【イベント開催レポート】 Engineering Mix Session vol.6 エンジニアが語る レガシー産業は変革できるか?泥臭く向き合う日々の軌跡
こんにちは、E3編集部です。先日開催した「Engineering Mix Session vol6 \\エンジニアが語る//レガシー産業は変革できるか?泥臭く向き合う日々の軌跡」のイベントレポートをお届けいたします!
今回のレポートでは、会社事業説明を行ったのちの、パネルディスカッションを一部抜粋する形でお届けいたします。
開催概要
日時:7/29(木) 20:00~22:00
場所:ZOOM
内容:「レガシー産業」と言われる、改革が進んでいない産業の中で、特に今回は「製造業、物流業」に対して改革を仕掛ける、大注目のスタートアップ2社が登壇し、泥臭く業界を変革しようとするリアルを探っていきます。
登壇企業紹介
▼キャディ 株式会社(エンジニアリングマネージャー 平岩二郎 氏)
<事業内容>
□機械・装置類の板金加工品や切削・金属加工品の生産
▼株式会社 Hacobu(CTO 戸井田裕貴 氏)
<事業内容>
□物流課題を解決するアプリケーション群 Logistics Cloud MOVO の提供
パネルディスカッション
※内容は一部抜粋となっております。
スタートアップの意思決定は意外とスピーディー
高橋:まず「技術的投資に対してどのように意思決定をされているのか」が気になりました。様々な意思決定の仕方があると思うのですが、エンジニアの方もこれからもプロダクトを作っていく時にどういうフローで意思決定されるのか気になると思うので、ぜひ実例を交えながら話をしていただけると嬉しいです。
平岩氏:例えば、リファクタリングをするといった技術的投資に関しては現場レベルで決めています。そういったミクロな技術的投資に関しては、現場主導で強い思いのある人が主導していくっていうのが正しいことだと思います。定量的にROI(Return On Investment:投資利益率)を測ろうとしても、ROIを測る方の工数の方が無駄になる可能性が多いので、割り切りも含めてやってるという感じです。
一個のプロダクトを作るかどうかのような大きい意思決定の場合は、何となく話が出てきて、メンバーのみんなが行けると思ったら進めるという感じですね。CTOがアジリティー(機敏さ・素早さ)を大事にしており、企業のフェーズ的にも大企業のようにROIを確認してやるっていうよりは、大体外れる前提で、行けると思ったら素早く動くところを大事にしています。
顧客が近いからこそスムーズにプロダクトが作れる
戸井田氏:前半のチームのコーディングなどの、ミクロな技術的投資に関しては全く一緒です。大きな意思決定の部分でいうと、例えば、MOVO Sleekでいうと、カゴ車を無給電で7年持つSigfoxというプロダクトを積んだデバイスでカゴ車をトラッキングしようっていうのは、技術ベースで入っていきました。
弊社のセールスはお客さんにすごい近いので、課題がいっぱい入ってくるんですよ。そこで、どうやらカゴ車と呼ばれるものが使い捨てられており、それをトラッキングするだけで結構お客さんに価値を出せるかもというところから、2か月で作ったというのが一つです。
そして、もう一つはさっきの逆で、お客さんが困ってる、A社さんが困ってる、B社さんが困ってる、これ後C,Dも困ってたらプロダクトをとりあえずMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)作って当ててみようよで当ててみて、行けそうだねってなったら他にも当ててみて、個社カスタマイズにならないように育ててくみたいな、そういうやり方ですね。結構技術ドリブンと課題ドリブンの2パターンで意思決定しています。
レガシー産業におけるビジネスのキーサクセスファクターはどこにあるのか
高橋:両社ともビジョンドリブンというところは一つキーワードなのかなと思うんですけど、実際に思い描いたビジョンがあるときに、事業推進にあたって、泥臭くやってるけど、なかなか進めるのは難しいと思うそれぞれの業界全体での課題感や、どうなれば進むのかといった未来像をお聞きできればと思います。
戸井田氏:物流では、既存の業務を変えるということは、非常に精神的にも大きな負荷になるんですよ。なので、営業が厳しいと判断したときは、トップセールスに強い人を入れて、営業を行うこともあります。
あとは、お客さんの中には、企業間の関係性上、特定のシステムを使わないと、メーカーからすると卸せない場合もあるので、使いづらいけど、今のシステムやめるわけにはいかないという風に言われる時もあります。なので、そういった部分を少しづつでも、いい風が吹くように、力学理解してテコ探しに行くっていうのが大事かなと思います。
平岩氏:プロダクト導入はないんですけど、営業という観点だと、ここ2,3年でかなりエンタープライズ向けの方針に倒しています。そういう意味で、大きい案件を取りに行こうと、いろいろ試行錯誤を重ねている感じです。
ただ、社内でオペレーションを回しているので、そこの負荷が一時的に大変なことになることは一定あります。オペレーションの型が決まってない中、案件を進めていくことがあるので、エンジニア側としても解決しないといけない問題として取り組んでいます。
データはどこまで貯めるべきなのか?
