見出し画像

【ディラ研/ザバ研】27枚組聞き倒しマラソン その3:Disc 3

1月5日(土)は移動日のためコンサートはお休みでした。土曜日なのになぜ?と思いますが、その分これからは1日2回公演というハードな予定が待っています。
2回公演の場合、人によって「ファースト・ショー」と「セカンド・ショー」、「アフタヌーン・ショー」と「イヴニング・ショー」などと呼びますが、ここでは「1回目」と「2回目」という素っ気ない呼び方にします。

シカゴの次に来たのが、東海岸のフィラデルフィア。

「アメリカン・バンドスタンド」というテレビ番組(チャック・ベリーの「Sweet Little Sixteen」にも言及あり)とか、フィリー・ソウルなどが有名で、ここもまた音楽の街という印象です。まあ、野球チームと一緒でどこの州にも音楽の街はありそうですが。

フィラデルフィアのスペクトラムもシカゴ・スタジアムと同様の会場です。
キャパを英語版のWikipediaで調べてみると。。。あれっ、バスケもコンサートも収容人数があんまり変わらないですね。20,000人くらいとしておきます。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

6日(1回目)のセットリストは下記のとおり。

今回も全28曲で、Disc 3に未収録なのはザ・バンドのみによる10曲です。つまりディラン部分は全曲収録となります。

この音もまたサウンドボード録音ですが、前日のDisc 2と定位が逆になっており、ロビーのエレキが左から、リチャードのピアノは右から聞こえます。
なぜLとRを逆にしたのか、理由はよく分かりません。配線のつなぎ方を間違えただけ?
ローリング・ストーンズのライヴ盤では、たいていロニーのギターが左、キースが右から聞こえるようになっていて、これが逆だとファンが怒ります。
ディランとザ・バンドの場合はそこまでではないですが、日によって聞こえる方向がバラバラだと、リスナーとしてはちょっと集中力に欠けるというか。。。
リック、またベース変えた? 心なしか小さくて響きが薄いです。リヴォンのバスドラの方が力強いなぁ、と。これもどうしたことか?
「サウンドボードのミックスは演奏者のためのもので、聴衆にむけられたものでない。また手を加えることは何もできない。」(プロダクション・ノートより)
ああ、そうでしたよね、先に進めましょう。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

Ballad Of Hollis Brown

この曲がオープニングというのも斬新ですが、考えると11年半後の1985年7月13日(ライヴ・エイド)もこれが1曲目でした。
ここでもリヴォンとリチャードによるツイン・ドラムスになっています。
ディランのギターはドロップD(6弦をDに下げる)のように聞こえますが、何かチューニングが怪しげです。大丈夫かな。。。

Lay, Lady, Lay

この日は無事収録となりました。
CDでは曲間を縮めているトラックが多く、これも演奏前部分を雑にカットしています。冒頭でディランがエレキをチューニングしている音が少し残っていますが、合わないまま「もうええわっ」という感じでイントロを弾き始めてしまいます。
バックが居るので音を出さなければいいのですが、こういう時にかぎってジャカジャカとしっかり弾いている(笑)のがよく聞こえます。中途半端に弾くよりしっかりリズムを切った方がパーカッシブに聞こえるので、正解っちゃあ正解かもしれません。
1月の寒い時期に照明があたると寒暖差の関係でギターのチューニングも狂いがちです。しかも本番中に鍵盤のチューニングはできませんから、本当は鍵盤に合わせる必要があるのですが、そんな丁寧な作業をするはずもなく。
なお、リチャードはピアノ席へ移動中だと思われます。

Just Like Tom Thumb Blues

Disc 2(4日)の演奏に文句を言ったからか、いや偶然ですが、ロビーの音が控えめでガースのキーボードがよく聞こえます。ただ、このバランスが続くと「ガース、ちょっとうるさいんだけど」となってしまいます。
あと、ボリュームを上げると、今度はリヴォンのシンバル音で耳が痛い。
「サウンドボードのミックスは演奏者のため」はいはい、分かってますって。でもこれ、演奏のコメントに影響するような音質です。

