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松田図書館 第三回

B級コメディホラーのサントラはサーフの好盤


様々なジャンルの音源が保蔵されている実家の僕の部屋からお勧めの音源をご紹介していく「松田図書館」、
第3回目はサーフミュージックの好盤をご紹介したいと思う。
それがこちら、Psycho Beach Party Original Motion Picture Soundtrack。

◇Various
Psycho Beach Party Original Motion Picture Soundtrack
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この作品はPsycho Beach Partyという2000年に公開されたB級コメディホラー映画のサウンドトラックなのだが、実は僕はこの映画は見たことがない。
それなのに何故このアルバムを購入したのかというと、これに参加しているThe Hillbilly Soul Surfersというバンドの音源が聞いてみたかったからだ。
彼等の単独作品はなかなか手に入れるのが難しかったので色々検索してみたところ、比較的手に入れやすいこのアルバムに辿り着いた。
内容は全く分からなかったがジャケットのデザインは割と好みだったし、
値段も比較的安かったので購入を決定。
これがかなりの当たりだった。

Ben Vaughnという人が中心に作られた作品で、この人のことをちょっと調べてみたところシンガーソングライター、ミュージシャン、レコードプロデューサー、作曲家、ラジオのホスト・・・と色々な肩書き持っているようで
かなりの才人のようだ。
彼の曲が大半だが、その他にLos Straitjacketsが2曲、The Halibuts、
Hillbilly Soul Surfers、Four Piece Suit、The Fathoms、Man Or Astro-Man?が
それぞれ1曲参加のオムニバス形式になっている。
この参加している6バンドだが、サーフという型の中でそれぞれ違った個性を感じさせて中々面白い。

Los StraitjacketsはThe Planet Rockersというアメリカンロカビリーバンドでも名を馳せているギタリストのEddie Angelと、70年代末から80年代前半のニューヨークで勃発したNo Waveシーンで活動していたアヴァンギャルドなインストロックコンボ、The Raybeatsの1stアルバムでギターとベースを担当していたDanny Amisが中心となって結成されたバンド。
Ben Vaughnはこのバンドの1995年の1stから1999年の3rdまでプロデュースしているので関係は深そうだ。
ガレージロック的な要素も含むかなり勢いのあるサウンドは彼らの売りの
一つだと思う。
さらにサーフ以外にも多くのバックグラウンドを持つメンバーたちの確かな演奏力も彼らの強みだろう。

◇2曲目、Los StraitjacketsのTailspin。
攻撃的なイントロから哀愁漂うリフ。そしてDick Dail直系のトレモロということなし!
彼等の1995年発表の1stアルバム、The Utterly Fantastic And Totally Unbelievable Sound Of Los Straitjacketsにも収録されている。

5曲目に収録されているThe Halibutsは80年代初期にあったサーフリバイバルにJon & The NightridersやThe Surf Raidersとともに活躍したサーフグループらしい。
このアルバムでは古き良きサーフを継承した曲調にキーボードをフューチャーした楽曲を提供している。

◇5曲目、The HalibutsのNight Crawler。
途中のベースラインが印象的だ。

8曲目が僕のお目当てだったHillbilly Soul Surfers。
このバンドは僕が大好きなロックギタリストでEvan johnsという人がいるのだが、2001年に彼とコラボレーションしていたのでどんなバンドなのか非常に興味を持っていた。
残念ながらそのアルバムは未だ未聴なのだが、Hillbilly Soul Surfersはこのアルバムで聞くことが出来たという訳だ。
それで聞いてみた印象なのだが思っていたよりもハッピーな音を出すバンドという感じ。
Evan johnsも暗い感じではないがギターの音や曲調はとてもアグレッシヴな人なのでもっと攻撃的なバンドだと思っていた。
収録されている曲は青空が似合う軽快なサーフミュージックといったところだろうか。
このnoteを書くにあたって他にもいくつか動画を見たが、古き良きアメリカンミュージックを愛しているバンドなのかなという印象を受けた。

◇8曲目、Hillbilly Soul SurfersのCha Wow Wow。
青空が似合う感じ。
ちょっと肩透かしだったがこれはこれで楽しいサウンドで悪くない。
途中、ちょっとジャジーなリズムに変わるところが気に入っている。

10曲目収録のFour Piece Suit。
サーフミュージックなのは間違い無いのだが、前出のHillbilly Soul Surfersの青空を感じさせるサウンドとは打って変わって夜の雰囲気だ。
サックスがメロディを奏で、そこにエレクロリックピアノがバックに加わっていることでエロティックなムードも増しているように感じる。
このバンドのことは全く知らなかったが90年代に2枚のアルバムを発表している。高い演奏力を持っているので様々な音楽に対応出来そうなバンドだ。

◇10曲目、Four Piece SuitのBombasteroid。
ライブ動画しかなかったのでこちらで。やはり夜が似合いそうな音だ。

15曲目収録のThe Fathoms。このバンドは検索してもあまり詳細が出てこないので詳しいことは調べられなかったが、一応分かったことを少しだけ書いておくと、
1996年に1stが発表されており、2007年に出した3rdを最後に作品を発表していないようだ。
サックス奏者がDavid Shollという人で、この人は10曲目に収録されていたFour Piece Suitにも参加している。
楽曲はDick Dail直系のトレモロが炸裂する勢いあるサーフミュージックで
非常にかっこいい。
途中に入ってくるサックスソロもこれぞサーフといった感じでパルプフィクションのサントラに入っていても違和感がないはずだ。

◇15曲目、The FathomsのOverboard。
哀愁漂うサックスソロの入り方は100点。

17曲目のMan Or Astro-Man?は参加バンドの中では唯一ヴォーカル入りの楽曲で参加。
このバンドは他のバンドよりも実験的にサーフを取り入れており、
とても興味深いサウンド。

彼らのオリジナルアルバムも聴いてみたが、昔のSF映画の雰囲気を取り入れたり、あえてレトロな音色を効果的に使っていたりして、そこに近代の攻撃的なリズムを持ってきて緊張感のある刺激的な楽曲を作り出してる。
基本インストがメインのようなのでヴォーカルありの楽曲は比較的珍しいと思われる。
また近年の作品では、もはやサーフやギターインストなどでは語れないほどとんでもない音楽を創造していて、いい意味でどこまで行くのか分からない状態だ。

このアルバムの参加曲は、あえてレトロな音色と曲調にして、そこに近代の攻撃的なリズムを合わるという彼等お得意の手法を使った楽曲に気だるい
パンキッシュなヴォーカルを乗せたといった感じの非常にかっこいい曲だ。

◇17曲目、Man Or Astro-Man?のMermaid Love。
気だるそうな声が中々いい味を出している。

さて参加バンドの楽曲のことばかり書いてきたが、このアルバムのメインとなるBen Vaughnの曲ももちろん素晴らしい。彼の曲は全部で11曲収録されているが、どれもクオリティーの高いサーフミュージックだ。
しかしYou Tubeに上がってないっぽいので、冒頭に少しだけ彼の楽曲が聞けるこの映画のトレーラーを貼っておく。

ノリのいい曲ばかりで小気味よく進んでいくし、尖った曲も多いのにB級コメディホラーのサントラだけあってどこかコミカルなノリがあるのでアルバム通してすんなり聞けてしまう。
サーフミュージックに少しでも興味がある方には是非手に取ってほしいアルバムだ。

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