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神経内科専門医試験対策(特に二次試験)

毎年10-11月は神経内科専門医試験の日程であり、私が受験した第48回は、
一次試験(筆記試験;必修100題、一般+臨床100題)
二次試験(対面での面接;神経診察と症例レポートに関する口頭試問)
でした。
一次試験についてはこの時期(9月末)ではほとんどの方は対策が終盤に差し掛かっていると思うので、精神安定剤的な話をしようと思います。

★一次試験について
一次試験について私から言えることは、
「直近の過去問3年分をくまなくやればまず合格間違いなし!」です。
過去問集である青い本を最初に解いたときは絶望だったと思いますが、例年問題は簡単になっており、私が受験した第48回も過去の中でも難しくなかったように感じました。青い本からはほとんど出題されませんので、しっかり過去問を手に入れて勉強した皆さんはもう大丈夫です。

(必修問題)
例年必修問題は8割程度の正答率を見込んで作られているとホームページでは公開されていますが、蓋を開けてみると平均点は70%程度です。なので7割切っても合格しますし、3問中1問程度は間違えても合格できる!と思い込んで試験に臨んでください!

その中でも毎年出題されるような項目はケアレスミスがないように対策してください(解剖生理や薬の副作用などは試験中度忘れしがちです)。

(一般・臨床問題)
数回前から100問に統合されています。50問ずつ出題されると思いますが、合格基準が別々なのかはわかりません。一般問題は正答率の平均が55-60%程度ですので、半分当たっていればOKくらいの気持ちでいいと思います

試験一般に言えることですが、ある年に疾患の疫学や症候が出題されれば、次の年は検査所見、その次の年は治療や予後、というようにインスパイアされた問題が出ますので、3年分で一回でも出た疾患については、細かい知識まで要求されます(しかし、実際のところ自分が難しいと思った問題は周りも難しいはずです)。繰り返しますが、半分取れればOKですので、気負いせず受験してください!

臨床問題は毎年出題される疾患がある程度あります(脊椎疾患、パーキンソン病、多発性硬化症、CJDなど)。そこをしっかり押さえて、点数をかき集めてください。70%程度の正答率なので、3分の2くらい当たればよいでしょうか。

私が受験した年は3連問で全く見当もつかない疾患が出題されましたが、きっと周りもできないだろう、と思ってやり過ごしました。おそらくすべて誤答だったと思いますが、過去問にない疾患についてはできなくても合格しますので、(おそらく皆さんがやっている)過去問から勉強したまとめノートなどを信じて下さい。

★二次試験について(ここからが本題です)
晴れて一次試験を突破した後に待っているのは二次試験です。
ほとんど落ちない、と下馬評では言われていましたが、やはりすごく緊張しますので、私が受けた当日のやりとりを細かく記載しましたので、参考になればうれしいです。( )が試験管の発言です。「 」や→の後は私の発言です。
後に出てきますが、面接官も間違えますので、清書に書いてある診察手技が正しいので、おかしいと思ったことがあってもテンパらずに次へ進むのが得策です。
おそらくできたものを〇、面接官の反応が微妙だったものを△、できなかったものを×としてます。

1.診察手技

時間になっても前の人が試験をしているので、出てきたらノックして入る
「よろしくお願いいたします。」
後方の机にカバンを置いて、診察道具を出してからパーティションの奥にいる模擬患者(おそらく医学生)と面接官2人いる。

① 12脳神経の診察をしてください。
Ⅰ:においで異常はありませんでしたか?〇
Ⅱ:視野でかけるところはありませんか? 対座法で左右4か所行った〇
ⅢⅣⅥ:6方向で眼球運動の観察、2本に見えないかしっかり尋ねる〇
Ⅴ:前頭部、頬部、口角で左右差を確認する〇
Ⅶ:前頭筋、眼輪筋、口輪筋の筋収縮の確認〇
Ⅷ:左右で聞こえに違いないか確認〇
ⅨⅩⅫ:口を開けてあーっと言ってもらう、舌運動の確認〇
Ⅺ:僧帽筋、胸鎖乳突筋のMMT〇