高橋:参加者の方から、以下の質問をいただきました。
質問:物流拠点でのデジタル化の話があったと思うんですけど、そもそもデータを活用する以前のところで、例えば検査データや、積み荷のデータとかいろんなデータが現場に蓄積して中で、それを貯めるか貯めないかの判断とかが、今後AIとかC-learningへの活用みたいなところにつながる一歩目なのかなと思うんですけど、そのような今後についてお考えになっているようなことがあればぜひ教えていただきたいなと思います。
戸井田氏:最終的にサプライチェーン全体のことを考えないと社会課題を解決できないので、上流で受発注と物流の関係が切れていると、最終的なデータを活用するところまで行かないと思うんですよ。
なので、理想としては、倉庫にWMS(倉庫管理システム)が入って、WMSと基幹システム(販売や生産)が繋がって、運送会社と繋がって、相手の拠点と繋がった時に初めて、どんな荷物が、いつ、どういう荷姿で、どういう道を通って、どのぐらいで着いたかっていう最高のデータが取れると思うので、そこは目指しています。
ただ、WMSは色んな企業が個社最適のシステムを作っていたりするので、そこと繋ぐときに、一定の個社カスタマイズは避けられないなと思っています。なので、例えば、あるお客さんのためだけのカレンダーシステムは作らないですが、品目追加してほしいとか、データの構造に対しての変更容易性は高めたいなと思っています。
平岩氏:目に見えるところは全部データ取っておいた方がいいと思うんです。ただ、難しいのは目に見えないデータなんですよ。そこは、一定の解は無いとは思いつつも、我々が何をデータ資産としていくのかという議論が常にある状態が正しい姿かなとは思っています。
ただ、逆にプロセスが定式化されてないものっていうのは、データ化もできないので、そこは難しいですね。定式化が本来は先にすべきだとは思うんですけど、それがやりづらい部分もあって、そういうところで競争が発生するんだろうなと思います。
エンジニアの素質で大切なのは学習力
高橋:採用のところで、こういうエンジニアがこの産業には必要だ、みたいなところがあればぜひ教えていただければ嬉しいなと思っておりますが、いかがでしょう。
戸井田氏:すごい難しいなと思うのが、例えば、弊社だと物流に特化したSaaSを展開してるじゃないですか。そういったときに、物流のドメイン知識を手に入れるのにめちゃくちゃ時間を使うのって市場から見たときに果たして合理的な意思決定なのかという議論があると思っています。ただ、当然物流のドメインの知識を持ってた方が、その会社においては自己効力感出ると思っていて、そこが難しいなって思ってるんですよね。
平岩氏:それってプログラミング言語もそうかなと思っているので、個々の何ができるかよりも、何かを身につけるためにどういうノウハウを持ってるかみたいなものの方が大事なのかなっていう気はします。
平たくいうと学習力の高さですね。学習力があればなんでもできるかもしれませんし、一方で、ドメインの知識もプログラミング言語も単にルールなだけってことも多いじゃないですか。要は、覚えるだけなんですよ。なので、理屈がわかっていれば忘れたら調べに行ったらいいですし、そういう形で身につけることに対していい意味で手を抜ける人が強いかな。
戸井田氏:Google先生うまく使える人ですね(笑)。
平岩氏:後はなんだかんだリーダーシップですね。リーダーシップを取れるとかファーストペンギンになれるというのは、少なくともスタートアップにおいては重要かなと思います。
戸井田氏:そういう人は成長が早いですよね。おそらく失敗するんので、それが初めて筋肉になるような感じですね。スタートアップの良いところって、筋トレの回数が多いところかなと思っています。
ぜひ、カジュアル面談をしましょう!
高橋:では、最後に今回の会のご感想や採用の話をしていただけると嬉しいです。
平岩氏:本日は、機会をいただきありがとうございました。「製造業」という業界自体がかなり大きくて、その中で何をやってるのかというわかりにくいところを、ちゃんと説明できてよかったなと思います。採用に関しては、全職種募集中ですので、助けてください(笑)
戸井田氏:とても楽しかったです。弊社はBtoBなので、BtoCと違って、作ったシステムが誰かの役に立つのがわかりやすく、お客さんからの生の感謝が、リアルにメールとかで来るので、それがとても嬉しいです。そういったやりがいや、社会課題解決を大事にしている人は文化が合って、働きやすいかもしれないので、興味ある方は気軽にお話しできればなと思います。
▼採用情報ページ
編集部:ありがとうございました。参加者の皆様にとっても、本イベントが何かのきっかけになりましたら幸いです。改めて、本日は誠にありがとうございました。
参加者の声
・レガシー産業といいつつ、それは古くなっているが社会インフラになっているところに、どのようにアプローチしていくかという点において、興味深い話を聞かせていただきました!
・普段全く意識していない業界(製造/物流)について、現在何が課題なのかを把握できた。
・会社の歴史、進歩、社員に対する接し方を知れてよかったです。
他にもたくさんの感想をいただきました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
さいごに
▼最新のイベント情報等はE3公式Twitterで発信してまいります。