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verandah

薄明かりの中、目を擦りながら身体を起こす。
隣で寝ている彼女に毛布を掛け直し目を細めて置き時計を見るが数字がぼやけてよく見えない。
枕元を物色しメガネをかけ時間を確認する。
時計は4:15と表示があり、3月も終わりかけといっても少し寒さが遠のいたくらいで肌寒く太陽はまだ顔を覗かしていなかった。
ベッドの淵に座り床に落ちたカーディガンを羽織る。
サイドテーブルに置いてあったハイライトをポケットに入れて彼女を起こさないようにゆっくりと立ち上がったつもりだったが後ろから「どこか行くの」と聞かれてタバコとだけ口に出しベランダへ向かう。

ベランダに置いてある灰皿を手すりに置いて残り一本だったタバコに火をつける。
空は白みかけていて遠くで新聞配達のバイクの音が聞こえる。
今日は1日何をしようかと考える。
長くなりすぎた髪も切りたかったし、好きな監督の新作映画も観にいきたかった。
財布に入れたままのチェーンの牛丼屋のお得なクーポンが明日まで。
気になっていた古着屋のオープン日は昨日だった。
タバコの煙を吐きながら、結局このまま布団に入って朝を迎え、隣に寝る彼女と起き掛けに身体を重ね合い、時間だけがすぎていくのかなと考えていると斜め向かいのベランダに同い年くらいに見える男が窓を開けて出てきた。

男は自分と同じようにタバコに火をつけて柵に体を預けている。
一瞬目が合った気もしたが声が届く距離でもないため特に交わす言葉はなかった。
タバコも吸い終わり、自室に戻ろうとすると男が何かを指差しているのが見えた。
男の指す方には猫が2匹戯れ合っていた。
僕らそれをお互いのベランダから見ていたのだが、猫たちは一向にその場を離れず身を寄せ合っている。時折自転車や自転車が近くを通るが逃げるそぶりがなかったので、なんとなく猫の近くに行こうと思いベランダから玄関に足を運ぶ。

階段を降りてついでにポストを覗く。
特に興味のない広告紙をポストから取り出して折りたたみながら猫に近づいていると、向こうから人影がこちらに歩いてくるのが見えた。
「かわいいですね」男が猫に近づいて目線を近づけるように屈む。僕の立った足元に近づいてくる猫の背を軽く撫でる。
「この辺の猫ですかね?飼い猫?」「時々朝早く起きるとよくこの2匹が戯れてるんです、それをよく見ながらぼーっとしてて」と男は猫を抱き抱えて僕に見せる。
僕は足元にいる猫から視線を男が抱えている猫にずらす。頭とお腹を軽く撫でると小さくニャーオと鳴く。
男が猫を地面に下ろすと2匹の猫はどこかに走って行った。
行っちゃいましたねといい、お互いに軽く会釈をしながらお互いにマンションへ帰っていく。
僕は階段を登り部屋に帰る。
寝ている彼女の横に毛布の隙間から潜り込む。背を向けていた彼女がこちらを向いて胸の中に潜ってくる。
僕は久しぶりに映画でも見てご飯を食べに行こうともう寝てるかもしれない彼女に問いかけてみた。

メモに残ってたのでそのまま載せます

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