(もう一回胸鎖乳突筋の筋力を評価してください)
→ 行う、左右逆にやっているように見えたようだ、最初からちゃんとやっていたと思うが。2回目は納得いったよう。〇
(右に向けるときは左右どちらの胸鎖乳突筋が収縮してますか?)
→左です〇
(三叉神経には運動枝がありますがどのように評価しますか?)
→・・・・×
(咬筋がありますね)
→あーはい。あーいーってやりますね。
(ではやってみてください)
→面接官Bと一緒に行う。

②上肢に軽度の麻痺があるときにどういう診察をしますか?
上肢Barre徴候と手を背屈させて観察(くぼみ手徴候と第5指徴候)した
(どこに注目してみますか?)
→回内して下垂します
(他には?)
→他ですか?△
(くぼみ手徴候と第5指徴候ですよね)
→それは手を背屈させてみたのですが、、
それでは観察できませんよね
→そうですか。。。<<納得いっていないまま次へ>>

→家で調べたら観察できることが判明、神経学会にメールして問い合わせ、間違った教育につながるので、面接官へ必ず伝えてもらうようにした。
(後日)→ 診察手技は間違っていなかったことが判明(できませんと言った面接官が間違いであったことが判明した)。

③反射を取ってください
肩、三角筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋、上腕三頭筋、Wartenberg、Hoffman、Tremnor、膝蓋腱、アキレス腱
まあこれが全然反射の出ない若者で、、、〇
(膝蓋腱反射で増強法をやってください)
→増強法を行う〇
(Wartenberg、Hoffman、Tremnorをやって、名称を言ってください)
→Wartenberg、Hoffman、Tremnor〇
(Wartenbergはどうなれば異常ですか?)
→指が屈曲すれば異常です。〇
(全部の指を見てますか?診察の時にかかえていませんか?)
→軽く握っているので大丈夫です。
(どうなれば異常ですか?)
→左右差を持てば異常です〇

④パーキンソン病患者の筋強剛について見てください
→左右で肘関節、手関節を行った。
下肢もやってほしかったよう△
(軽微な人の時はどうしますか?)
→100-7を順番に行った〇
(そうですね、計算とか指折りですよね)

⑤小脳失調について診察してください。
指鼻試験、指鼻指試験、手の回内回外試験、脛たたき試験、膝かかと試験、足の測定試験(左右の膝を立てて検者が位置を変えて同じ位置で膝を立てられるか)
(ありがとうございます。〇 体幹はどうしますか?)
→倒れそうないことを確認して腕を組んでもらって座って動揺がないか確認
(指探し試験はできますか?)
→1回行う△
(1回だけですか?笑、一緒にやりましょう。右の母指を探すときはどちらの位置覚異常ですか?)
→左です×
(右ですね。)
→すいません。

⑥軽度ふらついている患者さんについてはどのように診察しますか?(口頭で。)
通常立位、Romberg徴候、通常歩行、綱渡り・・・(Tandem gaitが出てこなかったが、そこまで減点という雰囲気ではなかった)〇
小脳失調ではどんな歩行?
→開脚で酩酊様になります。〇

このあと、持ってきた診察道具について1分ほど雑談があり、終了となりました。私が持参したのは打腱器、音叉、プラスチックスプーン、つまようじ、ポケットティッシュ、眼底鏡です。使ったのは打腱器だけです。

2.面接(症例レポートに関する口頭試問)
私が受験した時は当初90例の症例登録+17例の症例レポートででしたが、コロナ禍による措置で、45例の症例登録+10例の症例レポートになりました。
症例レポートは下記の症例を提出しました。
①脳梗塞(BAD)
②抗LG11抗体陽性自己免疫性脳炎
③多発性硬化症
④ギランバレー症候群
⑤重症筋無力症クリーゼ
⑥低K血症性ミオパチー
⑦パーキンソン病
⑧正常圧水頭症
⑨片頭痛
⑩Werniche脳症

面接官AとBでそれぞれ10分ずつくらいで上記疾患レポートについて聞かれました。診断の流れや治療などをレポートに記載すると思いますが、それ以上細かい知識はあまり聞かれないと思います。一般的な疫学、診察所見、診断基準、治療、予後などはレポートに書いてなくても聞かれますので、しっかり準備してください。予想以上に緊張すると思います。

まず初めに簡単な自己紹介、プロフィールに基づいて質問をされます。

面接官A:よろしくお願いいたします。
(どんな領域が好きですか?)
→脳血管障害ですが、神経救急全体ですね。
(わかりました、神経疾患は救急だけではないですからね)
→<そんな風に言われなくてもわかっておるわい!>と内心思う

