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研究する人は深く考えずプラスミドをこんなふうに感じてる?

おはようございます。火曜日の朝、軽い読み物です
もう消えましたが、コロナ禍初期の頃にウイルスが表面についているだけでもPCRは陽性になる。という説が力を持っていました

今回の記事はウイルスを扱うBSL2 ラボのスタッフの実話です。ウイルスを扱うBSL2 ラボなので手袋、白衣、ゴーグル、安全遠心分離カップなどの適切な個人用保護具 (PPE) を常時使用しています。

ラボのスタッフの鼻分泌液を、qRT-PCRで新型コロナウイルスのヌクレオキャプシドN遺伝子を検査したところ陽性になりました

新型コロナウイルスのクラスターを出してしまったか?ということで、他のラボスタッフの検査もしたところ、数人が陽性となりました。6月4日のことです

このラボでは、4 月中旬から 6 月 3 日までヌクレオキャプシドN遺伝子のプラスミドを扱っている人がいたので、念のために本当に新型コロナウイルスに感染しているかを、ウイルスの別の遺伝子部位とプラスミド特有の部位を同じようにqRT-PCR方法で検査しました

具体的には、nsp10、nsp14、エンベロープと、プラスミドベクターの3つの領域です

その結果、ヌクレオキャプシドN遺伝子のPCR陽性と出たスタッフたちは全員が、コロナウイルスの遺伝子であるnsp10、nsp14、エンベロープが陰性でした。そして、プラスミドベクターの遺伝子が陽性でした。具体的には、アンピシリンおよびカナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子が 5 つのケースのうち 4 つから増幅され、このプラスミド構築物に固有のコドン最適化合成配列を含むサイトメガロウイルス (CMV) プロモーター-ヌクレオキャプシド接合部が 2 つのケースから増幅されました

さらに後者のアンプリコンは、シーケンシングによって実験室のプラスミドと同一であることが確認されました。つまり、プラスミドに固有のコドン最適化領域を含むDNA配列が確認されました

結論は、スタッフたちが陽性に出たのは、ラボで使っていたヌクレオキャプシドN遺伝子のプラスミドが鼻分泌液に含まれていたせいでした

プラスミドは付着しているだけのはず?

実際にリアルタイムPCRサイクル閾値(C T)の中央値は、それぞれ38.5 (範囲、32.5~42.8)および39.3 (範囲、33.2~44.1) と、量は少ない

しかし、このスタッフの皆さんは10日間隔離されたのですが、5人中4人が数日から数週間、さらに数か月にわたりプラスミドベクターの遺伝子が陽性のままでした。ただし、体調に変化のでた人はいません

この結果は、プラスミドが鼻粘膜に付着しただけ、とは考えにくく。論文には、プラスミドまたはプラスミドを含む大腸菌がスタッフ5人の鼻に長期間存在したのではないか?と記載されていますが、ひとつ付け加えます。陽性になった期間の長い人は、鼻の常在菌の中にプラスミドが入ったということはありませんか?

この論文のブログ記事 論文タイトル:Persistent Nonviral Plasmid Vector in Nasal Tissues Causes False-Positive SARS-CoV-2 Diagnostic Nucleic Acid Tests
この論文に関連するブログを紹介したブログ記事 タイトル:Curious case of nucleocapsid encoding Plasmids colonizing Lab staff


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