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【高校サッカーレポート】昌平高校vs武蔵越生高校(第100回全国高校サッカー選手権大会 埼玉県予選決勝トーナメント 三回戦)

第100回全国高校サッカー選手権大会 埼玉県予選決勝トーナメント
三回戦
昌平高等学校 vs 武蔵越生高等学校

日時:2021年10月23日(土)10:30キックオフ
会場:非公開
天気:快晴
気温:16℃
湿度:45%
風:強風
ピッチコンディション:ややウェット

【試合結果】
昌平 0-1 武蔵越生
(前半 0-1)
(後半 0-0)

優勝候補の一角と目される昌平は、高校総体県予選ベスト8によるシード校のため、今大会は決勝トーナメント二回戦からの登場。世代別日本代表候補を多数擁するなど、とりわけ個の能力にも注目が集まる。前週行われた二回戦では、飯能南を相手に5得点無失点の完勝を収めている。
一方の武蔵越生は、Sリーグ参加チームとして決勝トーナメント一回戦から登場。一回戦に名門の市立浦和に2-0、大宮南に3-0と勝利して迎えた三回戦。難敵を確実に撃破し、実力と勢いを兼ね備えて、この舞台に辿り着いた。

年間を通して行われるリーグ戦では、昌平がプリンスリーグ関東で暫定(※2021年10月10日更新時点)6位、一方の武蔵越生はS2Bリーグで暫定(※2021年9月26日更新時点)ながら首位を走る。

昨年決勝と同一カードの注目の対決は、昌平がディフェンディングチャンピオンとしての意地を見せるか、武蔵越生が昨年のリベンジを果たすか。試合は文字通り激闘と呼ぶに相応しい展開となり、意外な結末を迎えた。

両校スターティングメンバー

昌平(4-3-3)

昌平

武蔵越生(4-4-2)

武蔵越生

前半

ゲーム内容に影響を及ぼすほどの強風が吹き荒れる中、キックオフと同時に立ち上がりから昌平が攻勢を仕掛ける。3分、昌平は左サイドでコーナーキックを獲得。グラウンダーのボールを入れて変化を付け、スルーして流れたボールをペナルティエリアやや外からMF篠田翼がシュート。デザインされたコーナーキックと、入ってもおかしくないコースに飛んだシュートだったが、ここは武蔵越生GK関根選手が好守。これを皮切りに昌平が怒涛の攻撃を見せる。
12分には昌平が左サイドからのクロスにMF荒井が合わせるも、今度はGKが弾いてポストを直撃。直後のフリーキック再びMF荒井が直接狙うも、GKの正面を突く。
立ち上がり15分のうちに攻勢の昌平、守勢の武蔵越生という構図は明確になっていた。特に昌平の前線3枚は常にポジションを入れ替えながらテンポよくボールを回し、チャンスと見るやサイドバックも駆け上がって攻撃参加をするなど、サイドで幅を取りながら人数を掛けて効果的に攻めるシーンが目立った。一方の武蔵越生は昌平の攻撃に加え、強い向かい風に苦労する場面が目立つものの、GK関根を中心に守備陣が奮闘する。武蔵越生のファーストシュートは26分であったが、それまでは自陣ゴール前にほぼ釘付けの状態にされていた。

圧倒的に昌平が攻める展開が続いていたが、先制したのは武蔵越生だった。33分、武蔵越生の右SB髙村が送り込んだロングボールが強風によって上空で止まると、競り合っていた昌平のDF八木と武蔵越生のFW伊藤の足元に落ちる。イーブンのボールだったがFW伊藤が先に触って抜け出し、ゴール左へ鮮やかに流し込んで先制。ここまでチャンスらしいチャンスを創出できていなかった武蔵越生が、前半のワンチャンスをモノにした。

この得点で勢いが付いた武蔵越生ではあったが、昌平は動揺を見せることもなく対応し、依然として昌平の攻勢が続く。昌平は前半終了間際にFW小田に代えて同じくFWの井出を投入し、攻撃の活性化を図ったところで前半終了のホイッスル。武蔵越生が一点のリードで折り返した。

後半

後半になって更に攻勢を強める昌平は9分、左SBに回った小山田のクロスに中で待っていたMF荒井がボレーシュート。ビッグチャンスを迎えたが、武蔵越生の堅守に遭いゴールとはならない。その直後にも、昌平は前線に入ったMF篠田大輝がドリブルで切り込んでペナルティエリア内に侵入、シュートまで持ち込むがゴール左に外れる。

そして迎えた11分。昌平はDF本間からの浮き球のパスに途中出場のFW井出が反応し、抜け出してシュート。相手GKが足で処理するも、こぼれたボールにMF篠田大輝が反応。ついに同点かと思われた強烈なシュートは、またしても武蔵越生のGK関根が驚異的なセーブでチームを救う。この試合で昌平が最もゴールに近づいた瞬間であったが、ここでも武蔵越生の守護神関根が立ちはだかった。昌平は試合を通して「入った」と思う場面がいくつもありながら、最後の最後で精度不足や武蔵越生の守備に阻まれる光景が目立った。
リードを許しながら再三の好機を逃し、後半の給水まで無得点の昌平にも、徐々に焦りの色が出始める。しかし気が付くとそれまでシュートに持ち込めていたはずの昌平が、精度に欠いてフィニッシュすら持ち込めない、あるいは武蔵越生の守備に弾き出されるシーンが少しずつ目立つようになった。刻一刻と時間が過ぎる中、会場全体もよもやの結末を想定し始め、にわかに騒々しくなる。
終盤にはセットプレー時に昌平のGK西村も上がって得点を狙ったものの、最後まで集中した守りを見せた武蔵越生が逃げ切りタイムアップ。両チームがピッチに倒れ込むほどの死闘は武蔵越生が制し、前回大会決勝の雪辱を果たした。

試合終了と同時に武蔵越生イレブンは雄叫びを上げ、ベンチは歓喜に沸く。特に幾多ものピンチをファインセーブでチームを救い、勝利の立役者と呼んで差し支えない武蔵越生の2年生GK関根は、歓喜の涙を流していた。この試合に懸ける想いと、昌平という偉大なチームを打ち破る難しさと喜びが伝わる瞬間であった。
一方の昌平は80分を通しても、勝って不思議ではない展開が続いていた。しかし数多くの決定機を逃してしまっては、いくら技術や気持ちがあろうと、敗れてしまうのは必然。恐らく誰よりも選手が分かっているはずだが、一発勝負の怖さを思い知る結果となった。この日、昌平高校の選手権という大舞台は幕を下ろしたが、選手達はこの悔しさを胸に、必ずや次のステージで活躍してくれるだろう。

歓喜

この結果を受け、武蔵越生はベスト8進出が決定。次戦の準々決勝は西武台と対決する。今大会の決勝トーナメントではノーシードの武蔵越生だが、ダークホースと呼ぶには相応しくないほど、確かな実力を持ったチームである。三回戦まで楽な相手は一つとしてないが、難敵揃いながらここまで無失点。大きな自信に繋がるだろう。自慢の粘り強い守備で、優勝候補の西武台をどう攻略するか。県西部の雄が激突する準々決勝の舞台、今後の武蔵越生から目が離せない。

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