症例②抗LGI1抗体陽性自己免疫性脳炎について
(どんな経過でしたか?)
→簡潔に述べる、反省症例です。〇
(FBDSってそんなに派手じゃないから診断難しいですよね、でも治療がうまくいってよかったです。)

症例⑤重症筋無力症クリーゼについて
(電気生理学的にどんな特徴?)
→反復誘発筋電図で3Hz 10発で4-5発目に10%程度のwaningを認めます〇
(他にwaningをきたす疾患は?)
→ALS、筋ジストロフィーですかね。〇
(他には?)
→神経筋接合部疾患というとLEMSですかね。〇
(そうです、LEMSでしたね。)

症例⑦パーキンソン病について
(早期と進行期でどのように治療してますか?)
→早期はL-dopaを50mg×3で開始して、嘔気などの副作用がなければ300mg/日まで増量し、ドパミン節減効果も狙ってMAO-B阻害薬を追加してます。進行期ではまずは日誌を確認して、wearing offの部分ではL-dopaの増量を、ジスキネジアの部分ではCOMT阻害薬を追加するようにしてます。〇
(そうですよね、ジスキネジアが出たらCOMT阻害薬を足すとさらにジスキネジアが悪化するのでは?)
→1回のL-dopaの量は減らします〇
(そうですね、私は以上です。)

面接官B:よろしくお願いいたします。
症例①脳梗塞について
(BADの特徴について述べてください)
単一穿通枝梗塞であるラクナ梗塞ではないが、親血管の50%狭窄は認めず、15mm以上の梗塞巣で、一般的には進行しやすいタイプです。〇
(MRIの診断では?)
→15mmより大きいということではなく?あ、3スライスってことですね〇
(そうです、この方は抗血小板薬を2種類使ってますが、どれくらい使いましたか?)
→3週間です。
(その後は?)
→アスピリン単剤です。

症例③多発性硬化症について
(テクフィデラを選んだ理由)
→禁忌が少なく、PMLリスクも報告はないわけではないですが、少ない点であり、内服で簡便であることです。ジレニアについては発症予防効果は高いものの、PMLリスクもあり、また入院で開始しなければならないことから、働いている方には導入の障壁になることが考えられます。MSはescalation治療が基本的ですが、インターフェロンですと効果も少なく、注射製剤ということから選んでません。〇
(他のDMDは何がありますか?)
メーゼントとオファツムマブです。〇
(メーゼントはどんな薬ですか?)
S1P2に作用するジレニアと違って比較的選択的に作用する薬です。
(この症例では使えますか?)
→SPMSが適応なので、該当しません〇
(オファツムマブ(ケシンプタ)はどんな薬ですか?)
皮下注射製剤です。
(どこに作用しますか?)
→CD19陽性細胞、T細胞ですかね?
(B細胞系ですね)×
(MSの予後不良因子とは?)×
→高齢、男性ですね。
(この方で再発を繰り返した場合はどうしますか?)
JCV indexも鑑みながらタイサブリに変えます。〇
(そうですね)

症例⑨片頭痛について
(片頭痛の特徴は?)〇
→一般的には4-72時間以上続く頭痛で嘔気を伴い、片側性・拍動性・中等度~重度・日常生活に支障が出る、の特徴から2つがあてはまり、音過敏や光過敏を伴うことのある頭痛です。
(発作予防薬にはどんな薬がありますか?)〇
→内服ですとバルプロ酸、ARB、塩酸ロメリジン、β遮断薬、抗うつ薬です。
(バルプロ酸を選んだ理由は?)〇
→挙児希望がなく、mood stabilizerとしての機能もあり、選択しました。
(他の薬は?)〇
→注射薬ではCGRP関連抗体製剤です。
(使ってみたことありますか?)
→はい、あります。
(どんな印象ですか?)
→劇的に世界が変わる、と言われます。片頭痛の日数、重症度、急性期治療薬の服用回数全てにおいて改善します。
(本邦では何種類ありますか?)〇
→3種類です。
(すべて同じ薬ですか?)〇
→CGRPそのものの抗体薬とCGRP受容体抗体の2種類に分かれます。

長文を最後までご覧いただきありがとうございました。
受験される方の検討をお祈りいたします。


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