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ハッピーハッキング。

こんなものを手に入れてしまったら、文章を書かずにいられるわけがない。

HHKB、その経緯。

ハッピーハッキングキーボード、通称HHKB。これは、知る人ぞ知る高級キーボードだ。20年前から存在は知ってはいたのだが、如何せん学生には敷居の高い代物。特殊な人が使う業務用商品だという認識で、その頃は自分が買うことになるとは思ってもいなかった。

さて、これからこの蠱惑的なキーボードの話をしていくのだが、まずはマウスの話から始めたいと思う。

自分は長いことマウスというものを使っていなかった。仕事でも自宅でもThinkpadというノートPCを使用していたせいで、完全にトラックポイント派だった。そう、キーボードの真ん中に赤いポッチが付いている、アレだ。

ところが最近Kensingtonトラックボールを試してみたところ、これがすこぶる快適なのだ。なぜもっと早くから使わなかったんだというくらいで、早々に移行してしまった。
トラックポイントは狭い場所での利用に非常に便利なのだが、指に無駄な力が入りやすい。首筋に負担がかかっていたようで、トラックボールに乗り換えてから肩が軽くなったように思う。

そうなると極端なもので、俄然キーボードの方の買い替えにも興味が出てくる。そこに狙いすましたかのように、数年ぶりにHHKBの新型が出たという話が入り込んできたのだ。購入する他ないだろう。あまりの人気に気づいた時には一時完売していたのだが、在庫の復活を待って早速注文した、という次第だ。

そうして購入してからはやふた月ほど。使用した感想を書き留めて置こうと思う。

インプレッション。

前述の通りHHKBは省スペースの高級キーボードだ。その愉悦的な打鍵感は多くのプログラマを魅了してきた。
この目まぐるしく移り変わる時代のなかで、20年以上前からほとんど形を変えずに存続していることからも、多くのユーザーから支持され続けていることが伺える。

今回購入したのはその最新型ハイエンドモデル、HHKB Professional HYBRID TYPE-Sの日本語配列/墨というモデルだ。価格は実に35,000円。よほどの期待か信頼がなければ出せない額だろう。

実際に触ってみて分かったのだが、これはお世辞ではなく、ただただ文章を打ち込むことが気持ちいい。音も上品で耳障りがよく、いつまでも聞いていたくなる。
例えるならお気に入りのスニーカー。何の用事もないのにとりあえず外出したくなる、そういう魅力がある。

購入前にはぜひ一度実機で経験してほしいのだが、今回の新型は通販専売で小売店での陳列をやめたらしい。まあ興味ある人間は嫌でもたどり着く商品だし、それだけで生産が追いつかないほど売れるのだから、あえて一般向けに展開する必要もないのだろう。
店頭では旧型の「Professional 2 TYPE-S」というものが一番近いはずだ。見かけたら触ってみることをお勧めする。

あまりに軽快でいつまでも叩いていたくなるのだが、実際のところ普通に生活していると、私用でキーボードを叩くことがそれほどない。それならレビュー記事でも書けば良いじゃないか、そう思って今に至るわけだ。

英語配列と日本語配列。

さてこのHHKBだが、インターネットを見て回ると、購入者のほとんどが英語配列(US)を選んでいるように見える。人によっては日本語配列(JP)のことを「粗悪な模造品」などと評していて、あたかもHHKBを選ぶなら英語配列を使いこなせて当たり前とでも言わんばかりだ。

確かに英語配列の見た目はスタイリッシュだし、文字を入力することに特化したら突き詰めると英語配列のほうがスマートなのかもしれない。だが、自分はこの20年間ずっと日本語配列キーボードだ。今更英語配列に慣れるというのも無理があるし、何より職場は機器持ち込み禁止なのでどうしても日本語配列になる。長く使うものだし、格好つけずに日本語配列を選んでおくのが賢明というものだろう。

ちなみに日本語配列を選んだ時のメリットは以下のようなものになる。

・「半角/全角」キーがワンボタンで使える(英語配列はFn+キー)
・独立したカーソルキーがある(英語配列はFn+キー)
・「無変換」「変換」「ひらがな/カタカナ」といったキーがある(その位置に機能を割り振れる)
・左下角にもキーがあるので、Ctrlの位置を変えた(一般的な位置に戻した)時の操作に違和感がない

