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洋書が読めるようになる

英語が話題になると、非常に単純な二元論を展開する人がいます。たとえば、

以前は洋書が読めなかったが、■○で読めるようになった。
昔は英語が全く話せなかったが、▲■で話せるようになった。

しかし、実際は完全に二極化しているわけではありません。PROGOSを受験した42万人のデータを引用すると、受験者のスピーキング最多レベルは「A2 High」だそうです。Pre-A1レベルの人もいれば、B2 High以上の人もいます。日本では義務教育で英語を習うので、全く話せない人は皆無に近いです。


私はウクライナ語が全く話せません。こんにちは、今日は寒いですね、すみませんのような日常語すら知りません。1, 2, 3と数えることもできません。でも、英語ならハローとかエクスキューズミーぐらい言えますよ(笑)。

日本の高校進学率は98.7%だそうです。高校を卒業した日本人なら、洋書が読めるはずです。Oxford Reading Tree Stage 4の「The Flying Elephant」は、ATOS Book Levelが0.9で総語数135語ですから、中学生でも読めるでしょう。大学の多読授業でMacmillan ReadersやPearson English Readersを辞書なしで読んだ学生も少なくないでしょう。

英語が得意な人なら、Spencer Johnsonの「Who Moved My Cheese」は楽に読めると思います。だってYLが4.0ですから。ただし、Charles Dickensの「A Tale of Two Cities」を十分理解して読了できる人は少ないでしょう。

さらに、読めるといっても、理解度3割くらいで読む人もいれば、文芸翻訳家のように行間まで理解して読む人もいます。「洋書が読めるようになった」というエピソードを文字通りに受け取って良いのか否か。あくまでその人のさじ加減ですね。

ところで、辞書を引かずに多読することを「劇薬」と称している方がいますが、変な人ですね(苦笑)。毎年数十万人の社会人がTOEIC L&Rを受験していますが、受験者は辞書を引かずに英文を読み、分からない箇所は飛ばしています。毎年数十万人の高校3年生が共通テスト英語を受験しますが、試験監督者の目を盗んで辞書を引いている人は皆無でしょう。英検もしかり。辞書を引かずに分からない箇所を飛ばして英文を読むのは、決して珍しいことではありません。


近年は大学で単位を取るため、辞書を引かずに多読する学生も増えてきました。「多読の効果を高めるには―読書傾向の考察から」という論文では、通年授業で多読した大学1年生199人のTOEICスコアの推移を報告しています。その結果、多読前の4月に受けたTOEICの平均は318点で、多読後の翌年1月に受けたスコアは平均323点でした。

これが劇薬?

冗談でしょう。たった5点しか上がっていません。多読の効果を誇張する人が後を絶ちませんが、5点なんて、単なる誤差・変動の範囲でしょう。199人の調査結果は信頼性が非常に高いです。バラエティ番組に出演する芸人3人のダイエットとは次元が違います。

水泳選手や陸上選手の記録が伸び悩んだときは、練習の質と量を変える必要があると思います。英語力が伸び悩んだときは、英語学習の・・・書かなくても分かりますよね。

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