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人や国の不平等をなくそう

国内及び国家間の不平等を是正する



開発目標10:重要なポイントと推奨事項

・大麻およびその他の薬物の使用、所持、およびその他の関連する活動が司法により裁かれ続ける限り、使用者や所有者、またはその影響を受ける人々が、犯罪者としてや、個人の尊厳を失う行為および彼らの権利が侵害され続ける限り、目標10は決して達成されません。

・薬物裁判は、司法として例外的なシステムを正当化しており、簡素化されマニュアル化された裁判を未だに繰り返しており、被告人の主張を一切聞き入れない裁判を継続している事態は明らかに不当な司法化であり、ましてや公共政策の中心に健康を害する刑事司法の概念があることから、その様な薬物裁判システムは廃止されるべきです。

・持続可能な大麻政策は、誰に対しても平等に与えられる機会であるべきです。過去に薬物関連の有罪判決を受けた人々の合法的な市場へのアクセスを制限せず、禁止主義的な政策によって最も被害を受けた個人や集団は、法的に規制される大麻産業への参入に障壁とならぬよう配慮するべきです。

・人権侵害の影響を受けた人々は、法的に規制された大麻市場における公平性と包括性のプログラムを通じて、歴史的な偏見に対する恩赦と逮捕履歴の抹消を通じて、救済とその見返りの権利を与えられるべきです。

・大麻関連の犯罪で逮捕または有罪判決を受けた人々の圧倒的多数は、少数民族、移民、外国人、亡命希望者または脆弱な環境にある人々や先住民および先住者、社会的に疎外された人々および若者の一部であることから、大麻の政策改革にはメカニズムが必要で、その影響についてはこれらのグループを対象とした継続する監視が必要となります。

・生産、供給、アクセスのさまざまなモデルを重ね合わせる必要があります。医療アクセスでは、誰も置き去りにしないための供給や、成人向けでは営利目的の市場などがあります。レクリエーションの需要では複数モードの規制が必要となります。


ターゲット10.1
2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。

UNGASS 2016成果文書からの運用上の推奨事項
 3-供給(b)(d)
 4-権利(a)(i) 
 6-協力(d)
 7-開発(b)(h)(i)(j)(k)(l)

大麻植物とその市場、および民族植物学の特異性を考慮に入れたこのレポートの目標1〜9で述べた要素を国の大麻政策改革に統合することは、貧困層の急速な所得の増加を達成するためにも必要となります。

より複雑な製品とその生産手段、標準化、コンプライアンス、ライセンス、製品テスト、パッケージング、諸経費、保険コストの追加の負担により、従来の生産者は法的に規制された市場へのアクセスが困難になる可能性があります。これらは、大麻のソーシャルクラブタイプのモデルの例や知的財産保護に依存する可能性があります。


ターゲット10.2
2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

ターゲット10.3
差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。

ターゲット16.b
持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。

UNGASS 2016成果文書からの運用上の推奨事項
1-需要(d)
3-供給(b)
4-権利(a)(b)(h)(i)
5-トレンド(u)(v)(x)(y)
6-協力(a)(d)
7-開発(h)

既に述べたように、方針と慣行による差別は、大麻関連の犯罪で逮捕または起訴された人に不相応な影響を与えることが多く、女性、若者、マイノリティに関してはさらなる格差を広げてしまいます。さらに、「薬物犯罪」に関連した犯罪歴のある人々は、非暴力な犯罪であっても雇用、住居、健康、安全、福祉支援にアクセスする際に深刻な不利益に直面しています。

ハッセマーは、刑法における帰属理論の根拠の中で、「現代の刑事司法の特徴の1つは、予防的正義の概念の悪化である」と説明しています。これにより、「平等と平等な待遇の原則を確保することが常に困難になります」と指摘し、その最も代表的な例として薬物政策を引用しています(172)。

大麻および他の植物、製品、または違法と宣言された物質の個人的使用および所持を禁止、犯罪とする法律、ならびに大麻または他の薬物に関連する非暴力犯罪などは、明らかに差別的な法律と言えます。この意見は、12の国連機関(健康、人権、エイズ、難民、移民、子供、栄養、開発、人口、女性、労働、教育、科学、文化のトピック)によって共有されており、健康上の否定的な結果をもたらすことが証明されていると共に、確立された公衆衛生の証拠に基づいた法律(エビデンスベースで)の見直しと廃止が求められます。これらには、薬物の使用または個人的使用のための薬物所持を犯罪として禁止する法律が含まれます。持続可能な開発のための2030アジェンダの中心的な原則は、「誰も取り残されないようにすること」と「最初に最も遠いところに到達すること」であると訴えています(173)。

(172)Hassemer, 1994 p. 21 (translated by the authors). 
(173)United Nations, 2018.

