日本国内で実施されている「てんかん治療」の現状への患者さん達の疑問点①
まず最初に、これを読まれる医療提供者の方にお願いしたいことがあります。この投稿は、ここ数週間てんかん患者さんご自身やご家族とお話しして、皆様が思っている疑問点についてお答えしたものであり、日本のてんかん治療の現状や現場を批判するものではありません。念のため、最初に申し添えさせていただきます。
Q1:「症候群」と「症状群」は似ていますが、意味は異なります。
症候群(シンドローム):特定の病気や状態に関連する一連の特徴的な症状や兆候を指します。これらは共通の原因に基づき、予測されるパターンで発生することが多く、例えば「ダウン症候群」などのように明確に定義されています。
症状群:特定の原因や疾患に関連せず、複数の症状が集まって現れることを指します。異なる病気や状態に伴う症状が同時に現れる場合があり、原因は一様でないことが一般的です。
Q2:日本では「てんかん」は症候群それとも症状群のどっち属しますか?
日本では、てんかんは「症候群」に分類されます。これは、てんかんが単一の症状や原因によるものではなく、さまざまな原因や要因に関連する一連の症状や特徴(発作、意識の変化、筋肉のけいれんなど)が特定のパターンで現れるためです。また、てんかんは脳内の神経活動の異常が原因で引き起こされることが多く、その病態が複雑であることから「てんかん症候群」としての診断や分類もされます。
Q3:その医学的なエビデンスを教えて
てんかんは「症候群」として分類されいる医学的根拠に「症候群(syndrome)」とは、特定の臨床的特徴や症状が一定のパターンで生じる状態を指します。てんかんは単なる発作の症状を超えて、遺伝的、神経学的、または発達的な要因に関連した特定の発作タイプや発作を引き起こす脳の部位など、多様な要因によって特徴付けられた複数の「てんかん症候群」に分けられます。これにより、てんかんは病因や発作のタイプごとに分類され、治療方法や予後が異なる場合があります。
一方、「症状群(symptom complex)」は、より一般的にさまざまな症状が集まって生じる状態を指し、特定の病因やメカニズムが不明確な場合も含まれることがあります。てんかんは明確な発作のパターンや原因によって識別されるため、単なる「症状群」とは異なり、「症候群」としての位置づけが医学的に適切とされています。
Q4:一般的に行われているてんかん治療は対処療法が主ですが何故ですか?
一般的に行われているてんかん治療は、基本的に「対症療法(対処療法)」とされています。対症療法は、病気の原因そのものにアプローチするのではなく、症状の緩和や管理を目的とした治療です。てんかんの場合、主な症状である「発作」を抑えることが治療の焦点となっており、根本的な原因を治癒するものではありませんが、発作の頻度を減らしたり、生活の質を向上させたりすることが目指されています。
一般的に使用されるてんかん治療法としては、抗てんかん薬(AEDs)による薬物療法が主流です。これは発作を引き起こす脳の異常な電気活動を抑制する働きがあり、発作を予防する目的で継続的に服用されますが、てんかんそのものの原因を取り除くものではありません。また、薬で十分に発作が抑えられない場合には、迷走神経刺激療法(VNS)や、深部脳刺激(DBS)などの神経調節法、さらに根治が期待される脳外科手術が検討される場合もありますが、これらも原因の根絶というよりは発作の抑制が主な目的です。
そのため、てんかん治療の多くは「対症療法」の性質を持っていると言えますが、てんかん症候群の一部では発作の原因となる病変を摘出する外科手術が有効なケースもあります。このような場合は、原因に対する治療(根治療法)とみなされることもあります。しかし、てんかん全体における外科的根治療法の適応は日本では限定的であり、対症療法が治療の中心であることが多いのが残念ですが現状です。
Q5: 日本では多くのてんかんセンター的な組織が全国に多数あります。そこで医師が「患者のため」といって効果があまり期待できない治療方法取るの何故?
