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ファッシア(Fascia)の基本のキ

メモ的Fascia論

Fasciaはいわゆる筋膜といわれていた筋肉や臓器を覆っているものという認識から全身に行きわたる構造体、機能形態として認識されるようになってきました。
超音波での2Dエコーで膜組織を見られてきた変遷を経てDr. Guimberteauに代表される3Dマイクロスコープなどによって細部構造まで観察できるようになり、その単なる膜構造から立体構造のマトリックスとして概念が変化を遂げてきています。

Fasciaは鶏肉のむね肉を覆う膜のような膜状構造だけでなく、Loose connective tissue(疎性結合組織)も含むものとされています。
※ 疎性結合組織 器官や上皮を保持し、コラーゲンやエラスチンを含む多様なタンパク質性の線維を有する。
密性結合組織 靱帯や腱を形成する。密性結合組織には強力な伸長強度を示すコラーゲン繊維(線維)が詰め込まれている。繊維の配列に基づき、交織繊維性と平行繊維性の2種に細分されます。

筋膜と認識されているとりのむね肉の薄皮様の膜組織は筋上膜になるが、筋の内部の筋束を覆う筋周膜、筋線維を覆う筋内膜もシームレスに繋がっていることが分かっており、一概にひとつの膜構造とは言えないのが実情です。
その為に「筋膜」と平面帯で認識してしまうとその本来のFaciaのもつ独自性を失うことになります。

かつての解剖学、外科手術では疎性結合組織は目的の組織に対して邪魔者として扱われてきました。その為にFascia本来の機能や構造の認識が遅れていたとされています。

近年のFasciaの研究では膜組織だけでなくECM細胞外マトリックス、細胞学、流体力学、生化学などの見地からも捉われ始め考察が広がっています。

Fasciaというものはコラーゲン、エラスチンなどの線維構造、ヒアルロン酸などの基質構造を含む立体的網目構造を基本として全身に繋がるネットワークシステムであるとFascia Reserach Societyでは纏められています。
その為に機能解剖的にいち解剖学組織ではなくひとつの機能構造体であるという認識が重要です。

ここまでを纏めるとFasciaは膜ではなく、立体的網目状の機能構造体であり、解剖学的のみでなく様々な見地から考察しなければならないものであるという事です。

3DマイクロスコープにおいてFasciaの認識は大きく広がったが、3Dマイクロスコープではミクロの視点から毛細血管の内部の赤血球のながら、リンパの律動性収縮なども確認できます。
https://www.youtube.com/watch?v=eW0lvOVKDxE
Dr. Guimberteauはそのダイナミックな膜組織の伸張状態での水分の変化、細胞の伸張なども把握するものとしています。
その伸張により基質成分においてもその浸透圧の変化により保水性が変わることも3Dマイクロスコープによって確認することが可能になりました。
また平面膜構造と見られてきた組織もFascia内部の線維は複雑に交錯しその線維間の空砲も形態外力に応じてダイナミックに変化をしています。
またFasciaには毛細血管が通過、並走などしているのも確認され、その栄養供給、また喫煙、線維化構造による毛細血管への影響も同様に確認されています。
Dr. Guimberteauはこの立体網目状構造をMicro vasuolar sliding systemと予備、衝撃吸収システムとして形態を維持し、構造体に柔軟性を持ち、伸張によるダイナミックな線維構造に対する基質成分の保水成分を保っているとしています。

張力の関係は細胞でもいえる部分で。細胞はそのダイナミックな伸張性をもつことでその平衡性を保っているとされています。
生命活動において細胞の存在は欠かせなく生命体とはその細胞の活動の平衡性であるともいえるでしょう。
線維芽細胞は傷害や加齢、炎症などの影響によって筋線維芽細胞に分化されることなくターンオーバーを繰り返すことエその伸張性を維持して外力に対して対応をしています。細胞はその加わる機械的ストレスによって活性される為に細胞の維持のためには機械的ストレスが必要となる。また線維芽細胞は基質成分の生成を促すために細胞の活動はECM全体の環境を維持するためにも重要であるでしょう。

FasciaはECMとその細胞と定義されることも多くなり、ECM細胞外マトリックスへの認識も重要です。
細胞外マトリックスは細胞の分化、増殖に関わる重要な構造であり、細胞外マトリックスのヒアルロン酸をはじめとするプロテオグリカンが
大量の水分を吸収しFasciaの保水を維持し、衝撃吸収に重要な機能を持ち、ヒアルロン酸が組織の滑走性を高めているとされています。
細胞は主に線維芽細胞が中心と考えらているが近年SteccoによりFasciacyteというよりヒアルロン酸の生成を促し、Fascia組織の多く含まれるFasciaの細胞の存在の論文が発表されています。

Fasciaは膜構造だけでなく立体的網目状構造であり、機能システムである。そのダイナミックな機能によりその形態や機能を維持し生体の機能的な活動を担っています。
またECM+細胞であるため細胞外マトリックスさらには細胞への認識も必要であるでしょう。

今までのようなFasciaの概念から幅広く捉えられるようにその考え方が広がっている一方、「Fasciaのラインが繋がっている」「Fasciaは内臓や感情にも関わっている」などと現状出ている研究から認識を過大にしてシステムに都合よく捉えてしまうという現状を嘆いている専門家もいます。

まだまだの分野なので可能性を秘めている組織であるとともに、その認識の過大評価も気を付けなければならない部分です。

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