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「好き」の因数分解 トレーナー

*「好き」の因数分解、は最果タヒさんの詩集の名前です。とっても素敵なので気になった方は是非。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784898155165


白状します、ほんの一年前まではパーカー派でした。というか今でもパーカーは大好きなんだけど、最近はトレーナーが流行りだよという話です。一応パーカーとトレーナーの定義をしておくと、パーカーはフードのついたもの。トレーナーはフードのないものです。それが厳密な定義なのかわからないし、多分間違っている気がしてならないけどそういう事にして進みます。
パーカーの何が良いってやっぱりフードのついている所で、フードを目深にかぶった時の自分だけの世界の感じがたまらない。物理的に視野が狭くなって、加えて少し暗くなって、でもそれ以上に一気に自分の中に閉じこもった感じがする。かたつむりってこんな気分なんだろうか。さすがに繁華街でフードをかぶったまま歩いているとこじらせた中学生かと思われそうなのでやめてはいるものの、帰り道一人の時なんかはよくフードをかぶっている。そんな僕がなんでトレーナー道に入ったかと言うと、なんのことはない。ただの気の迷いです。パーカーはその最大の長所であるフードの影響で少し暖かくなってくると首元がやや暑い。じゃあフードをとったトレーナーにしてみるか、そんなもんです。いざ着てみるとトレーナーの気軽さにすっかり心を魅せられ、今年1月からつい最近引きこもり生活を始めるまで、週5はトレーナーを着てました。でもパーカー愛好者だった身としては、やっぱり時々首元が寂しくなる。腕時計を家に忘れて出てきてしまった時のような、あのぬるっとした違和感がまとわりつく。爪が長いことに気がついた気持ち悪さにも似てる。機能上なんの問題もないし、別に寒くもないんだけど、ああここにフードが居てくれたらな。少しごわっと折り重なって僕の後ろの首を守ってくれたらな、後ろからうなじを刺される心配は皆無だけどそう思う。ちょっとどこか見えない部分を作っておくのが好き、だったのかも知れない。半袖より長袖が好きだし、夏もあんまり半ズボンをはかない。サンダルも少しそわそわするし、とはいえ夏はビルケンを愛用してるんだけど、腕時計もないと落ち着かない。正直邪魔だから普段はコンタクトだけどメガネも嫌いじゃない。きっと自分の何かに自信がなくて、物理的に見える場所を隠す事で周りに対して良く見せようとしているのかな。ミロのヴィーナスの腕を作らなかったアレクサンドロスみたいだ。美化しすぎか。それを思うとパーカーからトレーナーに変わったのは、隠す所が一つ減った、もしかしたら少し自分に自信を持てるようになったのかもな。なんて思ったけど、トレーナーの日はずっとマフラーやネックウォーマーをしてた事を思い出した。なあんだ、変わってないや。



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