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虎牙道イベストを読むオタク

はじめに

虎牙道イベストを読むオタクです。
 虎牙道のイベストを読んで「へー」と思い、特に感情を波立たせず過ごしていたのですが、私が設置している匿名ツールの方に感情ドバドバなご意見を頂いたので、折角だし何か書いてみようかなと思った次第です。
 よかったら、THE 虎牙道が好きな人にも読んでもらいたいです。
 以下、匿名ツールに頂いたご意見の抜粋です。
(掲載、ダメだったら匿名ツールの方にチクってください。さげるので。)

今回のサイスタのイベストが解釈違い過ぎたため、別の方の忌憚のないご意見をお聞きしたく送らせていただきました。

まず、漣が機械という他人の作ったルールでしか動かないものにすぐに適応している事に違和感を感じました。他人のルールに縛られず自分のルールに従って生きているのが彼の魅力であり強さだと思います。なのでそんなにすぐに他人の作ったルールに適応してしまうんだ…と今回のイベストは残念でした。
また、モバではチャットの文が拙かったりスマホの通話に戸惑ったり機械慣れしていない部分が描かれており、格ゲーではタケルに10連敗しているので余計違和感を感じました。タケルに負けたくない一心で練習するのはあるとは思いますが、苦手と公言してるとはいえゲーム慣れしているタケルにすぐに勝てるとは思えません。
次にタケルについてですが、彼は努力家でありしかもきっちりと結果を出すタイプの努力家です。しかし、このイベストでは結局タケルは誰にも勝てませんでした。引き分けは勝ちではありません。もし漣が苦手なゲームを練習したというのなら、タケルは努力において漣に勝てなかったという事になります。その程度の努力しかできないタケルを漣が何年も追いかけてたのかと思うとなんだか虚しくなります。
今回のイベストについてファンの方々は概ね評価をしており、理解に苦しみます。
しかし自分の考えが間違っていると誰かに否定して欲しくもあります。
もし違う見方があるのなら是非ご教授お願いします。
(後略)

匿名ツールより

後略には私を気遣う言葉と、私の作品を好いてくださっている旨の言葉が続いていました。ありがとうございます、作品も好かれて嬉しいと言っています。ありがと〜


前提条件

話をする前に前提を明確にする。議題設定とその整地は、物事を伝える上で重要だ。

・モバエム、エムステ、サイスタ、他媒体の出来事は別軸であるが、そこに登場する人物に差異はない。

これは非常に大事な前提で、よくこう言った話をする際、「またモバエム勢がケチつけてる」「自分が気に入らない設定出されたからってうるさ過ぎ」みたいな反応が必ず出てくる。
 こういう意見もあながち間違いではなく、違う媒体で新しい設定が出た時一々「解釈違いだ」と騒いでいると面倒な人間だと思われる。解釈違いという言葉の圧が強すぎることと、実際に面倒だからだ。
 こういうすれ違いは得てして前提の共有が成されないこと──不足がある状態で議論をしてしまう事で生まれるものだ。なので前提を先に明らかにする。

『モバエム、エムステ、サイスタ、他媒体の出来事は別軸であるが、そこに登場する人物に差異はない。』というのは、これらの出来事はそれぞれ別の場所で起こっているが、同じ現象が起こった際、その人物の特性は大きく変わらないという意味だ。
 つまり歌舞伎や演劇のような同作品を別の人間が演じる演目においても、その役が真に伝えること、抱くもの、行動は変わらないということに近く、
同じ条件、同じ実験器具、同じ過程を適用すれば、実験者が違っていても同じ実験結果に至る、という話に近い。

人間は不変であるが為に、同じことをしても結果が変わることは往々にしてあるが、こと結果が決まっている事象について、特に差異のない場で結果が大幅に変わるのは如何なものか?
 これが、質問者が抱いた解釈違いの一端と仮定し、今回の議題とする。


