ネズミの記憶

 前回、ネズミに関する記事を書いたことで思いだしたことがあります。
 僕は子どもの頃、ボロい長屋に住んでいました。隙間の多い建物で、ネズミに小麦粉の袋を破られるとか、電気ケーブルをかじられるという被害に度々あっていました。
 母は対策としてネズミホイホイを買ってきて部屋に設置しました。そして、見事にネズミが捕まりました。ネズミはベタつく床に身動きとれず、目を細めて息をするのが精一杯のようでした。
 元々、動物全般が好きな母とその母に育てられた僕たち兄弟はそのネズミを見てかわいそうな気持ちになりました。毎週かかさず「わくわく動物ランド」を見ていたような親子だったのです。
 かわいそうな気持ちになったところでもう後戻りできませんでした。ばい菌の多いネズミを触るわけにもいかないし、ベッタリくっついたネズミを剥がせるようにも見えない。結局、母はそのまま捨てるという決断をしました。そもそも、ネズミホイホイはネズミを駆除する目的で設置したはずでした。
 その後、母は二度とネズミホイホイを使用することはありませんでした。・・・続く
(小川)

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