薬物裁判システムは、収監などの代替案とされる「刑事司法と公衆衛生との間にある協働の形態である」と説明してきましたが、その内実は「準強制的(174)」であることが世界中で判明し(175)、近年世界中で(日本においても)積極的にその様な刑事司法が実施される傾向があります。しかし、実際には薬物裁判は、大多数の選択肢ではなく、例外のシステム、簡素化されたマニュアル的な正義、および大麻を使用または所持する人々への継続的かつ不当な刑事司法制度を正当化する差別的なメカニズムです(特に女性に対して)(176)。そして、公共政策の中心が刑事司法であることで、健康を害するその様な薬物裁判システムは廃止されるべきです(177)。

(174)  Rahman and Crofts, 2013.

大麻およびその他の薬物使用、所持、およびその他の関連活動が司法化され続け、使用者や所有者またはその他の影響を受ける人々が犯罪者となり、住民からの非難や、プライバシーの権利が損なわれ続ける限り、目標10は決して達成されることはありません(178)。

人権に根ざした禁止政策

最近では、3つの異なる大陸(メキシコ179、ジョージア180、南アフリカ181)の3つの異なる最高裁判所は、大麻の所持、使用、栽培、成人による個人使用などを禁止する法律が、プライバシーの権利と人格の自由な発達の権利が侵害されていることを認めました。

国際的な麻薬取締条約制度に裏打ちされたこれらの公共政策を改革し、その慣行を終わらせることは、違法な大麻市場に残された人々を含む彼らの権利を拡大すると共に、彼らが繁栄と発展に積極的に参加する可能性を提供することが急務であり、彼らがヘルスケアと治療にアクセスする権利、土地の所有権、輸送またはコミュニケーションツール、そして貯蓄を可能にします。

何十年も続く禁止政策の誤りを修復する

2008年にカリフォルニア大麻統制局によって行われた大麻政策の公平性と差別に関するレビューでは、「許可対象エリア内の不動産が利用できないことを含む、大麻業界への参入に対する共通の障壁として、スタートアップの資本と銀行のインフラが利用できない点や、業界固有の知識を開発するためのスキルトレーニングを利用できないなどが挙げられ、その理由として、以前の薬物関連の有罪判決などによる点を指摘しています(182)。

機会の平等と差別なく取り組むということは、特定の包括性と公平性プログラムで過去の禁止政策によって最も被害を受けた人々を対象とすることを意味します。それらの人々は法規制の恩恵を受けることを優先すべきです。 大麻の政策は基本的権利を侵害することが多いと認識されているため、影響を受ける人々は重大な人権侵害の場合に救済および賠償の権利(183)、 調査と真実、そして賠償の請求権、補償またはリハビリテーションを受ける権利(184)を付与されるべきです。

175  e.g. in Australia (Birgden, 2008), France (Mission Interministérielle de Lutte contre les Drogues et les Conduites Addictives, 2015), Pakistan (Rahman and Crofts, 2013), USA (Hennessy and Pallone, 2001), Venezuela (Rosales et al., 2008, p. 57.)
176  Giacomello, 2018.
177  ibid.; and Guzmán Rodríguez, 2012.
178  EMCDDA, 2019.
179  Suprema Corte de Justicia de la Nación, 2018; and Embury-Dennis, 2018.
180  Constitutional Court of Georgia/საქართველოს საკონსტიტუციო სასამართლო, 2018. 181  Constitutional Court of South Africa, 2018(1&2).
182  Bureau of Cannabis Control, 2018.
183  Ghehiouèche and Riboulet-Zemouli, 2018.