天才は何時如何なる時も勝者であるか

牙崎は最強大天才を自称するだけあって、体を動かすことに関して飛び抜けた才能がある。

TRL/09より引用
TRL/09より引用

そして彼は基本的に順応性が高い。それはゲームにおいても適用される。

日常での1コマ「昼時ファイトクラブ」より引用
日常での1コマ「昼時ファイトクラブ」より引用
日常での1コマ「昼時ファイトクラブ」より引用
日常での1コマ「昼時ファイトクラブ」より引用

これを読むと、恐らく『二人は以前格ゲーで勝負しており』『その時牙崎は大河に勝利し、その腕前を侮っている』。『その日から大河は格ゲーの練習を行っている』ことが分かる。
 多分、なのだが。牙崎はダンスと同じように物事の感覚を掴むまでが短く、最初こそ勝ち越すという事かなと読み解いている。

WDライブ2016/02より引用
Enthralling Dancer/09より引用

また彼は“他者の価値観を自身に適用され、それに準ずるよう行動するように制限されること”を酷く嫌う傾向にある。周囲に合わせることが苦手というよりは、周囲に強要された際に大人しくそれを飲み込むことを嫌っているのだと思われる。
 これは上記に加え、いくつかの台詞から推察される。

2回目スカウト台詞より引用
日常での1コマ「THE KOGADO」より引用

彼は他者に強要される事がなければ、比較的積極的に周囲にアクションを起こす特性がある。牙崎にとって必要な事柄であれば、理解できないものに対しても好意的かつ積極的に行動し、それに順応する動きを見せる。

K.now_O.nly/01より引用

今回の牙崎の動きはここまでに挙げた『順応性の高さ』『勝負への積極性』『勝利への貪欲さ』を端的に表している。個人的には理にかなったストーリーだったと思っている。
 あと一応、機械に不慣れな牙崎の描写はアイドルフォトのボイスで見られる。一応ね。

これは本当に想像の域を出ないが、PRイベントの『アイドルが宣伝として格ゲーで対戦を行う』という趣旨や格ゲーのキャッチコピーがTHE 虎牙道の出演に合わせて練られていることから、新発売の格闘ゲームなのではないかと思う。格ゲーを好んでいた円城寺、物覚えが早い牙崎、格ゲーが苦手な大河では、確かに予備知識0の状態で挑めば腕に差が出るのも致し方ないかなとは思う。


努力家の努力は徒労に終わるか

前項で挙げた『昼時ファイトクラブ』には続きがある。

日常での1コマ「昼時ファイトクラブ」より引用
日常での1コマ「昼時ファイトクラブ」より引用
日常での1コマ「昼時ファイトクラブ」より引用
日常での1コマ「昼時ファイトクラブ」より引用

きっとここが質問者さんの一番の解釈違いポイントなのだろう。
 ここでは大河は牙崎に格ゲーで勝利し、何度も挑んでくる牙崎を赤子の手をひねるようにあしらっている。
 これは大河のゲームセンスが牙崎に勝っているという描写ではなく、『大河タケルは敗戦を喫した牙崎漣や、この後開催される事務所内の大会に勝つために努力を惜しまない』という描写だ。

つまり彼はどんなゲームでも上手なのではなく、苦手なゲームでも上手くなるまで努力できるという事だ。多分『漣がタケルに勝ち続けるの分からん』と言ってる人間は、ここまで含めてそう言っている。筈だ。

K.now_O.nly/02より引用
K.now_O.nly/06より引用
K.now_O.nly/06より引用

というのが、恐らくここだ。彼は練習中一度も見せなかった奥の手を使い、形勢逆転に成功する。これこそ彼の努力の成果であり、大河タケルという人間の在り方だ。

K.now_O.nly/07より引用

が、勝てないのである。これには流石の私も後ろにひっくり返ってしまった。公園を歩いていたら突然知らないヤツにストレートパンチをお見舞いされたような気持ちだ。ここ、勝つ流れじゃないのか……!?

