違ってきた2人が3年後に再会し、やっと思いを通わせることができた7話。わたしが今までに見たどんな告白シーンよりも幸せで美しかった。好きな人の話になると、「どんなところが好きなの?」と聞かれるのはこの世の中の常だと思う。
でも田邑くんの
「全部含めて、今の先生が好きなんだよ」
という告白は、どこが好きとかいつ好きになったとかそういう次元を超えていて、存在自体を肯定する究極の愛だと感じた。
でも、こんなにも美しくて幸せなシーンを見ながら、このあと訪れる由美子先生の死がわかっているという、ある意味残酷なシーンでもあって。

(2)由美子先生との死別

当たり前に続いていくと思っていた幸せな日常が、由美子先生の事故死により突然なくなってしまった。田邑くんは妻の死を受け止めることができずに、一滴の涙も流せずにいた。
「僕の全ては先生で、夢中になれるものはすべて、先生からうまれたものだった」
田邑くんにとって、先生を失うことは全てを失うことと同じことだったんだよね、きっと。

そんな田邑先生の秘めた憂いに唯一気がついたのが城嶋弥生だったんだ。

(3)田邑先生と弥生の恋

きっかけは自分を助けてくれた田邑先生のことを知りたいという思いだったが、徐々に彼の心のうちの悲しみに気づき、寄り添っていく弥生。自分は空っぽだという田邑先生に、先生のおかげで学校が楽しくなったんだということを一生懸命に伝える弥生。「拓郎さんのおかげで人生が楽になった」と言っていた由美子先生と重なる部分があるなあ。

弥生の行動が田邑先生のグリーフケアだったんだよね。
由美子先生の死と向き合えずにいた田邑先生に、向き合うきっかけを与えたのは弥生だし、向き合った上で悲しむ田邑先生の心に寄り添い続けたのも弥生だった。由美子先生の死後、田邑先生が初めて涙を流せたのも弥生の前だった。
そういう行動を、ケアしよういうモチベーションからするんじゃなくて、好きだという思いからできるところが弥生のすごいところだと思う。

(相手が年上だったら、頼り甲斐のある人でいてほしい、弱みなんか見たくないとか思っちゃいそうなもんなのに)

田邑先生は弥生の言葉に救われたんだよね。「悲しいことに大人とか関係ない」っていってくれる弥生に過去の田邑くんも救われたと思う。過去の自分は生徒という立場で、由美子先生を守れなかったから。

ずっと悲しい思いを抱えながらもなんとか笑って教師として働いて。苦しかったけど誰にも言えずにいた、自分で向き合うことさえ怖がっていた思いに気づいてくれた人がいる。
自分のために何ができるか考えて、「先生のこと笑わせます!」といってくれる人がいる。
結局自分なんかダメなやつで、空っぽなんだと思っていた時に、「空っぽなんかじゃない。生まれてきてくれてありがとう。」と真っ直ぐに伝えてくれる人がいる。そんなん好きになっちゃうよね。

でも田邑先生と弥生は教師と生徒で。その上田邑先生は、弥生に惹かれることは、由美子先生を忘れることなんじゃないかと思ってしまう。
「違う。僕が君を好きなんだ。」
先ほど、正解で一番美しい告白シーン(田邑くんと由美子先生)が出ましたが、その数話あとに世界で一番苦しい告白シーンを持ってくるというとんでもないドラマです(褒めてます)。

弥生と離れるために教師を辞めようとする田邑先生だったが、生徒や先生、美術部員たちのおかげで、自分は由美子先生とは違う景色を見ているということに気が付く。
田邑先生は、ここでやっと由美子先生とお別れをする決意ができたんだと思う。
自分の全ては由美子先生だと思っていた田邑先生が、彼女と違う自分だけの景色を見ていることに気づく。そしてその景色を失いたくないと思う。先生に縋っていると思っていたが、本当は自分の足で立てていたんだと気づくことは、彼が由美子先生の死と向き合う上で必要な段階だったんだと思う。

