新型コロナ後遺症_2023夏2 _メトホルミン服用のしかた
こんにちは。今日は新型コロナ後遺症に有効な薬をひとつご紹介します。ワクチン後遺症の治療にも活用できそうです。
新型コロナ後遺症を、ここではロングCOVID と呼びます。Lancet Infect Dis誌 に6月に掲載された COVID-OUT の結果報告です。
Outpatient treatment of COVID-19 and incidence of post-COVID-19 condition over 10 months (COVID-OUT): a multicentre, randomised, quadruple-blind, parallel-group, phase 3 trial. link
方法:
大規模な盲検多施設 RCTの第3相試験です。
高リスク成人をメトホルミン (MET)、イベルメクチン (IVM)、フルボキサミン (FLV)、またはプラセボのいずれかに無作為に割り付けた。
対象に偏りがあります。肥満の成人です。
期間は、2022年11月27日に終了の300日間追跡観察です。
治験薬は錠剤の形の経口薬でした。
メトホルミンの用量は 6 日間かけて漸増されました。1 日目は 500 mg、 2日目から5日目までは 500 mg を 1 日 2 回、6日目から14日目まで朝に 500 mg、夕方に 1000 mg でした。Total 500 + 1000x4 + 1500x9 = 18,000 mg
合計36錠
イベルメクチンの用量は 390 ~ 470 μg /kg/日、3日間(中央値430μg/kg/日)でした。
フルボキサミンの用量は、1日目に50 mg、その後14日目まで1日2回50 mgでした。
ロングCOVID は医療専門家による臨床判断に依存しました。
結果:
この研究者主導の分散型多施設無作為化四重盲検プラセボ対照第 3 相試験では、新型コロナウイルス感染症の急性期感染症におけるメトホルミンによる治療により、300 日目までにロングCOVID のリスクが減少しました。 プラセボと比較して41.3%、推定累積発生率はメトホルミン群で6.3%、プラセボ群で10.6%でした。
イベルメクチン または フルボキサミンではメリットがなかった。ただし、対象が肥満の成人に限定されている影響があります。
投与効果のポイントは
1)症状発症から4日以内にメトホルミンを投与すること
2) ワクチン接種者ではメトホルミンの絶対リスクの減少が1%程度、ワクチン未接種者はメトホルミンの絶対リスクの減少が7.5%でした。メトホルミン投与でワクチン未接種者のロングCOVID の発生頻度がワクチン接種者と同じまで低下した。
変異株の種類後とのロングCOVIDの発症頻度
ロングCOVID の平均発生率は、アルファ優勢期間では7.9%(参加者63名中5名)、デルタ優勢期間では8.3%(800名中66名)、そしてオミクロン優勢時代8.4%(263名中22名)でした。 ロングCOVID 診断のタイミングは試験期間を通じて実質的に変化せず、無作為化からロングCOVID 診断までの期間の中央値は138日(IQR 74~142)、アルファ優勢期間では138日(89~180日)であった。
ロングCOVIDによる仕事への影響
ロングCOVID の診断を受けたと報告した参加者は、新型コロナウイルス感染症感染後に少なくとも 1 つの進行中の症状によって仕事や余暇が中断されたと報告する可能性が高かった(図 4A)。
ロングCOVID の症状別頻度
上記グラフの字が見えづらいので、多い症状から5つを抜き出しました
倦怠感 Tiredness
集中力の低下 Difficulty focusing
睡眠困難 Difficulty sleeping
息切れ shortness of breath
頭痛 Headache
全体として、女性参加者632名中69名(10.9%)、男性参加者494名中24名(4.9%)が300日目までにロングCOVID と診断された。 シリーズでは、619人中41人(6.6%)がロングCOVIDの診断を報告したが、ワクチン接種を受けなかった人は507人中52人(10.3%)であった。 登録前に追加ワクチン接種を受けた57人の参加者のうち、ロングCOVIDの診断を報告した参加者は1人(1.8%)のみでした。
過体重または肥満の対象者に限った臨床研究ですが、ロングCOVID の発症頻度を下げるためのメトホルミン併用療法はワクチン接種と同等の効果でした。
よくロングCOVID (コロナ後遺症) になることがあるからワクチン接種を勧めるという人がいますが、ワクチンによって完璧にコロナウイルスに対応する免疫ができない状況では、メトホルミンでコロナ後遺症を防ぐ力が同等です。そしてメトホルミンには特に副作用がない。
これはきちんとしたRCTの臨床研究で、査読ありLancet Infect Dis に掲載された仕事です。
コロナ陽性でメトホルミン服用する場合
感染初期4日以内に服用開始します。
イベルメクチンとの併用は両方の利点が相殺されるので避けます。
メトホルミン服用を選びたい場合はかかりつけ医にご相談ください。
価格は500mg 1錠 約10円 です。
メトホルミンの飲み方と価格: 1 日目は 500 mg、 2日目から5日目までは 500 mg を 1 日 2 回、6日目から14日目まで朝に 500 mg、夕方に 1000 mg なので、Total 500 + 1000x4 + 1500x9 = 18,000 mg、合計36錠 = 約366円 です。(メトグルコ500mgで計算しました。メトホルミンのページ)
レセプト名の例:糖尿病疑いなど各個人による。
参考文献:Outpatient treatment of COVID-19 and incidence of post-COVID-19 condition over 10 months (COVID-OUT): a multicentre, randomised, quadruple-blind, parallel-group, phase 3 trial. pdf のリンク
pdfは無料でダウンロードできます。プリントしてかかりつけ医に持参のうえご相談ください。
*コロナ陽性でも普通にスムーズに診察してくれるかかりつけ医を想定しました。
メトホルミンとは?
メトホルミンは、その強力な血糖降下効果、十分に確立された安全性プロファイル、および比較的低コストのため、2 型糖尿病治療の第一選択療法です。メトホルミンはフレンチ・ライラックとも呼ばれるGalega officinalis には薬効があるが生薬として使用するには毒性もありるので、その成分から分離開発されました。
メトホルミンはグルコース代謝に対して多面的な効果を有することが示されています。2型糖尿病患者における主要なグルコース低下効果は主に肝臓の糖新生の阻害によって媒介されるという一般的なコンセンサスがあります。
メトホルミンは、酸化還元依存的に肝臓の糖新生をインビトロとインビボの両方で阻害します。グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼのメトホルミン阻害によるサイトゾルの酸化還元状態の増加が観察されました。末梢および腸管グルコース代謝 にも影響します。
メトホルミンにはグルコース代謝以外の作用があります。
オートファジーを増加させ、ミトコンドリア機能を改善することにより、加齢に伴う炎症を緩和する作用がある
調節不全のタンパク質合成を調節することにより、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) を含む神経変性疾患の治療法として期待される
などです
なお実験的に言われているAMPKの経路に対する作用は、臨床現場ではそこまでメトホルミン濃度があがらないと考えられ、証明されるまでペンディングです。メトホルミンの多面発現効果を実証する多数の報告を考慮すると、メトホルミンにはいくつかの分子標的がある可能性があります。 しかし、これは依然として活発な研究が行われている領域です。
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