見出し画像

大谷翔平選手が、後ろ向きに投げる「リバーススロー」から始める理由

ドライブラインのグリーン(1,000g 直径85mm)のプライオボールで「リバーススロー」ドリルをする大谷翔平選手。プライオボールは怪我からの復帰時にも大きな効果を発揮する。


WBC日本代表戦 侍ジャパンの戦いぶり 本当に素晴らしかったですね。 
日本中の期待が集まる試合前。通常の野球中継と異なり、試合開始の1時間も前からテレビ中継が開始されていたため、通常ではテレビで放送されることのない、ダルビッシュ有選手や大谷翔平選手の登板前のウォーミングアップの風景もテレビ画面に大きく映し出されていました。

その時「後ろ向きに、カラフルなボールを壁に投げつけるシーン」 をご覧になって、「あれ 何?」と思われた方も多かったのではないでしょうか?

すでにご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、このカラフルなボールは、米シアトルにある世界最高峰の科学的野球トレーニングシステム会社「ドライブラインベースボール」が開発した「プライオボール」。そして、後ろ向きに壁にボールをぶつけるというユニークな投げ方は「リバーススロー」と呼ばれ、これもドライブラインが開発したドリルなのです。

ボールを使うウォーミングアップの必ず最初に、まずこのリバーススローから開始します。続いて「ピボットピック」と呼ばれるドリルを行います。この2つを必ず最初にやるのです。もちろんそれには科学的理由が存在します。 

なぜこのリバーススローから開始するのでしょうか?
今回はこれについて解説します。

豪速球を投げた後、その腕はどうなるの?


ピッチャーが投げる豪速球。豪速球が投げるために「強く腕を触れ」と指導している声をよく耳にすると思います。150キロもの豪速球を繰り出す腕は、まさに超高速で振り下ろされていることになります。

そんな豪速球のボールがピッチャーの手から離れた後、残された腕はどうなるでしょうか。ピッチャーは、この強く振った腕がそのまま肩から抜けて飛び出していかないように、腕の動きに対して1球投げるごとに急ブレーキをかけているのです。その急ブレーキをかける筋肉は、棘下筋(きょくかきん)と呼ばれる肩甲骨と上腕骨につく深層筋、いわゆるインナーマッスルが主に担っています。


棘下筋(きょくかきん)には強い負荷がかかっている

100kg重で引っ張られる腕を、引き戻す筋肉

こうして高速で振った腕が前方に引っ張られている力は、なんと約100kg重にも及びます。つまりブレーキ役を担う棘下筋には、非常に強い負荷がかかっているのです。


棘下筋は、腱板を構成する4つの筋肉のうちの一つ


投球後に肩の後ろ側に痛みやだるさを感じる

ピッチャーがボールを投げた後、肩が抜けてしまうことは通常であればほとんど発生しませんし、この筋肉を意識して投げることはまずありません。
しかし、投球後に肩の後ろ側に痛みやだるさを感じるのは、この棘下筋の炎症事例がほとんどなのです。

棘下筋の炎症は、再発の可能性が高い

この棘下筋の炎症は、休息やストレッチで治った後も再発の可能性が高いと言われています。
休息などで痛みが消える間に棘下筋の筋力は落ちることになりますが、痛みが消え投球を復活させても、筋力が弱まっているためすぐまた疲労し痛んでしまう、という悪循環を繰り返しやすいからです。

さらに肩の後方がこうして硬くなっていくと、肩の他の障害を引き起こす大きな原因にもなってしまいます。 また、インナーマッスルが使えないと、しなやかな動きができなくなるとも言われており、好投手に共通するしなやかな投球動作から離れていってしまう可能性も出てきます。
ではどうしたらいいのでしょうか?

キャッチボールではウォームアップに不足

投球前のキャッチボールは、ウォーミングアップの観点からも重要ですよね。しかしキャッチボールでは棘下筋のウォーミングアップには不足です。最高速度で腕を振った後のブレーキにはなっていないからです。ウォーミングアップ用のキャッチボールから、いきなり腕を全力で振り下ろすわけにもいきません。

プライオボールを使った「リバーススロー」なら、棘下筋をダイレクトにウォームアップ


「リバーススロー」ならば、棘下筋のウォーミングアップをダイレクトに効率良く行えます。
後ろ向きに投げることで、棘下筋を中心とした肩の後方の筋肉のウォームアップが、非常に簡単にできるのです。
腕のブレーキに備えるべく、まず一番最初に行うのです。 

ドライブラインでは、投球練習の前、ボールを使ったウォーミングの一番最初に、この「リバーススロー」を推奨しています。

小学生もボール練習の最初はリバーススロー

壁に向かって、カラフルなボールを、リズミカルに楽しく、わずか10球ほどぶつけるだけです。

年齢や体格によって異なりますが、高校生以上の選手ならば、最も重いピンク(1,500g)、それに続いてグリーン(1,000g)を10球ずつ。肩の後ろを温めていることを意識しながら、挑戦してみてください。

膝をついて座ってやる手法も、大谷選手の様に立ちながらでもOKですが、正しい手法、特に下半身や腕の使い方投げることが重要です。


ボールの重さの選び方や正しいドリルは、ドライブラインのHPをご参照ください。