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線路沿い獣道の果て

写真は佐賀さんのTwitterから拝借しました。後方で手を高速でブラつかせているのが私です。
つい先日ドリルチョコレート「線路沿い獣道」全日程終了しました。
とりあえず稽古から本番期間中、無事に過ごせた事が嬉しい感じです。
公演に参加してくれたキャストの皆さん、スタッフの皆さん、劇場スタッフの皆さん、劇場まで足を運び観劇してくれた皆さん、配信で観てくれた皆さん、ありがとうございました、兎にも角にも感謝です。

5月の公演が中止・延期になって以来、昨年の公演から数えると約10ヶ月ぶりに演劇をしました、演劇をやってきてこんなに演劇をしない期間が長いのは初めてのことでした。
急遽決まった公演であった為、キャストやスタッフには無理を言いまして、それにも関わらず参加してくれて本当に感謝しています。
世間的な状況として、改善しているのかどうなのか未だ不透明な中での公演であったので、手探りな事も多く、それでも一点を見つめ続けなければいけない毎日の中で、日々行ったり来たりする「大丈夫」と「また駄目かも」の狭間にゆらゆらと揺らされ続けて酔いました、コロナ酔いです。

「まだ劇場で演劇を観るには早いよ」

そんな声が聞こえてくるようで、勝手に心が折れそうになる事もしばしば、実際、チケットの売れ方も体感としていつもの半分以下という感じで、僕同様、皆さんも「これは観に行って良いやつなのか?」という判断を日々の中で見定めている感じがしました、が、まあ、これはただ単純に人気がないから売れなかっただけかもしれません。
(今回、劇場の客席を半分の設定にしたのですが、まあ、ぶっちゃけて言えば満席になったのは最後の回ぐらいで、他の回は8割ぐらいの入りでした)

また、自身の「俺はまだ書けるのか」「俺はまだ演じる事ができるのか」という不安もあり、公演が迫るにつれて大きくなる不安で言えば、実際には集客云々よりそっちの方が大きくなったりしたんですけど、なんでしょうね、公演の期間が10ヶ月空いたとは言え、たかだか10ヶ月という感じもあるじゃないですか、10ヶ月空いたぐらいで失うぐらいの自信ならそれはもう、そもそもガラスの持ち物だったんじゃねえのかって感じなんですけど、それを言ったら何もできないんでそれは置いといて言うとですね、今回のコロナ云々を経て、きっと自身の中に何かしらのアレがあったんでしょうね、10ヶ月ぶりにやり始めたら隔世の感がありました。

「なんかもう、何もかも変わっちまって、やり方が分からん」

簡単に言えばそんな感じです。最初の頃はもう、あれ?俺ってばどうやってやってきたんだっけ?って感じでした。
今回、台本を書いていて、途中まで書いて、それを一気にひっくり返して全く別の物語、つまり新しいのを稽古場に持って行ったりしたんですけど、それを見た出演者の皆さんがですね
「前のはなんか雰囲気が違った」
「新しいのはいつもの感じに戻った」
とか言ってくれたんですけど、俺にはもう、びっくりするぐらいその意識がなくてですね、それを聞きながらニコニコしてたんですけど、実はもう

わかんないわかんない、俺には違いが分かんない、怖い怖い、違いが分かってないのが一番怖い、俺自身が俯瞰も出来てない、死んだ

みたいな気分になりまして、アレは怖かったなあ、ほんとに。
なーんか「字が遠いなあ」みたいな感覚はあったんですよね、書いてる時に「字が遠いなあ」って思う時って、説明が難しいんですけど、字が死んでるからパソコンの画面が冷たいんですよね、なんだよ、全部感覚だからイタイ人みたいになっちゃうなこれ、でもそうとしか言えないんだもん。
単純に言えば「入り込めてない」って事なんでしょうけど、台本書く時にある程度の俯瞰した目線っていうのは絶対に必要だと思うんですよ、パソコンの前に座ると同時に客席にもフラットな自分を置くのが必須というか、だって結果的に客席に向けて放つものを書いている訳だから、日記じゃねえんだから、言うなればですよ?

我を忘れて誰よりも早く全力疾走する事のみに集中、しつつも、あの子が俺を見ていることだけは忘れちゃいけないからあわよくばモテたい

みたいな事なんですけど、そういう俯瞰した目線とはまた別の、なんだろう、分かんねえや、俺が書いたのに誰が書いたんだろうこの文字つまんねえな、みたいな感じでぶっちゃけもう駄目だなって思いました。
思いましたんですけど、自分の中にある糸を泣きながらたぐってたぐってたぐり寄せたらいつもの俺が引っかかったみたいな感じになったので、あとはもう、糸が切れないように必死に巻いて釣り上げたって感じです、怖かった。

ここに来るまでにいろんな事があったし、演劇ができる事に感謝もしてたので、初日が終わった瞬間にどういった感動が押し寄せてくるのか楽しみにしてたんですけど、なんて事ない普通でした、いつも通りでした。
いつも通り怖かったし、いつも通り楽しかったし、いつも通り観に来てくれてありがとうだったし、いつも通り有頂天になっていつも通りそれ以上の反省しました。びっくりするぐらい大層なことはなんもなかったです。

ただ、なんか分かんないけど、演劇やってきた史上一番疲れました。
千秋楽のあとは、武田信玄が死んだと分かり安心して数日眠りについた織田信長ぐらい寝ました。
だから多分、俺にも色々あったのかな、と思いました。

12月はMCRがあります。
よろしくお願いします。

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