カナダでは成人による大麻の使用が法制化され、これまでの大麻所持に対する有罪判決を赦免する措置が発表されました(185)。また、米国の管轄区域では、成人の使用を規制する動きと、所持/使用を非犯罪化するなど相反する傾向がありました。オレゴン(186)やメリーランド(187)などの一部の州では、新しい政策であっても以前の政策のまま人権侵害の状態を維持しており、人々の権利を侵害しました。過去の大麻関連の犯罪で有罪判決を受け、救済と賠償の権利を否定することにより(これらの州では、以前に大麻関連の犯罪で有罪判決を受けた人々は、合法産業に参入したり、合法的な大麻事業体で働くことはできません)。 しかし、Alaska(188)やCalifornia(189)のような米国の管轄区域では、以前の違法な大麻関連活動の犠牲者、または逮捕、勾留、収監された人々への補償とリハビリテーションを与えるための措置が講じられています。

大麻政策を策定する際には、廃止する大麻政策によって生み出された人権侵害の申し立てを確実に把握すると共に、法的に規制された大麻政策における公平性と包括性に関する数多くの提案に取り組む必要があります(190)。政府は、有罪判決後の社会復帰の解決策として、影響を受ける人々を合法的な大麻市場に組み込むことを促進する必要があるでしょう。

さらに、体系的な国家主導の人権侵害および歴史的に不当な有罪判決は、過去の違法薬物犯罪に対して、恒久的な方法でそれらのデータを抹消したり、恩赦などで人権や尊厳の回復に務めるべきです。

政策に関連する結果の不均衡を排除する

刑事司法に直面し、人権を奪われ、尊厳を傷つけられる判決を受ける麻薬密売組織のリーダーなどはほとんど存在しない現状があります。そして、法執行機関と刑事制度の選択では、非暴力の大麻取締法の違反者、小規模の売人、および消費者に対して過度の影響を与える傾向があります(191)。

184  Droege, 2018.
185  カナダ政府は2018年10月に発表し、2019年3月に、大麻関連の軽微な犯罪の前科を持つ者の恩赦プロセスをスピードアップする法案を提出しました。しかし、「単純な非暴力の大麻所持の有罪判決の前科によって人生に影響を与えた50万人のカナダ人」(大麻恩赦キャンペーン、2018年)に対処する政策を求める市民団体の利害関係者は、前向きな発展を遂げながら、「将来の政府は、単純な所持のために恩赦をまとめて撤回する可能性がある」ため、「恩赦は十分に進んでいない」とし、「抹消は、有罪判決が取り消されるものとして扱われるため刑事司法記録から永久に削除されるという点では恩赦とは異なる」ためです。 恩赦は「有罪判決の記録を維持します」(Kates and Hrick, 2018).
186  Oregon Liquor Control Commission, 2014, Section 29(2); Oregon Retailers of Cannabis Association, 2019.
187  Maryland Medical Cannabis Commission, 2015.
188  Alaska House Finance Committee, 2018.
189  State of California, 2018; Center for the Study of Cannabis and Social Policy, s.d.
190  Bureau of Cannabis Control, 2018を参照。「Cannabis Equity Re-port」に同じ方向性を持つ内容を含む重要な提案がサンフランシスコ市長に推奨されました(サンフランシスコ市と郡、2017年)。  「データを使用して適格基準を通知し、影響を受けるほとんどのグループがより価値の高い給付を受け取ることができるように段階的な適格基準を設定する一方で、麻薬戦争の影響を受ける幅広い申請者に一部の給付を拡大する」、「大麻で公平な雇用機会を促進するすべてのビジネス、特に以前に有罪判決を受けた個人や麻薬戦争の影響を受けた近所に住む人々のために」そして「大麻犯罪で有罪判決を受けた資格ある市民のために合理化された記録の抹消イベントを開催する」。
191  In Latin America, WOLA & TNI, 2011 (p. 6) note that “most of the persons in prison for drug offenses are there for minor offenses, yet are serving disproportionately long sentences.”

