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「好き」の因数分解 ギター

*「好き」の因数分解、は最果タヒさんの詩集の名前です。とっても素敵なので気になった方は是非。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784898155165


その楽器がギターと呼ぶのを知ったのがいつかわからないし、その頃ギターに興味があったのかもわからない。幼い頃から聴いていた音を鳴らすのがこんなに簡単だとは思わなかったというのが、姉が買ったけど使わなくなったアコースティックギターで初めてコードを鳴らした時の感想です。あと指がめっちゃ痛い。
ギターを始めるより先に音楽を聴くのに夢中になりました。言ってる事がいまいちわからない歌詞が、じゃかじゃかとホップする音に乗って流れていくのがなんだか心地よかった。歌詞を読むのが好きで日本語の歌も好きだけど、音を聴いてるだけも好きで洋楽やインストを聴くのも良い。特にインストは一度はまると一気に抜け出せなくなる感じがある。なので、あのかっこいい楽器をいつか自分が弾くことになるなんて思ってもおらず、今でもギターを持つ度になんだか少しふわっとした気持ちになります。憧れに近づいたような、余計離れてしまったような。
ギターの良いところの一つは一人でも楽しめるところです。弾き語りとか言うようにコードを鳴らして歌えばなんだかそれっぽくなる。あんまり上手くなくてもなんだかそれっぽくなるランキングではピアノと良い勝負で1位、2位を争っているのではないか。ピアノ全然弾けないけど。お気に入りの曲に出会ってはネットでコードを検索しジャカジャカしながら歌ってみる。それっぽくなったりならなかったりするけど、歌うことの方は次第に飽きてきて、音源を流しながら自分は弾くだけに落ち着く。やっぱりプロは歌が上手いんです。そうこうしていると自分はバンドのメンバーになったような気がして、ライブハウスのステージから見える景色を妄想しながら右手をふる瞬間は何にも変え難く無心になれる気がしています。きっとギターを弾くことは自分にとって精神安定剤でもあるみたいだ。コードを目で追いかけながら左手を動かし、自分なりのリズムで右手をふっている間は、忙しくてあんまり他の事を考えられない。もう少しうまいと違うのだろうけど、ギターを引いている最中、へたっぴの自分にはあんまり心と体の余裕がない。考える事の、考えてしまう事の多い世の中です。なにかしていないと落ち着かないし、ちょっと何かしているくらいではすぐに頭の中の小さな僕が次々思考をとっかえひっかえしてしまうので、多少忙しくして居なくてはいけない。どうやら僕の脳はお弁当にご飯を詰め込みすぎて美味しくなくしちゃうタイプみたいだ。そのうえで何か幸せなふわっとしたものに包まれていたいという願望まである。それを全部まるっとひっくるめると、ギターを弾くという行為に落ち着くのかもしれない。文章を書くことも少しそれに似ている。ちなみに写真は断じて私ではない。




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