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第118回医師国家試験神経ブロック解説【A問題】

まずは受験生のみなさん、お疲れ様でした。この先これ以上の長い休みは定年までないでしょうから、思う存分遊んでください。私自身が国家試験を受けたのは8年前ですが、毎年この時期は懐かしく感じます。
少し余裕があれば神経ブロックの解説を作成しましたので、来年度以降の受験生、内科専門医試験の受験生にお役立ていただければ幸いです。

総評(神経ブロック)
内科専門医・神経内科専門医試験の勉強を直近までしていた身としては、国試は基本的な知識を忠実に覚えていれば溶けない問題は少ないと感じる。しかし、医学生のレベルは非常に高く、既出の問題は正解してくるのでケアレスミスや覚え間違いをできるだけなくすことが大事である。神経ブロックでは特に難しい問題はないため、非常にとりやすいと感じる。一般的にはメジャーの勉強よりもマイナーの勉強がおろそかになりがちなため、マイナーでしっかりとれるように時間を割くべきであろう。捨てていい科目はほとんどないと言える。
国家試験の問題抜粋と解答、解説を掲載する。来年度以降の受験生はぜひ問題文までしっかり覚え、疾患のイメージをつけてほしい。国家試験は過去問よりもはるかに難しい問題は解ける必要がない(≒1回でも出た問題は多くの受験生が正解する)ため、既出の疾患については細かい部分まで取りこぼしの内容勉強してください。

A-30
67歳の男性、酩酊状態で来院。若いころから晩酌が日課だった。酔っているときに手指振戦が止まる。貧血、黄疸あり。断酒と検査目的で入院。入院後投与すべき薬剤は?

アルコール依存症に対して離脱予防にベンゾジアゼピン系を用います。ジアゼパム15-30mg/日、ロラゼパム1.5-3mg/日を1週間程度用いて、漸減します。
アルコールが原因による振戦せん妄の際にもベンゾジアゼピン系を用いて治療します(一般的なせん妄対応にはベンゾジアゼピン系を用いるとせん妄が悪化します)。

A-42
56歳の女性、全身けいれんで救急搬送。1か月前に頭痛があった。JCS 10、瞳孔径3mm/3mm、対光反射+/+、全身けいれん後は右半身不全麻痺を認める。診断は?

画像一発問題です。Dural-tale signを認めます。
おそらく右半身のけいれん→全身けいれんに移行し、Todd麻痺を来しているのだと考えます。

A-47
68歳の男性、就寝中の行動を心配した妻に連れられて来院。週に数回就寝後に1時間ほど大声を上げ、起き上がって何かと戦っている行動がある。妻に起こされると夢の自覚はある。体が硬く動作が遅くなったといい、物忘れを自覚している。四肢の筋強剛を認める。MMSE 21点。この患者の睡眠障害はどれか。

レビー小体病(レビー小体型認知症ないしパーキンソン病)におけるレム睡眠行動障害といえるでしょう。時期がはっきりしないため、疾患の区別がつきませんが、「四肢の」筋強剛と書いてあると左右差がはっきりしないため、レビー小体型認知症なのでしょうか。進行が早いため、リハビリをしながら生活環境を整えてあげるのも大事です。幻視を認めることや認知機能に波があり、抗精神病薬にもよく反応しやすいのが特徴です。
中核症状と指標的バイオマーカー(DaTSCAN、心筋MIBG、PSG)は次回出るかもしれません。

A-55
73歳男性。発熱・頭痛があり、3kg/3か月体重減少した。5日前から頭痛が増悪、異常行動も出ている。項部硬直、右眼の外転障害、右顔面の運動麻痺を認める。髄液では水様透明、初圧200mmH2O、細胞数250(すべて単核球)、糖25mg/dL、蛋白180 mg/dL、ADA 15IU/L(正常8以下)、頭部CTで脳室拡大を認めない。診断は?

診断は結核性髄膜炎であることに異論はないと思いますが、結核性髄膜炎には抗菌薬投与時かその前にステロイドを入れることで予後が改善しやすいデータがあります(デキサメタゾン10mg 1日4回4日間)。また脳神経麻痺(外転死刑は長いため障害されやすい)も合併します。髄膜炎で脳神経麻痺をきたすか?は一般問題でも聞かれるかもしれません。頭部CTの所見は水頭症を来していないことを示してますが、本疾患では脳底部を中心に増殖性くも膜炎をきたして交通性水頭症を来します。水頭症がある場合はシャント術も検討されます。

A-66
55歳男性。嚥下困難を主訴に来院。2年前に右上肢の筋力低下、1年前にあしがつっぱり、つまづきやすくなった。3か月前から食事がむせるようになった。眼球運動障害なし、構音障害あり、舌萎縮・線維束性収縮あり、四肢遠位筋の筋力低下と筋萎縮あり、上下肢腱反射亢進、Babinski反射は両側陽性、感覚正常。この患者に起こる可能性があるのは?

診断は運動ニューロン疾患(おそらくALS)です。球脊髄性筋萎縮症では神経伝導検査で感覚神経複合電位が落ちることや振戦をきたすこともあります。球麻痺を来しているため、呼吸筋麻痺が出現します。ALSを診断するための症状、身体所見はすべてそろっています。足がつりやすかったりする症状は問診でないと聞けません。線維束性収縮によるぴくつきを打腱器で筋をたたきながら誘発させます。脳神経内科医はあまり4大陰性症状という覚え方はしていませんが、国試的には重要かもしれません(臨床的にはいずれ閉じ込め症候群に至ります)。


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