渇いた風を殴り迎えに来たぜ
日記
2022年10月15日、男闘呼組が29年ぶりにライブを行った。
男闘呼組は、1993年に突然メンバーの一人が退所したことで、解散ライブとか面だったことは行わずに突然活動休止状態に陥った。
「推しは推せるうちに推せ」これはオタクならば一度は聞いたことがあるであろう。推しは推しとて人間、人間じゃなかったとしても人間が産み出したものであり、そこには経済活動が伴う。さまざまな事情で、推しは活動を辞めることを余儀なくされることは、いつあってもおかしくない。だが、それがもし、「推す」側が産まれる前であったら、どうすれば良いのだろうか。
私が産まれたとき、すでに男闘呼組はいなかった。私の世代では、普通に過ごしていて男闘呼組の存在を認識することがそもそも少ないだろう。そんななか、私は運良く男闘呼組というグループがいることを知っていた。ジャニーズだからかっこよくて、曲が良くて、でもジャニーズの枠には収まらないロックさとか音楽面があるんだろうな、ということを知っていた。
そして、今年、その男闘呼組が復活するという知らせを見た。今の若い人が知らなくても、復活してくれる、復活を待ち望む人が大勢いる、という現実は、それだけで男闘呼組の凄さを思い知らせた。初めて同じ時代に生きている男闘呼組をテレビで見たとき、なんてカッコいいんだと胸を踊らせた。もし復活してくれなかったら、もし私が今産まれて来なかったら、私は一生男闘呼組を知ることはなかった。そんなことを考えると、今男闘呼組と私が奇跡的に同じ時代に生きているということを最大限に利用して、今生きている人しか味わえないことを楽しまなければいけない、と、思った。気づいたときにはライブに申し込んでいた。
私と男闘呼組が同じ時代に生きているだけで奇跡なのに、さらに、ライブの初日、初回のチケットが当選するという奇跡が起きた。復活する瞬間の男闘呼組が見られる。歴史的瞬間を、目撃する。
復活ライブは、そのオープニングがとにかく美しい。かつてはCOMPLEXやユニコーンなど、長年積み重ねてきた想いがようやく大勢のファンの前で実を結ぶ瞬間、最も熱が上がる最高の瞬間である。それは、男闘呼組もそうであった。一人ずつ合流し、円陣を組み、全員共にステージにあがる。当時からずっとずっと待ち望んでいたファンはその映像で涙を流し、また熱狂的だったファンは興奮を隠せず思わず声を挙げ、当時産まれていなかった私はというと、この伝説の瞬間を目に焼き付けようと必死であった。会場の全員がそれぞれの男闘呼組への想いを募らせ、ライブが始まる瞬間に胸を高まらせる姿は、それはそれは幸福だった。会場の人それぞれに、29年の人生がある。29年を生き抜いて、さまざまなことを乗り越えて、今日という日に、「男闘呼組が見たい」という同じ想いで同じ場所にたどり着いた。これは奇跡で、運命で、とても美しいことである。
4人はただひたすらにカッコよかった。高橋和也は、とにかく力強く、ロックの強さを見せつけた。年月を重ね、歌への深みがより濃くなり、でも衰えはせず、むしろ声に「強さ」が出て、彼の声が男闘呼組のロックをジャニーズのロックの枠には収めない強さへと変えた。この強さがあるから、男闘呼組の名は衰退せず、男闘呼組としてここまで残ってきたのだと思う。そして、今日のライブでさらに強い歌を遺したことで、男闘呼組はもっともっと未来永劫へと遺っていくグループになった。そう信じている。あとどうでもいいけど私の地元が高橋和也と同じでウケた、地元万歳。
岡本健一はめちゃめちゃにエンターテイナーで、とにかく演奏も歌も、「魅せる」という点で圧倒的であった。顔も、パフォーマンスも美しくて、ふとしたときの表情に惹き付けられて、歌声から色気が溢れて、見る人が喜ぶことを全て理解しているのがよくわかった。そのふるまいは当然のように行われていたけれど、その歴史はとてつもなく長いし、いろんなことを考えてきただろうし、悩んだり、苦しんだり、多くの涙を流してきただろうけど、それを見せずにただただかっこいい姿、パフォーマンスを見せてくれているのはまさに「アイドル」の魅せる姿で、ただひたすら感謝の気持ちであった。この人がずっと活動してくれたから今こうして集まれている、ということが時折脳を掠めるたびに、それだけのことができる貴方への尊敬と感謝で止まらなかった。
前田耕陽、まあ正直、今のあなたの見た目はかっこいいとは言えないかもしれない。でも、あなたみたい人が一人いないと、グループとして締まらないって、多分ジャニーさんはわかっていて、ずっとその軸を持ちながらグループを作っていたのだろう、と思う。そして今回も、その役を買って出た。その時間は全員が笑顔になっていて、とにかく楽しくて、最高の時間だった。ピアノで後ろから3人を見守って、一つ一つの曲を支え、一緒に楽しんでくれた。そんなあなたこそ男闘呼組のリーダーだ。ありがとう、あなたがいてくれて、本当に良かった。
そして、私は今日で、成田昭次に恋に堕ちた。男闘呼組は、かつて成田昭次だった。誰が人気があったとか当時のことはわからないけれど、再結成しなかった理由や集まらなかった理由が彼にあることは事実である。29年の時間の長さを最も背負っているのは彼だろう。でも、それを打ち破ってステージに彼は立った。そしてその歌声は、とんでもなく美しくて、かっこよくて、私は、その全てに惹かれてしまった。Midnight Trainは、ファンが歌ってほしかった曲で圧倒的人気だったという。その理由がよくわかった。成田昭次が優しく、儚く語りかける「愛してる」は、全女が恋におちる。私もその一人である。29年経っても成田昭次がその想いを忘れず、今の成田昭次の「愛してる」を伝えてくれたことが、本当に嬉しくて、切なくて、あなたを永遠に見ていたい気持ちになった。多分今後ソロのライブとか通うキモオタクになるんですけど、でも多分私は「男闘呼組の成田昭次」が好きなんだと思うので、やっぱりこのメンバー、この音楽、この音色のなかで貴方はずっとずっと歌ってほしい。
ライブ本編の最後の曲は、彼らのデビュー曲「DAYBREAK」だった。夜明け。そう、間違いなく今日は彼らの夜明けだった。この曲のCメロは、成田昭次が一人で歌う。
俺たちの夜が明ける 光に寄り添うのさ この俺の全て賭けて 愛を誓いたい
彼らの始まりの曲で、29年ぶりの復活の意を私たちに伝えてくれた。このつまらない世界に吹く風を殴って、私たちのもとへ来てくれた。夏は終わったけど、青春時代は終わってしまったかもしれないけど、その青春をも嫉妬させるような、私たちの愛が、始まる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?