さらに、大麻および薬物関連の犯罪で告発または有罪判決を受けた多くの人々(傾向はすべての管理された植物、製品、物質で類似しており、刑事司法は薬物の種類を区別せず、わずかな違法取引の場合に関して被告の活動の範囲を区別します)(192)は、少数民族(193)、移民、外国人、亡命希望者または脆弱な環境にある人々(194)、先祖代々そこに住む者および先住民(195)、社会的に疎外された人々(196)および若者(197)であることが判明しました。大麻の政策改革には、これらの集団への影響を監視するメカニズムが必要です。


過去12か月(2001〜 2010年)の民族グループによる大麻の使用(198)


民族グループによる大麻所持の逮捕率(2001-2010)(199)

192 WOLA & TNI, 2011 (p. 5)によると、「一般に、法律ではビジネスへの関与のレベルを区別していません。大規模な麻薬密売人と同等に路上密売人や麻薬の輸送に携わる者を、暴力的犯罪と非暴力な犯罪として区別せず扱っています。多くの人が刑を宣告され、他の多くの人は深刻な犯罪または暴力的な犯罪を犯していなくても、最終的には有罪判決を受け刑務所へ収監されています。また、大麻を売っている人がコカインを売っている人と同じ扱いになる可能性があるように、人を追跡、逮捕、起訴する際に特定の種類の物質や、それがもたらす健康へのリスクについても区別されていません。」
193 文書化されたケースのほとんどは北米からのものであり、差別は本質的にアフリカ系アメリカ人、ラテン系アメリカ人、および先住民族に関係しています (以下を参照USA: ACLU, 2013; Drug Policy Alliance, 2015; Harris et al., 2009; Levy-Pounds, 2009; McElrath et al., 2016; Wacquant, 2010; and forCanada: Rankin and Contenta, 2017)
194  Nafstad, 2019, p. 8.
195  Weatherburn et al., 2003; and Villaveces Izquierdo, 2008.
196  Díaz Velásquez et al., 2016.
197  Brusco, 2016; Cano Menoni, 2014; and Saintout, 2014.
198  Extracted from ACLU, 2013, p. 66.
199  ibid., p. 48.

誰も置き去りにせず、社会的分断なく移行します。

違法な市場で懸念されるのは、そのリスクと危害(製品への汚染物質の混入、反社会的組織との繋がり、罰則の結果もたらされる脅威、不当な価格など)が考えられ、それに対する回答として、大麻を使用する人々は、独創的ではあるが古代から続く家庭栽培が最も危険が少ない事を見出しました。

一部の都市(スペイン、ベルギー、ウルグアイ)(200)では、都市部と都市周辺部での自家栽培の障害により、自家栽培者が参加して非営利団体を設立しました。非営利団体として組織されていますが、非営利団体に関する現地の法律を尊重しています。-営利団体–その背後で共同栽培の活動が行われ(201)、結社の自由によって保護されました(202)。「大麻ソーシャルクラブ(203)」と呼ばれるこれらのピア主導の非営利活動は、「大麻規制のための革新的で独創的なモデル(204)」のように説明されています。大麻社交クラブは、数百人の会員を超えることはめったになく、利益を生産、家賃、保険、商品、栽培担当者の賃金に振り向けています(205)。

大麻の政策改革は、異なるオプションからの選択と見なされることが多く、一方が他方と互換性がないが(206)、生産、供給、アクセスのさまざまなモデル(207)を重ね合わせることが可能であるだけでなく、必要不可欠な要素です。適切に規制された政策環境では、プライバシーの権利と結社の自由を尊重するために、自家栽培クラブと大麻ピアクラブを許可する必要があります。必要な営利目的の成人向け市場と並行して、医療用途向けの特定の供給モデルを模索する必要があります。そうしなければ、他のすべてのオプションがカバーされたレクリエーション需要に圧倒されるリスクがあります。

200 Pardal et al., 2018.
201 Jansseune et al., 2019.
202 Marks, 2019 pp. 6-7.
203 ENCOD, 2011.
204 Ghehioueche and Riboulet-Zemouli, 2016. 205 Decorte, 2016.
206 Caulkins et al., 2015.
207 たとえば、ウルグアイで施行されている法規制を参照してください(Instituto de Regulación y Control del Cannabis, 2019; and Martínez, 2016) いくつかの生産方法(自家栽培、ピアクラブ、認可作物)とアクセス(クラブ、薬局)が成功のうちに実施されています。

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