逆に日本語配列が英語配列に比べて不便なのは、カーソルキーの分右シフトが小さくて使いにくかったり、その列全体が少々(1/3キーほど)左にずれていることくらいだろうか。人によっては致命的になるだろうが、自分は慣れの範疇だと思っている。
その他の点(Enterの位置や記号の配置)は日本語配列と英語配列の差によるものなので、HHKBに特有の差ではないため省略する。

念の為、日本語英語の配列問わずHHKBに共通している特殊な点もいくつかあげておこう。

・Aキーの左の英数キーの位置がControl
・ESCの下に半角/全角キーが無い(半角/全角キーの位置にESC)
F1~F12のキー列が無い(Fn+数字キー)
DELキーがFnとの同時押しになる

幸い日本語配列についてはスイッチでControlを左下に移すこともできるし、最新のHYBRIDならキーマップのカスタマイズも自在にできる。半角/全角キーの位置さえ決まれば、他はさほど困ることはないだろうと思う。

膝上タイピング。

そんなに日本語配列がいいなら、同じ「静電容量無接点方式」で似た打鍵感を持っている普通のレイアウトのキーボード、東プレの「REALFORCE」シリーズを買うのが正しい判断だろうと言う向きもあるだろう。正論だと思う。
しかし自分の自宅でのタイピングスタイルはリラックスチェアに座っての膝置きだ。肘掛けに干渉しない長さで、ホームポジションから左右が均等な重量バランスになる必要がある。これを満たすとなると、やはりHHKBの方が望ましい。

余談だが、膝上タイピングにはやはり冒頭でも触れたThinkpadのトラックポイントキーボードが最強だ。なにせホームポジションから手を離さずマウス操作もできる。椅子も机もないサーバールームでサーバー筐体に腰掛けて仕事をするのに最適……いやな記憶だ。

Bluetooth。

前出の「REALFORCE」を選べないもう一つの理由が、無線タイプが存在しないことだ。やはり無線機器に慣れてしまうと、有線接続が不便に感じてくる。持ち歩きを前提とした小型キーボードなのでなおさらだ。

この新型HHKBは最大4台までペアリングして、切り替えて使えるのがすこぶる便利だ。外出先でAndroidスマホで使って、帰宅後PCに繋ぎ変えるといったことが一瞬でできる。気軽に持ち運べるので、この機能で遊ぶためだけにタブレットPCが欲しくなる。

接続の安定性に関しても、ほぼ問題ないと言っていいと思う。年末から今日まで使ってきて、2回ほどチャタリング的な動作(同一のキーが押し込まれたままになって操作を受け付けなくなる)に遭遇したが、いずれも自宅のWindows PC(USBドングル)に繋いで使っている時で、ドングル自体がBT4.0に対応していない古いものであることが原因かもしれない。その他のPCやAndroidスマホにつないでいる間には発生したことはない。

とりあえず干渉しそうな自宅無線LANの出力を半分に落としたところ、それ以降は発生していない。再発するようならドングル買い替えも考えてみようと思う。

乾電池。

このキーボードは充電式ではなく乾電池式だ。バッテリーが消耗するよりも長い間使える機器というコンセプトだそうだが、そうなると気になるのは電池の持ちだろう。

同梱の電池で2ヶ月ほど使っているが、夜と休日の利用だけなこともあり、OS上ではまだ100%表示のままだ。公式表記では普通に使って3ヶ月ということなので、自分なら半年くらいもつのかもしれない。

その分省電力による自動電源オフが結構マメで、30分番組を見て戻ってくる頃にはスリープになっているのが少々面倒ではある。何らかのキーを押したら即復帰するような仕様なら良かったのだが。

結論。

やはり良いものは良い。これに触れたいから、という理由で書くべき内容を探してしまう。今回はこのためにnoteを始めたといっても過言ではない。こうして本末転倒な流れを起こして文章を書くための原動力になる、そんなキーボードだ。長く使っていきたいと思う。


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