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【高校サッカーレポート】武蔵越生高校vs西武台高校(第100回全国高校サッカー選手権大会 埼玉県予選決勝トーナメント 準々決勝)

第100回全国高校サッカー選手権大会 埼玉県予選決勝トーナメント
準々決勝
武蔵越生高等学校 vs 西武台高等学校

日時:2021年10月31日(日)13:35キックオフ
会場:浦和駒場スタジアム
天気:曇り時々雨
気温:15℃
湿度:76%
風:微風
ピッチコンディション:良好

試合結果
武蔵越生 1-2 西武台
(前半 1-1)
(後半 0-1)

武蔵越生はSリーグ参加校のため、決勝トーナメントからの登場。一回戦に名門の市立浦和に2-0、大宮南に3-0と勝利。迎えた三回戦では優勝候補の昌平相手に1-0と殊勲の大金星。埼玉県だけでなく、全国の高校サッカーファンに衝撃を与える結果をもたらした。一回戦から続く強豪との試合で勝利を重ね、自信を深めてこの舞台を勝ち取っている。
一方の西武台は、高校総体県予選ベスト8によるシード校のため、今大会は決勝トーナメント二回戦からの登場。初戦となった二回戦では、花咲徳栄を相手に驚異の8得点無失点の完勝。続く三回戦では強豪、埼玉栄を相手に2-0と勝利を収め、順当にベスト8まで駒を進めている。
年間を通して行われるリーグ戦は、武蔵越生はS2Bリーグで暫定(※2021年9月26日更新時点)首位、一方の西武台がS1リーグで暫定(※2021年10月10日更新時点)首位を走る。
カテゴリーは違えどSリーグではそれぞれ首位。実力差がほぼ無いと言って差し支えない注目の準々決勝ラストマッチは、激しいミラーゲームとなった。

両校スターティングメンバー

武蔵越生(4-4-2)

おごせ

西武台(4-4-2)

スクリーンショット (105)

前半

立ち上がりは両チームとも様子を見るような展開。直前に行われた細田学園と武南の試合では、序盤から激しい展開を見ていただけに、ややゆったりとした入りの印象となる。特に武蔵越生は守備からリズムを作るチームであり、西武台も縦に急がず自陣からボールを保持しながら少しずつ前進する手法。西武台はもう一つの武器であるロングスローも交えながら攻略を試みるが、武蔵越生は昌平を無失点に抑えた自慢の守備陣がしっかりと守る。

膠着状態が続いていたが25分、バイタルエリアでボールを持ったMF市川がドリブルで持ち上がると右へ展開。ペナルティエリア内でパスを受けたFW細田が切り返し、DFをかわして左足でシュート。名手のGK関根の脇を抜けてゴールへ流し込み先制点を奪う。

33分にも西武台。攻め上がった左SB武田がクロスを入れると中にいた選手が合わせる。シュート自体は良いコースに飛んだものの、ここは武蔵越生GK関根が弾き出し追加点を許さない。西武台は先制後もチャンスを作るだけでなく、守備陣が出足の良さで武蔵越生のカウンターの目を確実に摘み取り、相手の狙いを悉く阻む。武蔵越生も2トップの伊藤、石本がスピードとキープ力を活かしてゴールを目指すが、西武台の組織的な守備に思うようなシーンが作り出せないでいた。

このまま西武台リードで前半を折り返すと思われた40分、武蔵越生がカウンター。FW石本が右サイドから中央へドリブルで持ち上がると、ペナルティエリア外でコンビを組むFW伊藤にスイッチ。後方からのランニングでスピードに乗った伊藤がボールを持つと、勢いそのまま西武台ディフェンのギャップを突いてペナルティエリア内に侵入。GKと一対一の場面を迎えるが、冷静にニアサイドに蹴り込んで同点。昌平戦でも得点した伊藤のスピードがここでも威力を発揮し、武蔵越生がこれ以上ない時間帯で追い付くことに成功した。

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後半

嫌な時間帯での失点で前半を終えた西武台は、後半に入ると15分の場面。FW市川の落としを途中出場の吉野がダイレクトでミドルシュート。ペナルティエリア外、ゴールまで20mはあろうかという距離を右足で強烈に蹴り込むが、ボールはわずかにポスト右へ逸れてしまう。

そして迎えた21分。西武台は右サイドからのコーナーキックをニアで触ると、最後は走り込んだDF河合が押し込んで勝ち越しに成功。前半に嫌な時間帯での失点があっただけに、給水直前というタイミングでの得点は、非常に効果的であった。

武蔵越生も反撃に向けて続々と選手交代を進め、前線の層を厚くする。特に代わって入ったMF廣重は中盤でボールを受けてドリブルで切り裂く、あるいはサイドへ展開するなど攻撃の活性化に貢献。しかしリードした西武台の組織的な守備は強度を増しており、カウンター主体の武蔵越生は思うように崩せない。終盤まで粘る武蔵越生だったが、最後まで堅守でチャンスをも許さなかった西武台がこのまま試合をクローズ。準々決勝最後の勝ち抜けは西武台となった。

波乱が続く今大会について守屋監督は試合前、選手に「風が吹いている。しかしこの風は自分達にとって良い風とは限らない。風によって起こる波に飲まれないよう、慌てることなくしっかり波に乗ろう。」と語っていた。もっとも、前半に幸先良く先制するも、ハーフタイム直前という嫌な時間帯での被弾。それでもポジションを変え、気持ちに変化を加えることで波に飲まれず乗ることを意識させた。ミラーゲームで実力伯仲の両チーム。守屋監督が狙った効果的な気持ちの変化と、選手が焦ることなく波風を読み切ったことは、勝負の分かれ目として奏功しているはずだ。

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昌平を倒し、実力と自信を確実に上乗せした武蔵越生は、確かにやりにくい相手であったはず。かたや西武台は怪我人が多く発生し、決して台所事情は良くない。そのような中でも代役の選手が役割を果たし、チームとして逆境を乗り越えたことは、自信に繋がる結果だと言って良い。
準決勝で対戦する武南は、組織も個も強烈な難敵。その武南にも西武台は総力戦で臨み、全国出場に向けた仕上げに取り掛かる。

小噺

撮影した画像が残っていたため、やむを得ず使用しているが、スタジアムのオーロラビジョンには武蔵越生が武蔵”生越”と誤表記されている。筆者も現地では何か違和感を覚えたもののあまり良く見ておらず、最後まで気付いていなかったが、記事作成時に見直していたタイミングで発覚した。越生(おごせ)は確かに難読地名ではあるが、埼玉県での大会であるだけに、この誤りは少々驚いた。武蔵越生サッカー部の強化が、「越生」の街の発信と知名度向上に繋がる日を期待したい。

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