It Ain't Me, Babe

ロビーの音が聞こえやすくなりました。録音中にツマミをいじったのでしょうか? でも、この曲はロビーの聞かせどころがないので、残念です。
アコピの音もよく聞こえるので、どういう伴奏を弾いているのかが分かりやすいです。でも、この曲はリチャードが得意な曲調ではないかな。
テンポもやや遅いわ、エンディングも雑だわで、残念ながら曲全体に特筆する箇所がありません。

Tough Mama

Disc 2(4日)で反省したのか、誰かさんの「ワンッ」という合図で、今回は全員同時発進できました。リチャードのアコピもバッチリです。
ディランはエレキを弾かず(肩に掛けた状態かもしれませんが)、手でハーモニカを持って、自分で歌の合い間を埋めるかのように吹きまくっています。
ディランの熱演にもかかわらず、これまたテンポが若干遅いせいもあるのか、全体的にやや疾走感に欠けるように思います。本人もイマイチと感じたのか、残念ながら本ツアーでのこの曲の演奏は、これが最後です。
しか~し、23年半後の1997年8月に突然演奏されるようになりました。そのうち例によって歌詞がいじりまわされ、その結果が最新改訂版(とオフィシャルサイト)に掲載されているものになります。

ディラン詩集の改訂履歴に興味のある方は、下記を参照ください。

Ballad Of A Thin Man

Disc 2(4日)に続いてリチャードもドラムスを叩いています。
で、ピアノはディランが弾くわけですが、例のリフ「ジャッジャジャッジャ」がシャッフルのノリにならず、リズムを崩しまくった感じになっています。(『追憶のハイウェイ61』収録のスタジオ・ヴァージョンでは、基本的にドラムスのシャッフルに合わせて弾いています。時々ずれるのは単に練習不足です。)
今回のこれは、ますます下手になったからでは決してなくて、レイ・チャールズ「I Believe To My Soul」っぽく弾こうとしたからだと思っているのですが。。。
ご存じない方はぜひSpotifyでも何でもいいので、レイ・チャールズのアトランティック時代のスタジオ録音(1959年)をチェックのうえ、「I Believe To My Soul」でレイが弾くエレピと弾き比べていただければ、「言われてみれば。。。」と納得いただけるのではないかと。

All Along The Watchtower

これも頭が欠けているのでしょうか。違和感のあるイントロです。
ディランが何度も繰り出す「ジャカジャカジャッ」というコード・カッティングがよく聞こえます。
一方、またリチャードがいないと思っていたのですが、ロビーのエレキと同じ位置に「ホワンホワン」いうキーボードが聞こえます。これがリチャードのプレイかもしれません。全然自信なしですが。。。

Leopard-Skin Pill-Box Hat

これも普段はロビーのターンアラウンド(ブルース進行の最後の2小節フレーズ)から始まるのですが、ドラムスが鳴ってたり変なイントロになっています。
アコピはしっかり聞こえます。
この曲でも結構ハーモニカを吹いてます。この日は多めです。
決してつまらない演奏ではないのですが、特に書くこともないです。申し訳ない。

Knockin' On Heaven's Door

ややでっち上げ気味ですが、とりあえずイントロが付きました!
リチャードの担当は不明です。
ディランは「ジャカジャカジャッ」しまくりです。プチブームになってます。
エンディングも初日よりらしくなりつつありますが、まだなんとなく感が強いです。

To Ramona

ソロコーナーの1曲目、これまたイントロがありません。あわてて録音ボタンを押したのか、いきなり歌い始めたのか。万一後者だとしても、Cコードはポロンと鳴らしているはずですが。
1974年ツアーでこの選曲は地味だったのか、披露されたのはこれ1度きりだったようです。

Mama You've Been On My Mind

こちらはちゃんと演奏前部分から収録されています。
これまた1974年版「Song To Woody」と同じく、間奏部分で違うコード進行に改造しています。
気になるので、耳コピしてみました。

この曲もこの1回だけですか。この日に来たお客さんはラッキーですよ~、と今なら言えますが、当時はどうだったんでしょうか?
ネットもなく、自分が行かなかった日に何を演奏したかに関心を持つ人なんて、はたしてどれだけいたのやら。。。

The Lonesome Death Of Hattie Carroll

初日、2日目から特筆する出来事はないので割愛です。今回は18曲もあるので、ちょっとしんどいです。(1日2回公演をこなすほどではないですが。)

Nobody ‘Cept You

これも初日、2日目から特筆する出来事はないので割愛。

It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)

これも初日、2日目から特筆する出来事はないので割愛。次!

