話を広げない人
たわいもない話を拾う人がいる。今日雨すごかったね、と言うと、雨についてあれこれ語る。"そうだね、雨すごかった。今日は〇〇な格好で行ったんだけど、靴下びしょびしょになって脱いだくらい濡れたんだよね、あ、その後お昼まで乾かなくて素足で過ごしたんだけど…"
対して、話を広げない人がいる。今日雨すごかったね。と言うと、そうだね、すごかったね。と返す。少し沈黙が流れる。人によってはこの沈黙が苦手だ。いたたまれなくなり、すかさず次の話を振る。頑張るため疲れる。
話を広げない人は、実は満たされた人である。満たされた人は、雨についての知識を様々持っているので、他の話につなげることもできる。例えば、雨はベストセラーの〇〇の本で取り扱ってるけど…といった話であったり、雨は最近その性質が変わってきてね、という話だったり、雨で体調悪くなる人がいるけど、低気圧症と言って…などとあらゆる角度で話すことができる。しかし、それを無理に出そうとしない。知識をひけらかしたいと思っているわけではないので、特に話さない。沈黙も気まずいと思ってないので、無理に続けようとしない。
もちろん、様々な話をするのは盛り上がる。楽しい。しかし、満たされた人は傾聴することを楽しみにしている。相手が話すことを楽しみにしている。次はどんな情報が出てくるのか、落ち着いて聞いている。別に出てこなくたって良い。寝ているネコを撫でるかのように、優しい気持ちで聞いている。
話を広げると、相手を誘導することに繋がる。他の世界を見せて新鮮味を保つとも言えるが、人と話す時は、主として聞くことでその場を楽しんでいる。
話を繋げようとする、広げようとするのは、不安な人がする傾向がある。不安な人は安心している人の沈黙に慣れることだ。安心している人は別にその沈黙で評価しているわけでない。決めつけるわけではない。安心している人、満たされている人のそばに不安な人がいると、自然と安心できるようになる。困難が多くあった世界から、満たされる世界にいくことができる。