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オミクロンになってから、感染の既往ありの人とワクチンブースター接種者で、感染しやすいのはどっちだ?

こんにちは。新型コロナウイルスの感染防御に、過去の感染歴が役に立つのか?というテーマです

対象と期間と方法

オミクロンBA.2 が流行していた2022年3月27日から6月4日の間、カナダのケベック州でコロナ検査を受けた18才以上の医療従事者のうちPCR検査陽性になった人を対象にしました。

検査陰性ケースコントロール試験を実施しました。

ロジスティック回帰モデルにより,
一次感染の既往がありmRNAワクチンを3回接種していない医療従事者と,
一次感染のないワクチン未接種の医療従事者の,

BA.2感染または再感染(一次感染後30日以上経過した2回目の陽性)の尤度を比較検討しました。

結果

オミクロンBA.2感染に対する防御は、オミクロンBA.1に感染したことのあるワクチン未接種で72% (赤い矢印)でした。これに対して、感染歴のないワクチン3回接種者は46% (ブルー矢印) でした。
つまり、オミクロンBA.2の感染防御はワクチン3回接種するよりも、オミクロンBA.1に感染の既往があるほうが、はるかに高い防御率だったわけです

上のグラフの結論
オミクロンBA.1に感染した人に、ワクチンの追加接種を勧めて得られる利益はとても少なかった
感染歴のないワクチン完全接種者 (この時は3回) は、ワクチン未接種でオミクロンBA.1に感染した人よりもはるかにオミクロンBA.2に感染しやすい

次にオミクロンBA.2に感染して発症するリスクを比較しました。
オミクロンBA.2発症に対する防御は、オミクロンBA.1に感染したことのあるワクチン未接種で86% (赤い矢印)でした。これに対して、感染歴のないワクチン3回接種者は70% (ブルー矢印) でした。
つまり、オミクロンBA.2の感染防御はワクチン3回接種するよりも、オミクロンBA.1に感染の既往があるほうが、高い防御率だったわけです

上のグラフの結論
オミクロンBA.1に感染した人に、ワクチンの追加接種を勧めて得られる発症予防の利益はとても少なかった
感染歴のないワクチン完全接種者 (この時は3回) は、ワクチン未接種でオミクロンBA.1に感染した人よりもはるかにオミクロンBA.2感染して発症しやすい

もう一度繰り返す
ワクチン未接種の人が、オミクロンBA.1に感染した場合には、ワクチン追加接種者よりも、オミクロンBA.2の感染と発症から守られていた

第7波はオミクロンBA.5でした。ワクチン未接種者でBA.5に初めて感染した人は多かったようです。おそらくここで紹介した論文と同様の結果が期待できると予想します

つまり、ワクチン未接種の状態でBA.5に初めて感染した人はBA.5から派生してこれから流行する新しい変異株への感染や発症からは十分に保護されている可能性が高い、と予想されます

論文に書かれている結論


BA.1感染の既往があり,mRNAワクチンを2回接種した医療従事者は,その後,BA.2再感染に対して長期にわたって十分に保護されており,3回目のワクチン接種では,そのハイブリッド保護に改善はみられなかった.この保護が将来の変異型にも当てはまるのであれば、時期や変異型にもよるが、ハイブリッド免疫のある人に追加ワクチンを接種しても効果は限られるかもしれない

常に新しい流行派がきそうになると、ワクチン追加接種を強く勧める人がいました。しかし、データは流行が終わらないと出ません。また、ワクチン推奨派は声が大きいですが、このような論文は日本からほとんど出てないです

また、この研究は18才以上の医療従事者についての結果です。子どもや高齢者でどうなるか?のデータはまだありません

ある時点のベネフィットを比較調査した研究から、ワクチン追加接種のベネフィットがとても小さい時期があったことがわかりました。ワクチン追加接種には、さらにリスクとベネフィットの比較があります

最後まで読んでくださいましてありがとうございます

上記論文の全訳はこちらです



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