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ウィルコ



2014年3月13日の名古屋クラブクアトロで見たギターヒーローの姿が忘れられない。
ipodで聴いていた鋭いカッティングの音が生音で突き刺さる感覚や、まっすぐ前を向き、ステージをその長い足で縦横無尽に動き回るパフォーマンスも、鮮明に思い出せる。

末期がんが判明して、治療よりもギターを弾いてライブをして残りの時間を過ごすと決めた彼。
来日が決まった時はすぐにチケットを取った。
東京はソールドしてしまったから名古屋クアトロ。初めて一人で深夜バスに乗って名古屋に向かった。


高校生の頃虜になったミッシェルガンエレファントのルーツであるDr.feelgoodは、私にとっても大事なバンドの一つになっていた。


ギターを弾くウィルコジョンソンという人は、とてつもなく魅力的な音を奏で、まっすぐな目をしているなと思った。


そんな彼の単独公演を見れたことは一生忘れられない出来事だ。
MCで言葉少なに彼が話す内容を聞き取れていなかった私は学業を怠ったことをかなり後悔した。

知ってる曲も、知らない曲も、言葉がわからなくても、全部がかっこよかった。
「ギターヒーローをこの目で見た」という感覚を胸に名古屋の街を歩いて帰ったのを覚えている。

帰りに通った道でTHE BACK HORNがラジオの公開収録をしてたな。
それでも立ち止まらないほどに魅了されてふわふわとした気分だった。


なんでこんなに惹かれたんだろうか。
ピックを使わず、指で鋭いカッティングを鳴らし、キレているような表情でステージに立つその姿は、何かに実直に向き合ったピュアな人が持つ雰囲気のようで、そこに強く惹かれた気がする。


私なんかがその魅力を語り尽くすなんてことはできないのだけれど。


幸いなことに、来日を終えた後病状は回復に向かい、結果的に受けた治療も功を奏し、後にはフジロックにも出られるほどになった。

彼は当初の予定通り、弾ける限りのギターを弾いたんだと思う。

そしてついに2022年11月21日、永遠の眠りについた。

よくミュージシャンが亡くなった時に、きっと天国でも歌ってるよとか言うけれど、彼もまた、その指で鋭い音をかき鳴らしているに違いない。


唯一無二のギターヒーロー、かっこいい音を聴かせてくれてありがとう。


R.I.P. Wilko



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