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東北・高崎線新型電車について考える

現在、東北・高崎線で運行しているE231系の所属先には小山と国府津があり、小山編成の初期編成は国府津編成よりも数年早く就役しました。小山編成で最も早く就役した編成、言い換えれば同系近郊形の〝最古参〟となるU501編成がデビューしたのは今から24年前の2000年3月でした。つまり、今年で就役24年。そろそろ後継の電車についての噂が立ってくる頃です。今回はそんな「東北・高崎線向け新型電車」について考えてみます。

E231系近郊形(小山初期編成)

車両更新のXデーは

E231系近郊形は現在160編成1255両存在します。この編成数を同時期に置き換えることは困難です。参考までに、現在置き換え中のE217系は97編成745両ですから、その編成数の膨大さが分かります。そこで、同形の置き換えは時期を分けて行うことが予想されます。そうなったときに一番最初に対象になるのは初期デビュー組の小山初期編成(41+28=69編成)でしょう。

製造年数

この小山初期編成の〝最古参〟U501編成がデビューしてから今年で24年。来年でデビューから四半世紀を迎えることになります。同線区で活躍していた211系(1000/3000代)の場合、1986年に新製配置(新前橋区・小山区)され、同線を撤退したのは2013年でした。撤退時の製造年数は26年前後でした。性能も製造年代も異なる211系と比較するのは問題点もありますが、参考程度の比較対象にすると、E231系小山初期編成は「置き換え時期」に入りつつあることが分かります。

減価償却年数

一般的に、電車の減価償却年数は13年とされています。つまり、法定耐用年数は13年ということになり、一見すると小山編成は減価償却期間を満了しているようにみえます。ところが、ここで問題になってくるのが2015年から実施した「機器更新」です。
小山初期編成は新製時、日立製のIGBT-VVVFインバータSC-59A型を搭載おり、これが俗にいう「墜落インバータ」でした。ところが、2015年のU520編成を皮切りに機器更新が進められ、SC-112型という別のインバータに換装されました。電車の耐用年数の大きな要素となるインバータ装置が新しくなったため、機器更新後に減価償却が適用されると考えると、現在も減価償却期間中ということになります。鉄道車両は保有会社にとって「資産」ですから、この減価償却の問題は同形の置き換えを妨げることになりそうです。

転機「羽田空港アクセス線」開業

では、同形が同線区から撤退し置き換えを受けるのはいつになるのか。その大きな転機となりえるのが「羽田空港アクセス線開業」です。
羽田空港アクセス線には3ルートが存在し、そのうちの「東山手ルート」は東北・高崎線への直通を想定しています。羽田空港アクセス線の開業は2031年予定、このとき同形小山初期編成は最高車齢31年となっています。そして小山基本編成で最後の機器更新を受けたU522編成が機器更新後の減価償却を終えるのがちょうど2031年となります。

https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230404_ho03.pdf

このようにして考えると、小山初期編成が置き換えを受ける「Xデー」は2031年度前後と考えられるのではないでしょうか。一般的な通勤電車の寿命が30年から40年とされるなかで、車齢31年、減価償却期間満了での置き換えというのは経営的にも技術的にも現実的なのではないかと考えられます。

どうなる「新型車両」

既存形式か、新形式か

現在のJR東日本最新鋭電車は「E235系」「E131系」です。E235系は山手線や総武快速線・横須賀線に導入されており、E131系は相模線や鶴見線、さらには東北線の小山ー黒磯間などで導入されています。もし、後継車両として既存形式を導入するとなると、このどちらかの形式を採用することになります。長編成、通勤路線、グリーン車連結などを考えるとE235系のほうが可能性は高いでしょう。
しかし、個人的には既存形式ではなく新形式の導入になるだろうと考えており、既存形式の投入や転用は可能性が低いと予想しています。

設計8年、既に「型落ち」か?