これでは確かに『大河タケルに努力を結実させるだけの力がないと描写されている』ように感じるのも納得だ。何せ本当に彼の努力は実らないのだから。

『努力した者が全て報われるとは限らん
しかし!成功した者は皆すべからく努力しておる!!』
とは、奇しくもボクシング漫画である「はじめの一歩」に登場する鴨川源二の言葉だが、まさかここで大河が報われないとは恐れ入った。まだ足りないってこと?じゃあ彼の弟妹が見つからないのも、彼の努力不足なんですかね……

【静かなる闘志】大河 タケルより引用
【Bullets】大河 タケルより引用

彼のすごい所は、得意なことはあまりないと言いながら、「努力は得意だ」とひたすら己を高め地道に目標に向かい続ける過酷な試練を当たり前のように特技だと言えてしまうところだ。
 それはつまり彼の生き様であり、何よりこの努力によって事故とはいえ知らぬ間に通りすがりの牙崎漣の人生を変えてしまったのだから、努力の結実の有無は大河タケルの人としての在り方と、牙崎漣の人間としての説得力に関わるのだ。

無難なストーリーにするとすれば、『記念マッチ数日前に大河が牙崎に初勝利を収め、焦った牙崎が更に猛特訓を積み、最終的に引き分けとなる』くらいが丁度良かったんじゃないかなぁと思う。

牙崎漣の強さを描写するには、大河タケルと円城寺道流の強さを描写しなければならない。というのが、虎牙道のストーリーにおけるミソかなと常々感じている。

牙崎漣が大河タケルに容易に勝利できるという構図の時点で、牙崎漣の「チビにだけは負けられない」という動機が破綻する。牙崎漣が本当に万能の天才で負けなしだとしたら、彼は恐らくアイドルどころか、大河や円城寺の傍にすら居ないだろう。


そこに揺るぎなき闘争心はあるか

正直大河の努力が実らなかったこともかなりショックだったのだが、もっと言うと円城寺の闘争心がサラッと流されてしまったのもちょっとショックだった。

FGL/09より引用
TRL/03より引用
スーパーライブフェス2016/07より引用

弟妹との離別、父親との決別というおよそ平凡ではない過去を持つ二人に対して持ち前の優しさと責任感から保護者役を買って出た円城寺は、しかしある日を境にその態度を一変させる。

315戦国村/06より引用
315戦国村/06より引用

彼が今までバチバチティーンの後ろでニコニコしているお兄さんだったのは、彼自身に『自分がこの二人を守る唯一の保護者にならなくては』という想いがあったからだ。円城寺自身の過去も壮絶でありながら、彼は彼なりの価値観で二人の過去を想い、二人を支えることを決めた。
 そんな折二人から「勝負しよう」と持ち掛けられた事で、円城寺はようやく二人が自分をライバルだと思っていることに気づき、そして自分にこう言ってくれた二人に全力で勝ちたいと奮起するのだ。

GoS/05より引用
GoS/05より引用
GoS/05より引用

こうして三人が同じ土俵に立ったことで信頼を築き、切磋琢磨する。

BoH/05より引用
BoH/05より引用
BoH/05より引用

互いの得意分野を引き出し合って、よりよいものを作り出す。

Enthralling Dancer/25より引用
Enthralling Dancer/25より引用

そしていつの日か円城寺道流は、二人に報いる為でなく、己の中に滾る闘争心から頂点に立ちたいと思うようになるのだ。

K.now_O.nly/08より引用

──という話を、まさか「ゲームで負けたくないんスよねぇ」という形で完結……させないよな?させないよね?違うよね、これは単純に負けず嫌いですって話なだけだよね?

