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2020年6月7日「すごい人達」

僕は、主に嫉妬心から他の漫画作品を読めないという期間がずっとあった。表向きの言い訳としては、他の人の作品を見てしまうと影響されてしまうとか色々あるのだけど、それよりもデメリットも大きいということも分かっていた。それに、オリジナル新作もそろそろ考えたいなーという思惑もあり、気になっていた作品を読んでみた。

『刻刻』

「止界術」を代々受け継いできた一家と、宗教団体との闘いを描いた作品。

これはクッソおもろい。なんでこんなすごい作品を読んでいなかったのだろうと後悔した。まず、「時が止まった世界」をこんなにリアリティを持って描くことは難しいと思った。アイディアを思いつくことと、それを実際に表現できるかどうかには大きな隔たりがある。例えば、水。止まった世界における水をどう表現するか?作者の堀尾さんはそれを見事に表現している。

また、ページをめくるたびに驚きがあり感動がある。それは物語もそうであるし、「絵」の力だ。繊細で丁寧な描き込みに惚れ惚れする。敵対する宗教団体のおっさん達の描き分けも地味にすごい。あーこんな風に描けたら楽しいだろーなーと思わせてくれる。


『ブルーピリオド』

ちょいヤンキーの主人公が美術に目覚めて美大を目指す物語。

これにはもう感服するしかない。その圧倒的センスに。キャラクター造形もそうだし、画面構成も。すべてがスタイリッシュで魅力的だ。作者の方は芸大出身の方らしい。それゆえの美術知識がふんだんに盛り込まれている。

ジョジョの荒木先生はイタリア美術にヒントを得てジョジョ立ちを考案したらしい。この作品にもジョジョ立ちとまでは言わなくても、美術作品のような美しいポーズが随所に見られる。おそらく多少意識されてるのかなと思った。

最初のうちは、「イケメンで勉強もできて友達もいて、さらに文科系にまで手を出しちゃうとか圧倒的主人公過ぎるだろ…!」と突っ込みを入れながら読んでいたのだけど、いつのまにかキャラクターの魅力に引っ張られて作品に没入していた。


そんなこんなで、すげー人達の作品を見てしまうと、自分の絵がどうしてもしょぼく見えてくる。悲しいことだけど。だけど良いきっかけにしたいと思った。僕は今の連載作品はミリペンで全て描いている。ミリペンはミリペンで良さもあるのだけど、Gペンのような自由度は無い。

じゃあなんでミリペンにしたのかと言えば、3年間がっつりアシスタントをやっていた時期は、基本的な線は全てGペンで作画をしていたのだけど、結局最後の最後まで使いこなすことが出来なかったからだ。

ペン先をインクにつける。試し描きを別の紙に何回も「シャッシャッシャッシャッ」とやって太さを整える。そして、いざ本番。

…ガリッ!!

全ッ然思っていた太さじゃない線が突然現れたりする。それがストレスで苦手意識がずっとあった。だから、ミリペンに移行したという経緯がある。

だけどいい機会なので、もう一度Gペンに挑戦してみようかなとも思っている。

早速地元の文房具屋に行ってみると、以前使っていたパイロットの製図用インクは売ってなかった。スマホで調べると「開明墨汁」という墨汁もおススメらしかったので探してみるとあったのでそれを購入した。なんだか、漫画を描き始めた頃の気持ちを思い出した。

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道具箱の奥に仕舞い込んでいたGペンを装着し、試しに描いてみる。うん、意外と行ける気がする。

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僕は絵がうまくない。

だから決して手を抜いちゃいけないんだ。

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漫画家として、似顔絵師として、フリーランスとして、30代男としてこの時代を生きる人間ドキュメント。日々考えていること、恋愛やお金に関するこ…

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