I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met)

前回いったん引っ込めて、今日に備えてバッチリ仕上げてきたはずです。今回はリヴォンのライドシンバルによるカウントでスタートになりました。
しかしながら、どうしたことかハーモニカとバックのキーが合っていません。ディランも途中で気づいたのか何かしようとしてますが、途端に「ピーッ」とハウリングも起きてしまって散々です。以降、この曲のアクシデントを「君を信じないの呪い」と呼ぶことにします。
何とか歌で持ち直し、ギター・ソロの前に珍しくディランが「ロビーッ!」と叫んで(ここだけは聞きどころ)、舞台中央にいる人にバトンを託します。
託されたギター・ソロ、出だしはいい感じなんですが、1966年ツアーではガースのオルガン・ソロだった箇所も今回ロビーが弾くことになり、さすがにソロの終わりあたりはちょっと失速した感じになってしまったように筆者には聞こえます。今回、ガースは黒子に回ることが多くて、ファンとしては残念です。
リチャードのアコピ伴奏はバッチリです。

Forever Young

ディランのギター、特に低音がトゥワンギーでいいトーンになっていると思います。
筆者は音色でギターの種類を当てるのが下手くそですが、これはテレキャスターな感じがしますね。(ちなみに、初日は写真からエピフォンのセミアコを使っていたと分かるのですが、そのギターは「King Harvest」のプロモ・ビデオでロビーが弾いていたのと同じような気がするので、ロビーから借りたのでは?)

Something There Is About You

この曲は単品では決して悪くない、いい曲だと思うのですが、本編最後の直前にまだ誰も知らない新曲を2曲披露するというのは、構成としてどうだったんだろうと思います。「Forever Young」の方は分かりやすい曲ゆえスタンダードとして残りましたが、こちらはそうなりませんでした。詳しくはDisc 17(1月30日)の時にでも。
リチャードもしっかりアコピを弾いています。

Like A Rolling Stone

これもテンポが遅めです。超ゆっくりの「Like A Rolling Stone」といえば、『リアル・ロイヤル・アルバート・ホール』に収録された1966年5月26日の演奏が有名ですが、あらためて思うのがミッキー・ジョーンズはもっともっと評価されていいんじゃないかい?ってことです。ディラン本人ともザ・バンドのメンバーとも相性バッチリに聞こえるのですが。
一方、こちらの演奏はそこまで遅くないのですが、リヴォンがちょっと苦戦気味です。もちろんリヴォンが悪いのではなく、ディラン本人がリズム・ギターを(おそらく無意識に)遅いテンポで弾いてしまうからで、初日の「I Don't Believe You」もそうですが、歌い始めてから遅いなあと気づくパターンではないかと思います。
テンポの修正が入るのがいつか、これも聞いているうちに発見できるかと考えています。興味のある方は、先に2枚組に入っている同曲のテンポと比較してみてください。
ああ、最後でコード進行に混乱が生じています。ロビーは多分合っています。アウトロが初日のように長くないのはしくじったからとっとと切り上げたのではなく、2日目の4日から短くすることに決まったようです。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

筆者が選ぶ本日の名演賞は、該当なしです。残念。。。

とにかく筆者にとっては音質がしんどかったので、その分音楽を存分に楽しめなかった感じです。あと、遅めのテンポが筆者の好みと合わなかったことでしょうか。早ければいいってものでもないですが、TPO的に最適なテンポを選択するというのも奥深いです。

2回目の公演に気持ちを切り替えたいところですが、筆者もちょっと給水タイムが必要なので、次の投稿は2~3日後になる予定です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?