[ポアロBBS][しょぺしんぼ]第17話

「しょぺしんぼ」
第17話「旬の魚」
 
「ポポ岡ーーーっ!!」
ネントロンチャ新聞文化部にウドルウドル副部長の怒声が響いた。
怒鳴られたのは、ぐうたら社員のレッテルを貼られているポポ岡ヌーペチ郎である。

「ポポ岡っ!フォッチコ☆フォー!!のメニュー作りはどうなっているんだ!!」
「そうですよポポ岡さん。出社しても睡眠薬を飲んで眠ってばかりじゃないですか」
ポポ岡と一緒にフォッチコ☆フォー!!のメニュー作りを担当している女性記者、バボちゃん・プープープー・ソレ!・プープープーも責める。
眠たそうにしながらポポ岡ヌーペチ郎は答えた。
「そんなに焦る必要はないよ。そろそろ来るんじゃないかな?」
 
「こんにちわー、ポポ岡さん、いますかー?」
ちょうどそこに大きなクーラーボックスをさげた男が訪れた。
ポポ岡が声をかけた。
「やあ、モチルパンさん。例のもの、手に入ったかい?」
「ええ、極上のものがとれましたよ」
 
バボちゃんがポポ岡にたずねる。
「あのポポ岡さん、こちらの方は?」
「ああ、この人はモチルパン・ジョン・F・ジョンさん。
 ペルペル港でヒムロックの一本釣りをしている漁師さ」
「ヒムロック?」
「ええ、これですよ」
モチルパンと呼ばれた男がクーラーボックスを開き、何かを引きずり出し、持ち上げた。
ヒムロックだった。
それはそれは見事なヒムロックだった。
死んでる。
「おー、これは大したもんだ。通常の二倍、いや三倍はあるね」
「え~、これがヒムロックなんですか?
 わたし、お店でお刺身になってるのしか見たことなかったわ」
「ヒムロックは遠浅の海に住んでいて、この時期に一番脂がのる。
 一般に流通するのは赤身の部分だけだけれども……」
そう言ってポポ岡が包丁を握った。あっという間にヒムロックを解体する。
そしてヒムロックの、のどの付け根あたりに手を突っ込み、何か黒いものを引きずり出した。
「ヒムロックで一番うまいのは、このポロペス・謎袋なんだ。
 しかし通常のヒムロックだと小さすぎて食べられる部分がほとんどない。
 これぐらい大きなものでないとダメなんだ。」
「ほほー、これがポロペス・謎袋かぁ。
 まるでチーパチーパのような匂いがするんだねえ」
ウドルウドル副部長が感嘆の声を上げた。
「そう、ポロペス・謎袋は漁師の間では『海のチーパチーパ』と呼ばれているんです。
 このポロペス・謎袋を使った料理こそ、フォッチコ☆フォー!!のメニューにふさわしいと、俺は考えています」
 
「ふはははは、愚かだなぁ、ヌーペチ郎っ!!」
「き、貴様はショショ原ボッチョモ!!」
突如、美チャボ倶楽部の主催者であり、ポポ岡ヌーペチ郎の実の父でもあるショショ原ボッチョモが現れた。
「ネントロンチャ新聞の若造が調子に乗っていると聞いて来てみれば、ヒムロックなどという下魚をいじくりまわして喜びおって…。
 貴様は料理というものを全く理解していない!!」
「そこまで言うからには、俺たちを納得させられるものを用意しているんだろうな?」
「ふっ、無論だ。ウォポ島、入れ!!」
ボッチョモの声に応じて、マスクに白衣でメスを持った男が中に入ってきた。
「紹介しようウォポ島ポーポポー。
 美チャボ倶楽部の一員にして天才脳外科医だ」
「脳外科医?ま、まさか…!?」
「そう、脳いじっちゃえば味覚なんて簡単に操作できちゃうんだよ!!
 ウォポ島、その腕を見せてやるのだ!!」
「はいっ!!」
言うが早いか、ウォポ島のメスがウドルウドル副部長の頭をスパーン。
露出した脳みそに電極をプスプス。
「スイッチ、オーン」
「ひいぃぃぃいいいいぃぃぃ!!!!」
「さあ、この美味しくないご飯を食べるのだ!」
パクパクパク…
「……うまぁぁああぁあああいっ!!
 こんなうまいもの食べたことないぃぃっ!!」
涙を流し、座りションベンを漏らして喜ぶウドルウドル副部長。やばいね。
「ふふふ、どうやら勝負あったようだな」
勝ち誇るショショ原ボッチョモ。
「くそっ、ボッチョモ~~ッ、こんな卑怯な手で勝ってうれしいのか!?」
「うれしいねっ!!すっげぇうれしい!!
 わし、お前に勝つためなら何でもすっから!!
 あー、楽しかった!!じゃ、満足したし、帰るわ、バイバーイ!!」
帰っていった。
 
「チックショーーーッ!!」
ボッチョモに敗れ悔しさをにじませるポポ岡。
「ポポ岡さん……」
それを気づかうバボちゃん。
「うまあぁぁっひゃあぁぁひぃぃいい!!」
電極刺さりっぱのウドルウドル副部長。
料理という概念がゆらぐ中、はたして、フォッチコ☆フォー!!のメニュー作りはどうなってしまうのか!?
 
               つみき


以上、本文ここまで。
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