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業務でヤバいインシデントを起こしてしまったときの心の持ち方

はい、私はヤバいインシデントを起こしたことのある人間です。
今年になって、ヒューマンエラーを発端にして、今までの職業人生で最も危機的な問題を起こしました。

この記事を見てる人の中には、秘匿情報を公開してしまった、重要なデータをふっ飛ばしてしまった、サービスを止めてしまったなど、同じような状況に陥っている人もいるかもしれません。
しかし、適切で誠実な対応をすれば、個人のレベルでは破滅的なことにはなりません。
起こしてしまったことを後悔しても仕方ないので、これからのことを考えましょう。

インシデント対応のフレームワーク・技術については語りません。職場に準備されているやり方があるのなら活用しましょう。(注1)
それよりも、個人レベルでどういう気の持ちようをして、どう動いていけばいいか、という話をします。
ポエミーですし、「こんなの仕事や人生の基本だよ!」と思う人もいるかもしれませんが、上手くやれないと大変なことになります。

また、ここでは軽微なインシデントではなく、それなりに重要度と緊急度の高いものを想定しています。


初動

適切な相手に速やかに報告する

今日一番言いたかったことなので、これだけでも覚えて帰ってください。

重要度と緊急度の高いインシデントを起こしたのであれば、1秒を争う危機的な状況に突入しています。
自分の職務に対して直接の責任を追っている人物に速やかに報告してください。大抵の場合、その相手は上司やプロジェクトのリーダーです。
長文を書き連ねて2分も3分も費やしている余裕はありません。「緊急です!」の一言だけでもいいので、まず速やかに相手に一報を入れてください。
チャットやメールで相手の応答がなかったら、通話でも電話でも掛けてなんとしても死ぬ気で相手を捕まえてください。連絡先が分からなければ知ってそうな人から聞き出してください。
初動が遅れると無駄に問題が大きくなっていきますし、初動が速いほど後々の印象悪化を予防できます。

何か言い訳を用意してから報告したくなるかもしれません。自分一人でなんとか解決して、問題を誰にも知られないままにしておきたくなるかもしれません。
しかし、そういった心は全て捨ててください。とにかく最速で報告する機械になるのです。

事実を正確に伝える

自分の印象を悪くしないように、あるいはインシデントの原因を明らかにしようとして、初手の報告内容をあれこれ凝ってみたくなるかもしれません。
ですが、今はまず、何が起きているのか相手に正確に伝えなければなりません。

  • 事実を伝える。自分に不利になる内容があっても誤魔化さない

  • 分析や推測は極力除外する。特に初手では事実だけ伝えたほうがいい

  • 時系列を明確にする

報告を勝手に拡散しない

「適切な相手に速やかに報告する」と言っても、単に大声で危機を訴えればいいわけでもありません。
社内に限って人を巻き込む分にはいいのですが、最初の一報を入れるには向いていない人々がいます。
その筆頭は顧客です。問題を整理しないまま報告すると恐慌に陥る可能性があります。
顧客がいるチャットルームや顧客をCCに入れたメールで、なんでも喋りすぎてはいけません。

もちろん、顧客が十分に成熟しており、インシデントを解決するために早く情報共有したほうがいいことはあります。
しかし、職位や責務によりますが、基本的にはまず上司やリーダーに報告するのが適切なエスカレーションだと思います。
その先の顧客への報告を勝手に行うと、収拾がつかなくなるおそれがあります。

注意したいのは、これは顧客への情報隠蔽とは異なるということです。
混乱のない情報伝達のためには秩序が必要だという話で、顧客への報告は自社の責任者などから別途行うことになります。

問題の調査・対応

これは自分以外の人が担当してくれるかもしれません。
しかし、インシデントを起こした自分自身に協力が要請されたのだとしたら、ここが踏ん張りどころです。

全力を尽くす

落ち込みそうになるとは思いますが、今はリカバリに集中しましょう。
上司やリーダーからの依頼事項は徹底的にこなしましょう。
心当たりのあるものは全て調査対象として、適切な順番で調査していきましょう。
関係者に向けた経緯の説明が必要であれば、資料を作成してレビューしてもらいましょう。
自分で確認できない・実行できないことは人に依頼して解決しましょう。
その他、必要と判断したことは人と協調しながら実行していきましょう。

一人で暴走しない

全力を尽くすと言いつつ、なんでも自分でやりすぎてはいけません。

例えば、情報収集に際して平時を超える権限を行使したくなるかもしれません。普段だったら自分のアクセスが想定されていないメトリクスやログを無断で覗き見したくなるかもしれません。ですが、それはそれでまた別の事故を生みかねません。
自分が取る行動は人に相談・報告しましょう。特に普段やらないようなことをする場合は、人に確認を取りましょう。

分からないことを揉み消さない

例えば、情報漏洩に繋がりかねないインシデントの対応では、実際に情報漏洩が起きていないかを調べることになります。
ですが、(情報の管理の仕方によりますが、)情報漏洩が起きていないと結論づけることは難しいです。事実を積み重ねても、追跡不可能な方法で誰かが情報を覗き見た可能性をなかなか否定できません。
こういうときに、希望的観測に基づいて「情報漏洩はなかった」と報告したくなるかもしれないですが、一旦堪えましょう。
まずは「情報漏洩の痕跡は見つからなかったが、可能性は否定できない」と報告するのが正しいはずです。
これは事実と推測を区別して話すという、基本的なコミュニケーションの話でもあります。

メンタルケア

お疲れさまでした。
大抵の場合、悪意のないインシデントの根本原因は人間ではなく、人間のミスを見逃すシステムです。人間が仕事をしている以上、人間が起こしうるミスはいつか起こります。多分マーフィーもそう言ってます。(注2)
なので過度に気にしすぎる必要はないのですが、それでも自責の念から精神が疲弊しきっているかもしれません。そういうときは回復に集中しましょう。

  • 身近な人につらさを打ち明ける

  • 美味しいものを食べる

  • 入浴や音楽などでリラックスする

  • 良く眠る

  • etc……

最も大事なのは一番目だと思っています。
自己否定の気持ちが強くなると、人は孤独がちになってしまいます。他人と交流を持ちましょう。人につらさを打ち明けると、相手も問題を起こして傷ついたことがあったり、苦しみながらなんとか乗り越えたり、類似の経験をしてきたことが分かるかもしれません。そういうことがわかると、多少心が落ち着いてきます。

逆に、浪費や酒など放埒な方向に走ることはおすすめしません。心の傷に対して物質の徒な消費は一時的にしか効きません。

頑張って生きていきましょう。


注1: 一つの参考例 SREチームのインシデント対応について|CAMPFIRE 開発チーム|note
注2: 「失敗する余地があるなら、失敗する」 - マーフィーの法則 - Wikipedia


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