見出し画像

元千葉ロッテマリーンズ監督伊東勤の光と影

言いたいこと…

良いところとして、うまく選手を使っていたこと。救援陣がしっかりとし、涌井石川の2枚看板が機能していたこと。多くの一位で指名した選手が育っていること。2013のドラフトは石川歩、井上、二木を獲得し井口政権への遺産を残している。

反面、野手のレギュラーに課題があり、先発の層が薄い。常に戦力不足であった。投手偏重の傾向があり、ドラフト2位と3位で指名した野手は吉田裕太と三木。少し物足りないだろうか。伊東時代のロッテのホームランは概ね最下位レベルだった。大砲を獲得できていないのも一因だろう。

さて、本題のチームづくりについて述べる。それはドラフト、トレードやFAでの獲得、既存の選手の起用や抜擢、育成体制と私は考えている。

ドラフトは活躍する見込みある選手を獲得することだし、補強はチームのウィークポイントだろう。選手の育成についても、レギュラーを固定しないやり方かレギュラーをハッキリ決める起用があり、一長一短だろう。ちなみに伊東は前者だ。

ドラフト面

ドラフトで指名した選手のうち、一位の松永昂大、石川歩、中村奨吾、平沢大河、佐々木千隼のいずれも一軍を経験しており、松永昂大はルーキーで58試合に登板し、防御率2.11。石川歩もルーキーから10勝を3年続けるなど指名は大成功。

伊東政権で起用した中村奨吾は井口政権で主力まで成長。佐々木千隼も出遅れながらも中継ぎでオールスターに選ばれている。

伊東最大の教え子、鈴木大地

伊東政権全般を通し、レギュラーであり、核だったのは鈴木大地と角中勝也、井口資仁と途中から定着した田村龍弘である。鈴木大地はもちろん全試合出場。角中や井口、田村もあまり休ませることはなかった。

特に鈴木大地には目をかけてきた。鈴木大地はクルーズと共に二遊間を務め、ショートとしてレギュラーとして活躍すると、2年目からはキャプテンにまで抜擢された。

伊東勤は鈴木大地をみた時に面白い印象を持ち、レギュラーやキャプテンに抜擢してきたそうだ。

伊東勤が退任するとき、鈴木大地が想いを語っている。以下の文章は文春オンライン上でマリーンズ広報の梶原氏が書いたものだ。

『ボクは伊東監督の下でいろいろな経験をさせてもらいました。あの人がいなければ今の自分はいない。監督を胴上げする事が出来なかった事が本当に悔しい。寂しいです』
 鈴木はそう言って声を震わせた。この若者が醸し出す闘志を指揮官は誰よりも買っていた。だから2014年に24歳の若さであえて主将に抜擢をした。
周囲からは「時期尚早」と疑問の声も上がっていたが、「アイツには熱いものがある。このチームの誰よりも負けず嫌いな強い気持ちを持っていて、燃えるものがある。チームを引っ張れる存在。マリーンズに必要なのはそういうもの」と信じ起用し続けてくれた。

選手の起用方針


伊東は選手の調子を見極める眼があり、その時々で最適な選手を起用する。

しかし、その反面レギュラーとして、通年で結果を残す選手は少ない。不調なら他の選手を起用するだけだからだ。粘りを期待するより、一旦見切るところは問題かもしれない。通年を通して活躍できる選手が育たない。活躍しても翌年は成績が下降し、戦力不足。現監督の井口資仁はその点に問題意識がある。

伊東政権は2013から2017までと比較的長く、2年連続でチームをCSに導いた実績がある。CSは全部で3回だ。それはロッテにとって画期的だ。前の西村監督のときは就任時に下克上したきり、3位に届かずだった。

3位が3回の伊東政権のうち、最も輝いたのは2016年だろう。

投手では、石川歩が最優秀防御率に輝き、防御率2.16。14勝を挙げ、涌井も10勝し、防御率3.01と2枚看板を見せた。スタンリッジがその後に続き、希望を見せた若手の二木康太。来年の飛躍を感じさせた。

野手では鈴木大地が2割8分5厘。首位打者の角中は自身2度目の首位打者に輝き、3割3分9厘で最多安打も獲得した。

細谷圭は2割7分5厘、岡田は2割7分と脇を固めた。2割5分には井口資仁や田村龍弘。2割4分に福浦や加藤翔平。彼の最大の強みである用兵力が存分に発揮された。

そして2017年最下位。

投打の失速

投手が奮わない。これまで入団以来3年連続2桁勝利を記録した石川は防御率5.99。さらに涌井秀章も防御率3.99とパッとしない。

打者は鈴木大地に頼りきりだった。2割5分打てるバッターはデスパイネだったが、ソフトバンクに移籍してしまった。2016ではなんとか埋めた今江が抜けたサードの穴も細谷が不調、中村奨吾は育たない。外国人はパラデス、サントスは不発。ダフィーは残念という状況。

外野も角中が2割7分弱ではどうしようも無い。ここに来て露呈したレギュラーの不足を代わりの用兵で埋めることができなかった。その点は今まで見えていたと思う。政権を通じて活躍できたのは鈴木大地と角中勝也、田村龍弘、井口資仁だが、後はデスパイネやクルーズ(両者途中で抜けてしまう)。それを補う選手をその都度用意できたのが伊東の強み。しかし、埋めてくれる選手がいなかった。

ここから言えることは、今まで戦力不足があってもなんとかできたが、戦力不足が限界点を超えてしまい、首が回らなくなった。

では伊東がダメかというとそうではない。鈴木大地や涌井秀章など、伊東に合う選手の活躍が大きいからだ。涌井秀章は西武からロッテに加入した際は成績が低迷していた。しかし、涌井が決め手としたのはやはり西武時代の伊東の存在。不調であったら信頼できる指導者の元で実力を取り戻したいというのが人情というもの。涌井秀章に助け舟を出し、見事に復活させたのが伊東勤。鈴木大地を抜擢したのも伊東勤だ。

当時はまだ期待の新人であった中村奨吾にもチャンスが与えられていたが、彼の下でチャンスを掴んだら結果は違っていただろう。

伊東が辞任した後、偶然かもしれないが涌井や鈴木大地は、今ロッテにいない。

彼の功績は3回にわたる3位。これ自体ロッテでは珍しい。少ない戦力を巧みに使った名監督だ。

少しでも伊東勤について新しい見方を提供できたらと思う。

読んでくださり、ありがとうございました。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?