それに気づかせてくれた、向き合わせてくれた弥生に先生は感謝を伝え、「出会えて良かった」と言う。
きっとこの言葉は、弥生が一番欲しかった言葉なんだろうな。先生を苦しめてしまった、先生の日常を壊してしまった、恋なんかしなければ良かったと思っていた弥生が一番必要としていた言葉。「好き」なんかよりもっと言われたかった言葉。

そして卒業式。弥生は田邑先生と初めて話した場所でこう伝える。
「やっぱり出会えて良かったです。先生、さようなら。」
お互いのことが好きで、苦しい思いもたくさんしたけど、やっぱり出会えて良かったと思えた。そして、また会える保証なんてないのに、もう教師と生徒ではないのに、二人はそこで別れを告げる。
もう二度と会えないかもしれないけど、それでも良いと思える恋をしたんだ。
印象的だったのは、初回の弥生の雰囲気と、最終回の弥生の雰囲気が全然違うこと。田邑先生のことを好きになって、たくさん悩みもしたけど、その過程で成長したんだということが伝わってくる表情だった。

(4)由美子先生との本当の別れ

ここまででもうぐちゃぐちゃに泣いてるのに、最後に由美子先生とのシーン持ってくるのずるいですよ、、、
先生との思い出が詰まった部屋を後にしようと引越し準備をしている最中、田邑先生は、由美子先生の小説を見つける。そして彼女の言葉が聞こえてくる。
このシーンの言葉は、全部過去に由美子先生が田邑くんに伝えていたもので。先生の死と向き合うのが怖かった田邑くんにとって、先生の言葉と向き合うことも怖かったんだと思う。自分がいいように解釈して由美子先生を忘れてしまうんじゃないかっていう思いも含めて。
でも由美子先生の言葉は本当にあったかくて、いつも田邑先生を見守っているんだって伝わってきて、田邑先生への愛で溢れていた。
「笑える場所と泣ける場所を見つけたら、そこがあなたの居場所だから。ありのままの自分で生きてね」
田邑先生は、弥生の前で初めて泣くことができたんだよね。弥生に心からの笑顔で出会えて良かったと言えたんだよね。田邑先生の居場所は弥生の隣だったんだね。

彼が先生の死を受け入れるためには向き合うことが必要で、しっかり悲しんでしっかり泣くことが必要だった。由美子先生との最後の時間、田邑先生は、大学生の田邑くんに戻っていたと思う。本当は伝えたかったこと全部伝えられて、言って欲しかったことを言ってもらえたから、彼は前に進む勇気を持つことができた。ほんとグリーフケアだ笑

田邑先生と弥生はその後偶然再開するが、その先は描かれていない。でもきっと、田邑先生が描いたあの絵のように、由美子先生はこれからも二人のことを見守っていてくれるんだろうな。

(5)最後に

ここまで書いてきて改めて気付いたのは、このドラマはありのままの自分でいいんだ、かっこ悪い不完全な自分でいいんだっていうメッセージを強く伝えているということ。

主人公の田邑拓郎は、決して完璧な人間ではなかった。突っ走るあまりに美大辞めようとするし、先生辞めようとするし。
彼ひとりでは、由美子先生と思い合うことも、由美子先生の死から立ち直ることもできなかった。それでも彼のそばには彼を慕うたくさんの人がいて、ありのままの田邑拓郎を認めてくれて、支えてくれた。
(そういう周りの人たちの中にも完璧人間はひとりもいないところがまた良い。)

完璧じゃないから、欠けだらけだから、一緒にいてくれる誰かを求めるし、その誰かの欠けも愛せる。そんなメッセージを私は受け取りました。

こんなにも繊細で、真っ直ぐで、綺麗なドラマが、渡辺翔太の初単独主演ドラマで本当に良かった。
「先生さようなら」
これからも私たちの心の中に。そして、これからも渡辺翔太の背中を押してやってください!


というわけで、「先生さようなら」DVD & Blu-rayは10月2日に発売です!!(唐突な宣伝)

(トップの写真は、最終回後に改めて主題歌の歌詞を読むと涙腺崩壊しましたので、直筆で書いてみたいなって書いたものです笑)

お読みいただきありがとうございました。

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