まずは心理的安全性を確保する
変化の激しい時代、スピーディに変化していかなければならないのは、中小企業も同じことです。しかし、それは中々難しい。剛腕のリーダーが力押ししても不満を生むだけです。では、バランスを取りながら調整していくリーダーが変化を促せるかというと、そうでもありません。
同業の経営者と話していると、自動車学校が変われない大きな理由は、「従業員の意識の問題だ」という話をよく聞きます。そして、先輩経営者からのアドバイスとしてありがちなのが「いうこと行かない従業員を早く辞めさせて、新しい人をとっていかないと、組織は変化しないよ」という話です。しかし、話し手そうでしょうか?
確かに、邪魔な人を排除して自分の言うことを聞く人を採用すれば、思い通りの組織を作れるかもしれません(できないかもしれないが、、)。しかし、それで変化が出来たとしても、変化に要するコストが高すぎます。このやり方では、場合によっては変化をする前に会社が潰れてしまうことだってありえます。
各々が組織の目標に向かって自分のパフォーマンスを最大化させることで組織は成長し生産性があがると思っています。その様な動きができる組織こそが時代の変化に応して自らをスピーディに変化させられるます。私は、リーダーがしっかりしたビジョンを示すと組織のメンバー一人一人が自らそれに向かって前に進んて行くような組織作りを目指しています。
そして、そのために大事なことが、組織の「心理的安全性」を確保することです。「心理的安全性」とは、集団の中で意見や質問などの発言を不安や心配することなく主張できる度合いです。Googleが生産性の高いチームを作るために行われた「プロジェクト アリストテレス」の中で、成果を出し続けるチームの共通の要素として、「心理的安全性」・「信頼性」・「構造と明確さ」・「仕事の意味」・「仕事のインパクト」の5つがあったそうです。その中でベースになりGoogleが最も重視しているのが「心理的安全性」だそうです。
実際に、私が「心理的安全性」を意識したマネジメントを始めてから、スタッフたちは自発的にいろんなアイデアにチャレンジしてくれています。教習の効果を高めるために動画を活用できないか検討してみたり、これまで行っていなかった法人への営業に取組んでみたり、キッズバイクの事業を企画するなど、私が指示することなく様々なチャンレンジが生まれ始めています。これは、スタッフたちが変化したのではなく、元々スタッフたちの中で眠っていたアイデアが表に出るようになったということだと思います。
「心理的安全性」を高めるにはどうすればよいか、まずは、会社組織の改革より経営者自身が自分を変えることが第一歩だと考えています。
まず、第1は自分たちのスタッフを信じること。一人一人には仕事に対する信念があり高いパフォーマンスを発揮する力があることを信じましょう。冒頭に述べているようなスタッフに責任を転嫁するような考え方をするなんて論外です。日本のリーダーは「管理」することが好きな人が多いですが、「管理」はスタッフを性悪説に基いて導く方法ともいえます。「管理」をしているからこそ上手くいかない原因がスタッフにあると考えるのではないでしょうか。「管理」することで定型の業務効率が上がることがあっても、一度できあがると硬直化して成長していきません。変化の激しい時代のリーダーに求められるのは「性善説」に基づいて「コーチ」していくことではないでしょうか。スタッフの心に火をつけて元々持っている能力を引き出すことが出来るリーダーになるよう心がけることが「心理的安全性」を高めるための第1歩です。
スタッフを信じるだけで「心理的安全性」が高まるなら、それ程簡単なことはありません。いくらリーダーが信じていても、スタッフがリーダーを信じてくれなければ信頼の一方通行になるだけです。人間は自分より上の立場の人に対して様々なバイアスをかけて見ているものです。「横暴な人」とか「どうせ現場のことなんて気にもかけてくれない人」とか「わかってない人」などと見られているものです。なので、リーダーはスタッフとしっかり対話をしなければなりません。そして、対話をするにあたっては、相手に自身の考え方を腹落ちさせるようなコミュニケーション能力が求められます。ビジョンをしっかり持ち、相手の考え方を理解し、その上で情熱的にロジカルに経営に対する考え方を粘り強く説明することで、スタッフは少しづつ歩み寄ってきてくれます。
リーダーがリスクをとってコミットメントすることも「心理的安全性」を確保する上で重要です。言っていることとやっていることが違っていたり、簡単に前言撤回されると、対話によって歩み寄ってきてくれたスタッフは強烈な不信感を持つでしょう。
「性善説」に基づく「コーチ」、コミュニケーション、コミットメントの3つを実践することで私の自動車学校のスタッフたちの動きが大きく変化してきました。この3つを実践するきっかけになったのは、私がスタッフの多くが反対する施策を何とか実施させようとし、スタッフと対立した時のことでした。競争環境が厳しくなるなか必須の施策でした。「必ず実施しなければならないのに、なぜスタッフたちは分かってくれないのか、自分のことばかり考えているのではないか?」と疑念を持ったりもしました。そのため、従業員個別に面談し説得をしました。元々、正しい施策を相手が納得できるようロジカルに説明することはコンサルティングファームに長年勤めていたこともあり得意でした。筋道を立てて施策を説明すると、そこへの反論は殆どでませんでした。しかし、納得してくれない理由の多くは私への不信感や会社としても考慮せざるを得ない個別の事情が殆どでした。不信感に関してスタッフの言い分を聞いていると、バイアスがかかって見られていることが要因の多くでした。そのことについても1つ1つ私の考えや立場を説明しました。そういった対話をやっている中で気が付いたことは、スタッフの全員が仕事に対してしっかりとした信念やチャンレンジしてみたいことをちゃんと持っているということでした。スタッフたちも少しづつ私の考えを理解してくれ、彼らが抱えている幾つかの問題の解決を約束することで、無事に施策の実施も合意を得られました。
上記をきっかけに、「性善説」に基づく「コーチ」、コミュニケーション、コミットメントをこれまで以上にしっかりと行うようにしています。感情に任せたアクションは行わないように心がけ、困りごとや心配事がないかしっかり対話を行い、部下のアイデアは基本的に否定せず、よりよくなるような問いかけを行う、そしてスタッフたちの抱える問題解決のために私のコミットメントが必要な時は、しっかりとコミットするようにしています。そうすることで、従業員たしも自律的にチャレンジをしてくれるように変化しました。
リーダーが気付くべきことは、スタッフがチャレンジしないのではんく、リーダーがスタッフのチャレンジを潰しているということです。元々スタッフたちが持っている思いを不安なく実行できる「心理的安全性」の確保こそが、組織の生産性を高めるために重要です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?