「月がきれいですね」  プロットとちょいシナリオ


選択したテーマ

「月がきれいですね」



(プロット)

クラスメイトにふられた梨奈、腹いせに彼がすきなモデルと同じ髪型にしようとロングヘアを切る。アイドル好きの隼人、推しの応援にライブで盛り上がっている。結婚記念日の老夫婦、離婚を決意している妻・慶子だが夫・悟志は認めようとしない。娘のはるなが夫の剛とお祝いをするが盛り上がらない。突然、「すき」の言葉が出なくなる。また徐々に「すき」という気持ちも薄れていく。彼への気持ちが何だったのかわからなくなる梨奈、ショートヘアにしたことを後悔しだす。ライブ中になぜこんなアイドルのライブを見に来ているのか迷い出す隼人。結婚記念日に離婚届けを夫に突き付ける慶子、離婚の理由を求められても、どんな気持ちがなくなっていったのかわからなくなる。それぞれが「すき」という気持ちを思い出そうと記憶をたどるが「すき」の言葉が言えない中、違う角度から本当の自分の気持ちを探っていく・・・。

登場人物

梨奈(17) 女子高生

隼人(32) 独身サラリーマン

玲央(5) 園児

璃子(45) セレブ

はるな(30) キャリアウーマン

剛(24) はるなの夫、社内恋愛で結婚

悟志(65) はるなの父

慶子(77) はるなの母

香(35) 理容師


○昼間の月

○公園
   立入禁止の立て札。

   砂場で遊んでいる玲央(5)。

   ポケットからキャンディを取り出す。

   犬をつれて散歩をしている璃子(45)。

   犬を抱きかかえる。

璃子「うーん、かわいいでちゅねえ、ママはココちゃんのことだーいすきでちゅよお」

   犬の様子がおかしいのに気づく璃子。

   すぐに犬を放すと犬は砂場に入っておしっこをする。

   その様子を見ている玲央。

   キャンディを口に入れる。

      

○ライブ会場

   「激辛キャンディ」という地下アイドルのライブ。

   客席には「すき♡」と書かれたうちわが多数。

   熱く盛り上がっているが、ファンは10名位。
   真ん中で一番盛り上がってオタ芸を踊っている隼人(32)、汗だく。
隼人「エル、オー、ブイ、イー、キャンディ、ファイアー!」
   飛び跳ねる隼人。
   交差するペンライト。


○レストラン
   花火が飾られたケーキがテーブル席に運ばれてくる。
   若い夫婦と老夫婦の四人の席。

   剛(24)が漫画を読んでいる。

   はるな(30)が剛の漫画を奪い取る。

はるな「もう、こんな時に読まなくてもいいでしょ」

剛「だって今日発売したから、この漫画俺がすきだって知ってるでしょ」
   ケーキがテーブルの中央に置かれる。
   悟志(65)と慶子(77)はそのケーキを見ても無表情。

   はるなが剛に何か言えという風に目で合図する。

剛「(焦って)おめでとうございまーす」

はるな「ちょっとお父さんもお母さんも少しは喜んでよね」

慶子「喜ぶって、何に?」
はるな「今日は結婚30年目の記念日でしょ」

慶子「あら、そうだっけ」

   悟志をちらっと見る慶子、悟志は目を合わさない。

はるな「ほら、お父さんも何か言ってよ」

悟志「ああ・・・」

慶子「この人がそんな事覚えてるわけないでしょ」

はるな「そんな事ないよね?、ね、お父さん?」

悟志「ああ・・・」

剛「あ、お義母さん、美容院行ったんですか?」

はるな「似合ってるね」

   チラッと悟志を見る

慶子「私が髪の毛切っても気づいかない人よ、結婚記念日なんか覚えてるわけないでしょ」


○美容院
   スタイリングチェアに座っている梨奈(17)。
   真剣なまなざしで鏡に映る自分を見ている。
   香(35)が長く綺麗に整った梨奈の髪をくしでとぐ。
香「本当に切ってもいいの?」
梨奈「はい」
香「綺麗な髪なのに」

   雑誌の切り抜きを香に渡す梨奈。

   ショートカットのモデルの写真。

香「こんな感じね、すきなのこのこ」

梨奈「全然、逆に嫌いかも」

香「何かあったのかな?」

梨奈「ふられたんです」

香「そ、そうなの?」

梨奈「だから切ってください、絶対後悔させてやる」

   ハサミが梨奈の髪の毛を挟む。
   切り落とされる髪の毛。

○公園
   立入禁止の立て札。
   バケツに水をいれ、砂場にかけてくる
   子供。

   犬がおしっこした場所を見つける。
   よく見ると大きく「すき」と書かれてある。
   文字を見て、首をかしげる子供。
   文字に水をかける。 
   「すき」の文字が消えていく。

