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カメとウサギがかけっこをした話

アフリカの昔話より 文・こむぎこ      

むかし、むかし。カメがウサギにかけ足で勝ったことがありました。
いえいえ、嘘じゃありません。本当に勝ったんですよ。
 どうして、あのノロマなカメが足の速いウサギに勝てたのか、知っていますか?
それはね、こう言ったワケなんですよ。

 草原にあたたかい太陽がのぼり、ぽっかぽかのいい天気。
カメはのっそりと草かげからはいだして日向ぼっこを始めました。
その時です。
草むらからウサギが飛び出して、カメにつまずきスッテンコロリン。ウサギはカメにもんくを言いました。
「やいやいノロマめ。きみがのろのろしてるから、ぼくがぶつかってしまったじゃないか」
かめはおどろいて言い返します。
「違うよ、ころんだのはきみがあわてんぼうのせいだろう」
「そんなことないよ、きみがもっと早くよけていれば、ぼくはころばなかったよ。だいたいカメって生き物はしゃべり方までノロマだね」
ウサギはぷんぷんと怒り、地面をけります。でもみなさん、このウサギはけっして悪いうさぎじゃないんですよ。ただウサギという生き物はあわてんぼうな所があるんです。
しかしここまで言われて、カメもだまってはいません。
「ウサギくん、ひどいじゃないか。ぼくだけじゃなくてぼくの家族にまでひどい事をいうなんて、これはゆるせないよ。そうだ、ぼくと勝負をしよう。ぼくが勝ったら、僕の家族にあやまってよ」
「へぇ、きみとぼくで勝負するって?なにで勝負するの?」
「かけっこにきまってるだろう!」
カメの言葉をきいて、うさぎはいっしゅん目をまんまるにしたかと思うと飛び上がって大笑いしました。
「本気でいってるの?カメとウサギがかけっこだってさ!いいよ、いいよ。きみが勝ったらきみときみの家族にあやまってあげる」
「その言葉わすれるなよ。三日後にここへ来い、この草むらからスタートして森をぬけて、岩場をとおって、丘のてっぺんまで勝負だ!」
とまあ、こんな事になりました。
カメとウサギのかけっこ勝負の話は草原中にひろがり、ほかの動物たちはカメの心配をしました。しかしカメは平気そうです。
「ぼくにいい考えがあるんだ。みんなもかけっこを見においでよ。ぼくはぜったいに勝つからさ」
カメの答えに動物たちは首をかしげました。
 三日目のお昼、約束通りカメとウサギはかけっこ勝負をするために草むらにやってきました。ほかの動物たちもあつまっています。
動物たちが見守るなか大きな象が鼻を天にむけ、ぱおーーーーんっと鳴きました。
 さぁ、かけっこの始まり!
ぴゅぴゅぴゅーんっとウサギは風のように走り出します。
いっぽうカメは重い甲羅をゆらしながら、うんうんっとこしょっと。
ゆっくり歩きだしました。
「やっぱりね、これでは勝負にならないよ」
「きっと勝つのはウサギだろう」
動物たちは目をつむり、首をふりました。
 うさぎは走って、走って、草むらの途中まで走りました。
「やっぱりぼくって足が速いな。カメくんは今どのあたりだろう?」
ウサギは足を止め、後ろをふりかえります。
すると、どうでしょう。
はるか彼方にいると思っていたカメが、すぐうしろの草むらからひょっこり顔をのぞかせたではありませんか。
「やあウサギくん、やっぱり早いね。でも、すぐに追いつくよ」といいました。ウサギはびっくり!
追いつかれてはたまりません。
ぴゅぴゅぴゅーんっとウサギは風のように走り出します。
 うさぎは走って、走って、森の途中まで走りました。
「やっぱりぼくって足が速いな。カメくんは今どのあたりだろう?」
ウサギは足を止め、後ろをふりかえります。
すると、どうでしょう。
はるか彼方にいると思っていたカメが、すぐうしろの木の影からひょっこり顔をのぞかせたではありませんか。
「やあウサギくん、やっぱり早いね。でも、すぐに追いつくよ」といいました。ウサギはびっくり!
追いつかれてはたまりません。
ぴゅぴゅぴゅーんっとウサギは風のように走り出します。
 うさぎは走って、走って、岩場の途中まで走りました。
「やっぱりぼくって足が速いな。カメくんは今どのあたりだろう?」
ウサギは足を止め、後ろをふりかえります。
すると、どうでしょう。
はるか彼方にいると思っていたカメが、すぐうしろの石の間からひょっこり顔をのぞかせたではありませんか。
「やあウサギくん、やっぱり早いね。でも、すぐに追いつくよ」といいました。ウサギはびっくり!
追いつかれてはたまりません。
ぴゅぴゅぴゅーんっとウサギは風のように走り出します。

 ぴゅーん、ぴゅんぴゅんとウサギは走っていきましたが、だんだんと目が回ってきました。いくら走ってもカメがうしろについてきます。
もっと、もっと、と走っていると足が痛くなってしまいました。
ですので、ゴールの丘が見えるころにはもう、ウサギはすっかりとくたびれておりました。
「もうカメくんは、さすがにいないだろう」
ウサギはうしろをふりかえりました。
ですがその後ろには、やっぱりカメがいるではありませんか。
「やあウサギくん、やっぱり早いね。でも、すぐに追いつくよ」
 きゅーーーーーーーー。
ウサギは驚いたのと疲れたのでもう目の前がまっしろになり、その場に倒れこみました。カメはそのままのろのろと丘をあがり、かけっこ勝負はカメの勝ちになりました。
 どうですか?こんなふうにして、カメはウサギに勝ったんですよ。えぇ!どうしてカメがウサギに追いつけたのか、わからない?
それはですね、カメが自分の家族のためにこの勝負をしたからなんですよ。
じつはウサギの走る通りみちにはカメの家族が隠れていたんです。しかもカメの家族はそっくりなので、あわてんぼうのウサギにはカメとその家族の見分けがつかなかったんですよ。それで、いっそうあわてて気を失ってしまったんです。
 その後、勝負に負けたウサギはカメの家族にちゃんとあやまり、カメもウサギを許しました。それから、二匹で仲良く草むらでひなたぼっこをするようになったんですって。めでたし、めでたし。ノロノロピョン!

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