友人の分のお冷まで注ぎにいくなソング

友人の分のお冷まで注ぎに行くな

友人の分のお冷まで注ぎに行くな

友人の分のお冷まで給水機へ注ぎに行くな

友人の分までお冷を注ぎに行くお前ははたして

ああ、俺いいことしたなあと

こりゃ来世も人間に生まれ変われるだろうなと

思っているのか

とんでもない

来世は人間？

違うね

お前の来世は

タカラダニだ

アスファルトの上をうろうろしている

ごまつぶ大の赤いダニ

真っ赤で目を惹くものの

益も害もないから全く研究されずに放置されて

生態がまったく謎のままなダニ

それがお前の来世の姿だ

そんな貴様のために

優しい俺が高解像度のタカラダニの画像を貼っておく

よく隅々まで目を通して予習しておけ

そもそもお前は

このドラマの登場人物が

お冷を注ぎに行くお前と

注いで来てもらう友人

その二人だけだと勘違いしてないか

思い描くがいい

空のコップを持って立ち上がろうとする友人を制し

彼の手からコップを奪い取り

「俺が一緒に注ぎに行くからいいよ」なんて

甘言をのたまいながら

給水機へ歩いて行くお前

一杯目のお冷を注ぎ終わり

そのコップを脇に置いて

二杯目のお冷を注ぎ

お前がちっぽけな達成感を感じているその後ろでは

俺が

俺がいる

俺が立っている

ただ

俺一人分の水を注ぐために

俺が立っている

二杯目を注ぎ出したお前の後ろで

俺が

どんな表情を浮かべているか

知らないのだろう

知らないからそんな悪行が為せるのだろう

なぜ悪いのかが理解できないというお前

プライバシーポリシーの

「同意します」の

チェックボックスにも劣るサイズの

脳みそを所持している

そんなお前でもわかるように

説明してやろうか

お前がお冷を注いでくれたことで友人が抱いたお前への感謝と

二人分のお冷を注ぐためにお前が消費したエネルギーと

お前が余計にお冷を注いでいるあいだ並んで待っている俺の疲労

グラフにしたらこうだ

なぜかわかるか

いいか

地球には重力がある

なにもしていなくても常に

物体を地面へ押し付けようとする

力が働いている

人間だって例外じゃない

そんな強大な力を

たった二本の足で支えている

人は

人はな

座ってる状態が一番疲れない

その次に

座っている状態

その次がわかるか

歩いている状態だ

歩いていれば

足の筋肉はほどよくほぐれ

負荷も分散される

もうわかったよな

立ってるのが一番疲れるんだ

だからこそ

「廊下に立ってろ」が罰として成立するんだ

友人の分までお冷を取りに行くぐらいで

失うものは大してないんだ

ゆえに

感謝も大してされない

そんなちっぽけな行為で

全く無関係の俺が

めちゃくちゃ疲れるんだ

お願いだ

俺を踏み台にして出世してもいい

俺の恋人を寝取ってもいい

腕だってくれてやる

だから

友人の分のお冷まで注ぎに行くな

最後に残った

俺の安らぎの瞬間まで

お前のその

腐臭にまみれた親切心で

よごさないでくれ