頼むから別口でちゃんと作ってくれ……。


モバエムの7年とサイスタの半年

そもそもサイスタの時点で一度リセットし物語を最初から始めることに、個人的に反感はなかった。
 初めからになったとしても、彼らがまた変化すること、成長することは何一つ変わらないだろうし、それを2Dアニメーションとボイス付きで楽しめるならお得だなぁと思っていた。焼き増しだとも思わない。
 そういう意味ではエムステの315ストーリーは概ね良い印象を持っていて、THE 虎牙道の始まりをタケルの過去を起点にすることで上手く盛り込み、モバエムにおける絆物語での吐露や、FGLでの発破が流用されていた時は、「どこにいても何をしてもこういう行動を取るんだ!虎牙道はどこにいようと虎牙道なんだ!」とワクワクしたのだ。
 だから私がサイスタのストーリーに求めているのは、もしかするとモバエムの焼き増しなのかもしれない。
 大河が誰にも明かせなかった過去を円城寺に吐露する瞬間も、自虐気味に笑う円城寺に発破を掛ける牙崎も、牙崎が大河に頼まれ事をして狼狽える姿も、多分何度見たって嬉しいし、楽しい気持ちになれる。それらは全て彼らの“核”に直結しているからだ。
 だから私はエピソードゼロが好きなのだと思う。あれはいつか語られたストーリーの詳細であり、いつか語られなかったストーリーの全容だ。あそこには彼らの“核”がある。だから好きなのだろう。

別に、モバエムの7年をサイスタの1つのイベントで表しきる必要はない。というより、表しきれない。SideMは元から他愛のない会話からその人に流れる海の一端を垣間見るようなストーリー展開をし続けてきたのだ。今になってその姿勢を崩す必要はあまりないと思う。
 むしろ見えないからこその余白もあるのかなと、人は円満なコミュニケーションを行う為に相手を完全に理解する必要はないのだと、彼らの3分の1が見えたか見えないかくらいになった今、そう思うわけだ。

しかし前回のAltessimoや前々回のもふもふえんのイベストは、結構彼らの“核”が見えた気がして面白かったのだが、THE 虎牙道の回はなんか惜しいですね。皆、エピソードゼロとモバエムのストーリー読みませんか?日常での1コマとか、あと今回載せたシナリオとかオススメです。夜桜ライブと花風も読んでみてね。

とか言うとまた言われるのかな……「出た、モバエム勢の選民思想や」みたいなことを……自分がいいと思うものを勧めて何が悪い?言ってみろ…………

別にモバエムの全てがいいとは言わないし、サイスタの全てが悪いとは言わないし、誰が何を好きでも私が口を挟む道理はないと心得ている。大丈夫、好きなもんを好きでいていいし、ダメなもんはダメでいい。選ぶ権利は各人にある、何を言われようともな。


読者はそこに何を見るか

仮定した議題についての答えは概ねこんな所で、最後に、じゃあこのイベストとどう付き合っていくかという話をする。
 まあ非常に明快で、読まなきゃいいと思う。というか、読まず嫌いをせずに読み切って、きちんと自分なりに気に入らない点を洗い出せた時点で、質問者さんの中で答えは出ている。君はこのイベストと分かり合えないし、それ自体は何も悪いことじゃない。
 私も読むだけ読んで既に出た情報と照らし合わせてから好ましいかどうかを無意識に判断しているし、そこでおや……となるなら何かが自分の中で違うのだと思う。そういう時は距離を置くし、何事もそういうことかなぁとここ数年で学んだ。

ただもし、あなたの中に「こうなってほしい」という明確なビジョンがあるなら、それを分かりやすく、共感を得られるよう、極めて理性的に、継続して伝えていく必要がある。できれば同調を促しやすい、さり気ないツイートがいい。しっかりパブサに乗るようにして、運営側の市場調査に乗ることを祈りましょう。がんばろうね。
 まあ効果の程は知りませんが。問い合わせでも何でもね。

ちなみに私が今回のイベストで一番好きなのは、コソ練がバレた円城寺道流の「すまん!」です。声がつくっていいな……表情豊かで楽しいな……


追記

https://fusetter.com/tw/jlc7qGnp#all

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