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SARS-Cov2に対するmRNAワクチン接種後に発症したIgG4関連疾患

日本の症例です。2023年3月8日にInternal Medicineに掲載されました

IgG4-related Disease Emerging after COVID-19 mRNA Vaccination: A Case Report
Intern Med. Aochi S, et al. DOI: 10.2169/internalmedicine.1125-22

リウマチ性疾患の既往のない78歳の日本人女性が、BNT162b2 COVID-19 mRNAワクチンを2回投与されました。2週間後に両側の顎下部の腫脹に気づき、顎下部の腫脹がしだいにひどくなったので耳鼻咽喉科を受診しました

血液検査でIgG4の上昇があったので, IgG4-関連疾患の疑いで東京大学医科学研究所附属病院アレルギー免疫科に紹介入院となりました. この時、全身状態は良好で、バイタルサインも正常でした。身体診察で両側の顎下部に無痛性の腫瘤が認められましたたが(図1A)、上眼瞼腫脹、乾燥症状、腹痛などの異常は認められませんでした

図1A. 矢印が両側顎下部の腫脹です

血液検査では高免疫グロブリン(Ig)G 4血症が認められました。

詳しくは、血清IgG(2,165 mg/dL;正常、870~1,700 mg/dL)、IgG4(1,100 mg/dL;正常、11~121 mg/dL)、血清IgE(1,398 IU/mL;正常、170 IU/mL以下)可溶性インターロイキン-2受容体(662.0 U/mL;正常、157~474 U/mL)、C反応性蛋白(0.49 mg/dL;正常、0.14 mg/dL未満)の上昇が認められたが、自己抗体および腫瘍マーカーを含むその他の異常な血液検査データは認められません(表1)

18 F-PET検査では、両側の顎下腺の腫大と、小葉の消失を伴う広範な膵腫大が見られ、腫大した顎下腺と膵臓にFDGが強く蓄積していました

図1B、1C 両側の顎下腺が腫大し、FDGの取り込みが見られます [矢印]
図1D1E 膵臓がびまん性に腫大しFDGの取り込みが見られます [1Eのオレンジから黄色の領域です]


米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ連盟(EULAR)の分類基準に従ってIgG 4関連疾患(IgG4-RD)と診断されました

プレドニゾロン30 mg/日で治療を開始し、臓器腫大は改善した。ここでは、mRNAワクチンと関連していた可能性のあるIgG4-RDの症例を報告する。
プレドニゾロン30 mg/日の投与を開始したところ、顎下腺腫瘤は速やかに縮小し、血清中IgG4値はそれよりはゆっくりと低下しました。プレドニゾロンの漸減を中止し、投与開始4ヵ月後にCT検査を行ったところ、顎下腺および膵腫大が改善していました(図2)

頭頸部CT 図2A治療前は顎下腺が腫大している
2B 治療後に顎下腺腫大は改善した
腹部CT 図2C 治療前は矢印ではさんだ膵臓が腫大している
図2D 治療後は矢印ではさんだ膵腫大が改善している

備考:本症例では、血清高IgG 4血症と炎症反応から,多中心性Castleman病と好酸球性多発血管炎性肉芽腫症が鑑別診断として示唆されましたが,ミエロペルオキシダーゼ抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)値は測定されなかった,FDG-PETでリンパ節の集積が認められなかったことからCastleman病の可能性は低く,また臨床症状として好酸球増多や肺・腎・神経などの臓器障害が認められなかったことから好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の可能性は低いと判断されました

考察:
1. 本症例の原因がワクチンであろうという根拠は、時間的な関係しかないので動物実験で確認が必要です
2. COVID-19 mRNAワクチン接種後に新規発症または再発したIgG4関連疾患の症例は既に4例報告されています。患者は60から70歳代で、1例ではワクチンの種類不明ですが、残りの4例はファイザーのBNT162b2を接種しました。接種されたワクチンの数は1~2回、症状は接種後1~8週間で出ています。
影響を受けた臓器は、膵が3例、肝臓が2例でした。IgG4の血清レベルは、1例では国の基準範囲内で、4例で上昇していました。
治療は、4例にグルココルチコイドを使用し、1例にリツキシマブを使用されました。グルココルチコイドで治療された患者は全員、治療に対して良好な反応を示しました



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