日本の多くの医療機関、特にてんかんセンターでは、さまざまな治療が提供されており、場合によっては効果が不確実な治療も含まれることがあります。以下のような理由が考えられます。
1. 個々の患者に合わせた治療の模索
てんかんは非常に多様で、個々の患者で症状の出方や反応が異なるため、標準治療がすべての患者に適応できるわけではありません。たとえば、特定の薬が効かない場合でも、異なる薬の組み合わせや治療法の試行が必要なケースがあります。そのため、医師は患者のために効果が不確実な治療法も試みることがあるのです。
2. QOL(生活の質)改善のための試行
てんかんは発作による影響だけでなく、生活全体に大きな負担をかけるため、発作の頻度を少しでも減らしたり、発作の程度を軽くすることで生活の質を向上させることを目指します。その結果として、効果が完全には保証されない治療法でも、患者の負担を軽減できる可能性があるなら試すことがあります。
3. 治療の選択肢の提示と患者への説明責任
医師は患者に対し、可能性のある治療の選択肢をすべて説明する責任があります。患者が選択の余地を持つために、効果が期待できない、あるいは未知の治療法でも説明し、希望に応じて治療を進めることがあるため、必ずしも医師が効果を確信しているわけではない場合もあります。
4. 研究目的や新しい治療法への試行
新しい治療法が確立するまでには、さまざまな試行錯誤が必要です。てんかんセンターのような専門機関では、てんかん治療に関する臨床研究も行われており、患者が治療法の発展に協力している場合もあります。これは、最終的にはより効果的な治療法の確立に貢献することが期待されます。
5. 家族や患者の希望を尊重する姿勢
家族や患者が治療法に対する強い希望を持っている場合、医師はそれに寄り添う形で治療を提供することもあります。これは、医師の倫理的責任としても重要であり、特にてんかんのように長期的なケアが必要な疾患においては、患者と医師との信頼関係が治療の成功において大きな役割を果たします。
これらの要因から、医師は必ずしも効果が保証されていない治療を行うこともありますが、それが患者の利益を最大化するための試行であることが多いと考えられます。
Q6:日本では何故?根本治療や対処療法の研究が進まないで、小手先だけのてんかん発作予知に研究が走るの?
日本でのてんかん研究の傾向が発作予知に向かう一方で、根本治療や対処療法の進展が進まないのは、以下のような複合的な要因が関係している可能性があります。
1. てんかんの根本治療の困難さ
てんかんの原因は多様で、遺伝的な要因、脳の構造異常、外傷などが複雑に絡み合っています。特に遺伝的要因や特定の脳機能の異常に起因するてんかんにおいては、根本治療が難しいとされます。現状では完治に向けた治療法が一部の症例に限定されるため、医学的な限界があるとされており、研究が対処療法や予防(発作予知)に集中する傾向が見られます。
2. 発作予知へのニーズの高まり
発作予知は、患者の日常生活の質を改善するために非常に重要と考えられます。突然の発作に備えるための予知技術の開発が、患者やその家族からの要望で進められていることが多くあります。特に高齢者や重度のてんかん患者においては、発作による転倒や負傷のリスクが高いため、発作予知技術が重視されているのです。
3. 現実的なアプローチとしての対処療法の重視
てんかん治療では、対処療法である抗てんかん薬の使用が主流です。抗てんかん薬は発作を抑えることに効果を発揮し、比較的安定した治療結果が得られるため、多くの患者に適用されています。薬物治療の改善や手術の精度向上といった対処療法に関する研究も進んでおり、実用的な成果が得られやすいため、こうした分野に多くの研究資源が注がれている側面もあります。
4. 研究資金の配分と技術的な現実性
根本治療に関する研究は長期的な研究資金や時間が必要であり、すぐに成果が出にくいのに対して、発作予知や発作管理は短期間で一定の成果が見えやすいという特徴があります。加えて、発作予知はデジタル技術やAI技術といった新しいツールを活用することで進展しやすく、日本の医療機関や企業もこの分野に投資しやすい傾向にあります。
5. 国内外の研究環境の違い
海外では、てんかんに対する基礎研究や遺伝研究が進み、根本治療の可能性が探られていますが、日本国内の研究環境や規制は、迅速な臨床応用や新薬の導入に関して制約が多いと指摘されています。そのため、日本国内で根本治療の研究を進めるのは難しく、実用性の高い発作予知や対症療法に集中する動きが見られるのです。
まとめ
総じて、日本のてんかん研究が発作予知に偏りがちな背景には、医学的・社会的なニーズ、技術的な実現可能性、資金的な制約が影響していると考えられます。
以上
To be Continued その2
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