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ペンと箸


 令和納豆のロゴを見ていて思い出したのだが、俺も箸の持ち方がおかしい。この一文だけ書いたところでダラダラと言い訳がよぎり始めたので、さっさと実際の写真を見てもらおう。


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 これが俺の普段の持ち方だ。こんな持ち方だろうと小豆から大豆に至るまでなんでも掴めるのだから別に支障はないだろうと思うのだが、やはり体裁はよくないらしく、店で定食などを食べていると周りの客から信じられないような表情を向けられることが多い。それならまだしもマクドナルドでビッグマックを食べているときも奇異の目で見られることがある。いくらなんでも納得いかない。弓を極めた達人は的を射るのにもはや弓すら要らなくなるという話は聞くが、俺もその域に達したのかもしれない。箸すら持っていなくても、俺の存在自体がバカ箸というわけだ。嬉しいわけないだろ。流石にショックを受けた。最後に残しておいたバンズのゴマをストローで一気に吸い込みながら、正しい持ち方に矯正しようと心に決めた。


 長年染み付いた癖はなかなか治せないものとお思いだろうが、実はあまり危惧していない。何故かというと、かつてはペンの持ち方も間違っていたのだが、1年ほど前に正しいスタイルに矯正できたからだ。


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 以前はこんなペンの持ち方をしていた。正しい持ち方だと人差し指・中指・親指の三本に力がほどよく分散されるのだが、これだと親指がぎゅーっとペンを押し付ける形になるため、長文を書いているうちに中指のペンと接しているあたりにタコやマメ、魚の目、卯の花が出来たりして痛い思いをする。そこで一念発起して正しい持ち方を心がけるようにしたら、1週間もかからないうちに完璧にマスターできた。


 こんな簡単にスタイルを変えられたのは、俺が天才である所以だろうか。なんでも要領よく吸収できるスポンジのような海綿体を持つ俺ならば、箸の持ち方もすぐに直せるだろう。さっそく試してみる。


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 これが正しい箸の持ち方らしい。なるほど、確かに見た目は美しい。食べログのロゴそのものだ。で、これをどう動かせば食べ物を掴めるのだ?どうやら俺は勘違いしていた。ペンは持つだけだから簡単だが、箸は「挟む」という動作も必要になるのだ。ところがどうだ見てみろ。二つの棒が並行じゃねえか。こんなので物を掴めないだろ。指が5本なきゃできない芸当だ。


 それでも無理やり続けていればいつか習得できるだろうと、悪戦苦闘しながら松屋のサバ味噌定食を食べていたのだが、やはり道は険しい。特にサバの骨を抜き取るのが大変だ。慣れない持ち方というのもあるが、なかなかに手強い骨が一本あるらしく、いくら力を込めても全然抜けない。数分間格闘したが結局徒労に終わり、とりあえず身をほぐしてみることにした。


 柔らかいサバの身を箸の先で割くとそこから、綿棒ぐらいの太さの白い骨が顔を出した。いくらなんでもデカ過ぎだろ。流石におかしいと思って更に身をほぐすと、俺が骨と思っていたのは皿の仕切りだと分かった。焼肉定食の皿をサバ味噌に使いまわすな。

前に進む理由をくれ