〇ライブ会場

   中休憩。

   うちわであおいでいる隼人。

隼人「あれ? なんだこれ?」

   うちわをみると白紙になっている。

隼人「やべ、なんも書いてなかったっけ」

   周りを見ると他のファンがうちわに字を書こうとしている。

   隼人もペンで書こうとするが言葉が出てこない。

   周りのファンは推しの名前を書いたりしてるだけ。

隼人「それじゃ気持ちが伝わってない」

  何か書こうとするがためらって書けない。

隼人「あれ? なんだっけ?」


〇レストラン

   はるなと慶子が言い争っている。

はるな「せっかく祝ってあげようと思ってつれてきたのになんなのよその態度は?」

慶子「あら、祝ってくれなんか行ってないわよ」

   離婚届をテーブル出す慶子。

はるな「ちょっと、なによこれ?」

   漫画を読んでいる剛。

はるな「何読み返してるのよ!」

剛「あ、でも今回すごい展開になってて」

はるな「あのね、もう漫画ばっかり買いすぎなんだよ!」

剛「しょうがないだろ、だって俺・・・」

はるな「こんな時に読むな!」

剛「だから、その・・・」

   漫画の表紙を見つめる剛。

剛「俺え、なんでこれ買ったんだっけ?」

   周りを気にせずコーヒーをすする悟志。


〇美容院

   スタイリングチェアに座っている梨奈。

   鏡の横の切り取ったモデルの写真を見ながらカットする香。

香「この写真てけっこう前じゃないかな、どうしたの?」

梨奈「あいつの生徒手帳に挟まってたんです、いっつもこれ見てにやにやしちゃって、キモっ」

香「でも、(少し戸惑い)あれだったんだよね?」

梨奈「別に、(少し戸惑い)ほら、こういうのって昔の人は若気のいたりっていうんですよね、いたりってなんですか?」

香「そうはいわないんじゃないかな」

梨奈「気の迷い、ワンチャンありよりのありだっただけ、今はなしよりのない、ない、ない!」

香「昔の世代の人はこういう時に髪の毛切ったのかもね」

梨奈「こういう時って?」

香「告白したのって、初めて?」

   図星を突かれた顔をする梨奈。

香「ふーん、そっかあ」

梨奈「違います、後悔させたいだけ、だってこのこより(顎で写真を指す)私の方がかわいいし」

香「でも同じ髪型にするって・・・あ、まだ(戸惑い)あれなんだ」

梨奈「(戸惑い)だからもう、その、そんなんじゃ」

   香と目を合わす梨奈。

梨奈「あれ? 私なんで髪の毛切ったんだろ?」


〇ライブ会場

   焦っている隼人。

   白紙のうちわを見ている。

隼人「やばいよ、どうしよ、何を書けばいいんだ、うーん、かわいい!」

   周りのファンのうちわに「かわいい」と書いてある。

隼人「じゃない、かわいいのはわかってるんだよ、だから俺なんでここにいるんだ・・・」

   じっと白紙のうちわを見る隼人。

隼人「あれ? なんでここにいるんだ?」

〇レストラン

   漫画の表紙を見ている剛。

剛「はるな、この漫画全巻家にあるよね?」

はるな「漫画なんかどうでもいいから」

慶子「もう帰ってもいい?」

はるな「え、まってよ、まだ話が終わってないから」

慶子「話って、これが答えよ」

   離婚届をはるなに渡す慶子。

はるな「熟年離婚なんかしないでよね、私達だって結婚したばっかりなんだよ」

慶子「だからじゃない、やっとはるなが結婚したんだし、これからはお母さんの、(戸惑い)ほら、セカンド、キャリア? みたいのを」

はるな「ねえ、離婚の理由はなに?」

慶子「理由? そんな私だってお父さんのこと、(戸惑い)ほら、あれよ」

はるな「なに?」

慶子「え、私達、どうして結婚したのかしら?」


〇美容院

   ショートヘアの自分を鏡で見て驚く梨奈。

梨奈「えー、どうして切ったの?」

香「だって、このこ位って言ったよね?」

   モデルの写真を見る梨奈。

梨奈「これは、あいつの、なんだっけ? ほらこういうのって、だからってこんな短い髪型、ちぇっちゃ変じゃーん!」

(続く)




   



   

   

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?