E235系がデビューしたのは2015年、既に8年が経過しています。小山初期編成を置き換える電車が仮にE235系とした場合、設計から10年超の電車を大量に製造することになります。そんなE235系をこれから導入するのは考えにくいのではないでしょうか。

また、E231系は近郊形だけではありません。0番代や500番代など、多くの番代区分を受けた「E231系」が首都圏各地で活躍しています。どれも製造年代に大差はなく、同時期に置き換えの必要性が生じてきます。そうなると、やはり新形式で統一して投入したほうが好都合です。E231系がデビューする前は「通勤電車」と「近郊電車」は完全に別の電車でした。「通勤電車の205系 近郊電車の211系」といったように性能も車両も別々だった従来の風潮を破ったのがE231系でした。この通勤・近郊を統一した「一般形電車」の流れはE235系にも汲まれています。この流れに沿って、「ポストE231系」は設計されるのではないかと考えられます。

〝E237系〟に求められるもの

次世代の東北・高崎線向け新型車両に求められるものは何でしょうか。従来電車の機能も踏まえながら想像を膨らませてみましょう。

広い車内と輸送力

東北線、高崎線それに直通路線の性格上、乗客数は非常に多く、中距離電車でありながら、通勤電車に匹敵する輸送力が必要です。横須賀線に導入されたE235系は全車ロングシートを採用しました(グリーン車を除く)。近郊形の性格が強いE217系で採用していたセミクロスシートを廃止し、輸送力が向上しました。しかし、セミクロスシートを廃止したことに対する批判的な意見があるのも事実です。通勤路線かつ中距離路線を運行する電車として、ボックスシートの需要はあるようです。この点を踏まえると、小山初期編成の特徴を継承し、1・2号車と14・15号車にのみボックスシートを設置する形が好都合でしょう。(参考までに、同形国府津編成は15両のうち6両にボックスシートを設置)

セミクロスシート(Wikipediaより引用)
ロングシート(Wikipediaより引用)

加えて、新型車両は羽田空港アクセス線に運用されることにも考慮しなければなりません。羽田空港への乗客は大きい荷物を持っている人が多いでしょう。そのため、車内にキャリーケース用スペースを設置したり、網棚の改良などが必要になってきます。この点と輸送力向上を同時に実現しなければならないところが新型車両の難点で、かつ重要な点となります。

ワンマン対応

JR東日本では慢性的な乗務員不足が続く現状で、ワンマン運転の拡大を進めています。おそらく、将来的に東北線や高崎線でもワンマン運転を行っていくことが想定されるため、ワンマン運転対応が必要になってきます。5両編成以上でのワンマン運転となるため、原則全駅のホームドア設置が必須になりますが、同時に車両側にも乗降確認用のカメラやモニター設置などの設備が当然必要になります。これはこの線区の新型車両に限らず、どの路線でも新型車両の標準装備となってゆくでしょう。
また、運転士の負担軽減のための自動列車運転装置や制御システム、さらには将来的なドライバレス運転に向けてのシステム搭載なども求められていくかもしれません。

案内装置

現行車両では車内LCDは搭載されておらず、小山初期編成では一段表示タイプのLED表示器が搭載されています。スクロールタイプのため、情報の表示性に劣り、各駅までの所要時間などの情報は表示できません。LCDを採用できない理由としてROM容量の問題が考えられています。運用範囲が広く、行先や駅などの情報量が膨大となるため、2000年代のコンピュータでは容量が足りないことが予想されます。E233系でも同線区向けの3000代だけはLCD非搭載となっています。しかし、LED表示器で案内できる情報量には限界があり、サービスとして十分とはいえないため、新型車両にはLCD設置が求められていくでしょう。

多国語対応も求められていくサービスのひとつといえます。羽田空港アクセス線としても活躍するであろう新型車両ではグローバルな案内が必要になってきます。現行自動放送では日本語に加えて英語を放送しています。二か国語案内では不十分という意見もある一方、多国語案内によって乗客の過半数を占める日本人にとって不便を感じるという批判的な意見もあります。車内放送は現行通りの二か国語案内、多国語案内は車内表示で行うという形のほうが良いかもしれません。そのためにも、LCD設置が必要になってきます。

あとがき

さて今回は「東北・高崎線新型電車」についての〝妄想〟をしてみました。E231系というと新しい部類の電車、と思われる方も多いのですが、小山初期編成では製造から約25年に迫っており、経年劣化と思われるような箇所も出てきた印象です。個人的に小山初期編成は愛着のある車両なので、「引退」や「撤退」といったことを考えるのは苦しいところがありますが、東北本線や高崎線の将来を考えていく上で、E231系の去就というのは避けられない問題です。今回はあえて〝E231系の撤退〟について考えてみましたが、本音としては一日でも長く活躍してほしい、といったところです。
(完)

Credit

執筆 : とうほくらいん(FreedomTrain 編集部)
画像 : 2枚を除き筆者撮影



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