立甲とアスリートパフォーマンス論争

アスリートが立甲しているのをSNSで出して「すげー!」という反応があったり、やっぱりトップアスリートは立甲がうまくできるんだな!という反応があったりしますね。

そんな反応に知人ATがそもそも立甲ってスポーツパフォーマンスに必要?という真っ当な疑問を提起していました。

個人的にはアスリートの立甲をしているSNSや反応を見ていても傍観してたのです。

初めに言っておきますと立甲自体を否定しません。すばらしいモビリティエクササイズであり、私の知識の及ばない伝統的な動きであるというものにたいして尊敬を意を持っています。その捉え方に対しての私見をお伝えしたいと思っています。

私も立甲していたこともありましたが、あくまですっきり感を出すためのストレッチ感覚で競技目的として勧めたことはありません。

どうも立甲をするというその可動性、柔軟性の要素の一つの方法が目的になってしまっている気がします。

凄い選手がやっている=スポーツパフォーマンスが上がる

には直結しません。スポーツパフォーマンスは様々な要素が絡みますので。

立甲は伝統武道から由来するようですが、翼のように「肩甲骨を立てる」ことにより腕・肩の動きの自由度を向上するというのが目的のようです。脊柱の水平面に対して30~50度くらい肩甲骨が上がると良いと言われているそうです。

肩甲骨の関節は骨を介さない筋と結合組織によって結合する特殊な関節です。それらの組織は肋骨部や胸肋部などにも関わるので、その柔軟性により肩甲骨と脊柱肋骨部の解離するように見えるかと思います。またその可動、柔軟性はその関連する筋や結合組織の影響を受けるために、その弛緩状態や柔軟性、身体認知、ボディーコントロール能力があると立甲が上手く遂行できるようになるでしょう。

そもそも肩甲骨の動きは主に6つです。

画像1


1から挙上~下制~内転、外転、上方回旋、下方回旋です。

肩甲骨の動きに関しては以下のYoutube動画が凄く分かりやすいです。

このように3D三次元的に動きます。

ピッチャーで問題が起こるのはこの中の下方回旋ポジションで上方回旋が上手くいかない状態という事が謳われていますが、未だに議論はあるようです。

立甲の動きはX軸での動きがメインのように見受けられます。


画像2

ピッチャーにおいて重要なのはピッチングメカニクス的に上記の上方回旋、それに加えてリトラクションという動きが重要となります。コッキングの際に肩甲骨を引くあの動きです。

画像3

肩甲骨の内転の動きがメインですが、その特性により上方回旋や挙上も絡まって三次元的に働きます。

ここで重要なのが、この際には胸椎、胸郭の回旋も伴うという事です。

肩甲骨は胸椎、胸郭と筋や結合組織で機能関節を構成しているからこそ、この回旋との協調性が大事になります。

立甲ならではの肩甲骨のフリーモーション、可動性はこの動きの際の要素の一つとして重要ではあるかと思います。ただスポーツのパフォーマンスとしてはこの協調性、元の筋のスタビリティ、(議論はありますが)肩甲骨のポジション(位置覚)というのが先んじて重要かと思います。

これは投球だけでなく、走る動作でも同様です。走る動作も回旋を伴います。

ただ可動の要素として行うのは有効だと思います。しかしながら方法論の一つです。方法を目的にして立甲できたから速い球投げれる。速く走れるということにはなりません。

投球時に重要な部分は1、肩関節自体、2、肩甲帯、3、胸椎、胸郭、4、LPHC腰椎骨盤股関節複合体です。1、肩、特に関節包は動きの初動のスイッチとして重要なのでしっかりとケアをすべき部位です。2、肩甲帯の上方回旋の動き、アライメント、3、胸部の回旋などの可動性。

4番目は見落とされがちな部分です。投球動作はLPHCとのカップリングは重要な要素です。LPHCの可動性やスタビリティを含めた機能性は胸部の回旋に影響を及ぼしますので。


とにかく立甲は肩甲骨の可動性によいエクササイズだと思います。ただそれは要素の一部でパフォーマンスがそれのみで上がるという訳ではありません。当然その可動性というピースが足りなかった選手が行う事でバシッとはまってパフォーマンスが向上する可能性もあります。

ただ盲目に立甲のみを目的として行わない事。

限定で数日間の無料公開です。

お勧めエクササイズを追加して再公開いたします。

J Sport Rehabil. 2012 May;21(2):186-93. 
No Effect of Scapular Position on 3-dimensional Scapular Motion in the Throwing Shoulder of Healthy Professional Pitchers
Amee L Seitz et al.

Current concepts: scapular dyskinesis.
Kibler WB, Sciascia A
Br J Sports Med. 2010 Apr; 44(5):300-5.

Mechanics and pathomechanics in the overhead athlete.
Kibler WB, Wilkes T, Sciascia A
Clin Sports Med. 2013 Oct; 32(4):637-51.

Scapular dysfunction in high school baseball players sustaining throwing-related upper extremity injury: a prospective study.
Myers JB, Oyama S, Hibberd EE
J Shoulder Elbow Surg. 2013 Sep; 22(9):1154-9.

The role of the scapula in athletic shoulder function.
Kibler WB
Am J Sports Med. 1998 Mar-Apr; 26(2):325-37.

The Kinetic Chain in Overhand Pitching
Its Potential Role for Performance Enhancement and Injury Prevention
Shane T. Seroyer, MD, et al. Sports Health. 2010 Mar; 2(2): 135–146.

Hip range of motion and scapula position in youth baseball pitching pre and post simulated game AltmetricBiomechanics Hip range of motion and scapula position in youth baseball pitching pre and post simulated game
Gretchen Dawn OliverJournal of Sports Sciences Volume 33, 2015 - Issue 14


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