衆議院選挙に出るにはいくらかかるのか?
情報政治学者(電子投票eVotingが専門)のDr.Hoshikenです。
「選挙にはお金がかかる(≒資金力が圧倒的優位)」そして「選挙が政治を捻じ曲げる」と言われております。
わかりやすい例としましては国会議員夫婦が起こした1億5千万円事件が挙げられるでしょうか。2019年の参院選広島選挙区で元法相の河井克行被告が公選法違反罪で一審実刑を受けたことは記憶に新しいと思います。
この1億5千万円は19年7月の参院選前の同年4~6月、党本部が克行被告と広島選挙区の党公認候補だった妻の案里元参院議(有罪確定)の党支部に入金(うち1億2千万円が税金から出ている政党交付金)されたもので、同じ選挙区で6選を目指していた岸田派重鎮の自民党候補に河井案里元参議院が選挙で勝利を収めることとなりました。
余談ですが自民党別候補陣営にも1200万円~1500万円ほど入金されていた様子です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/98393248bafb81694eef0f3126d69e9b265ace99
こちらの記事では1億5千万円のうち1億円超を機関紙や政策チラシの作成、配布費に充てたほか、人件費や事務所費などに使ったと説明がなされております。
※これはお金をバラまくことに使わなくてもそれくらい掛けられるものと言い換えることが出来ます。
選挙にお金が掛かり過ぎると、政治家は資金を捻出するために資金力のある企業や財界、政党から献金を受け、当選後はそのパトロンに対して忖度をするというしがらみが出来ます。長い間その状況が続いてしまった結果、本来の国民に目が向けられるべき政治は既得権益向けの政治になってしまったとも言い表せます(お金のバラマキや選挙が政治を捻じ曲げる点については別の記事でまた紹介させていただきます)。
では、実際に選挙に出るとどれくらい費用が掛かるのか?
実際に選挙に出馬してみましたので、なるべくリアルな金額をお伝えしようと思います。※多少は変えている部分がありますがご容赦ください
本記事は衆議院選挙についてです(地方議会議員選挙や現状で最も費用を抑えて当選する考察につきましてはまた次の記事でお伝えさせていただきます)。
組織のない政党と大政党ではまったく選挙のやり方は異なり、人ややり方によってまさに千差万別ですが、新人が最低限選挙戦を戦える金額程度と捉えていただければと思います(議員たちは再選するために、この費用を4年間のうちに貯めておかねばならないというのも事実だと思います)。
選挙までに掛かる費用
まず、こちらに音喜多駿さんが都議会議員選挙についてまとめてらっしゃるのがあります。
https://otokitashun.com/blog/daily/1406/
選挙期間前に掛ける費用というのは正直いくらでも、と言えます。ビラの投函・新聞折込・そのビラの印刷費・デザイン費、街に貼るポスターの印刷費・デザイン費・外注代・プラバン代。事務所費(家賃・礼金・仲介手数料・光熱費・ネット代金)、人件費などなど。この辺りは掛けようと思えばいくらでも掛けられ、その分優位性を出せる部分です(費用対効果は別)。
・選挙にお金が掛かってしまうことが政治が一般市民から離れて行ってしまう一因
・費用勝負をした場合、自民党や現職議員には相手にならない
・ない袖は振れない
・今回の記事は選挙の際に掛かる費用のお話
ということで、事前の政治活動関係につきましては割愛させていただきます。
おさらいですが、衆議院選挙の場合、現在は公示日(火曜日)に選挙管理委員会に出馬申請を行い、12日間の選挙期間を経て日曜日の投開票といった流れとなります。アメリカでは投票日は火曜日(大統領選挙他)で、州によって祝日となり、祝日としない州でも有給で投票に行くことを雇用主に対して申請をしております。投票はオンラインで行う事を提唱し続けているのですが、その話はまた次の機会に。
さて、いきなり公示日を迎えてしまいますと、公営掲示板に貼るポスターも期間中に使用するビラも新聞用の広報のデザインも活動の中心となる事務所も当日に用意は出来ませんので選挙前に多くの準備が必要となります。
立候補準備のための支出項目を挙げていきます。
まずは家屋費です。選挙に出馬出来るかどうかも不明ということもあり、出馬が確定するまでは節約しバーチャルオフィスで活動を行っておりました。選挙が近づき、出馬が確定した後に即選挙事務所をお借りしました(希望の党さんと候補者調整が入る入らないという状態で、確定したのは結局二週間前くらいでしたが・・・)。
星の場合、3件ほど物件申し込みをしましたが、選挙事務所という用途で二件は断られました。保証金額は通常の一年や二年契約ではない短期契約のため4か月分となりました(残った一軒のオーナーさんには保証金額を上げるのでということでお借りできた感じです)。そして、街宣車をはじめとしてビラなど色々なモノを運んだりするために駐車場を3台分借りました。実際はお手伝いの方や党の方が利用する時は3台以上のスペースが必要になりますので、それらに掛かる費用は雑費として計上します。
・バーチャルオフィス代金
月額15,750x5(6月~10月+5月は11,686)の90,436円
・選挙用事務所代金
礼金95,000円
月額賃料95,000円
管理費5,000円
保証金380,000円
更新保証料10,000円
仲介手数料102,600円
税金・その他94,898円
・駐車場借上料 39019円
礼金10,000円
月額賃料10,000円
保証金10,000円
仲介手数料8,000円
税金・その他1,019円
家屋費は家賃10万円のところを借りて96万3453円となりました。
続いて、印刷費です。公営掲示板に貼るポスターは雨に負けず、褪(あ)せない、剝(は)がれない特殊な加工が必要で、かつ自分の選挙区は654枚掲示板がありますので(予備としても800枚は欲しい)かなりお金が掛かります(選挙区によっては1500を超える掲示板数もあります)。他候補との比較が入る部分ですのでデザイン料も重要になってきます。
ハガキも候補者一人につき3万5千枚といった枚数の郵送代が公費負担となりますので、同等数刷る形となりました。
選挙期間中に駅で配ったり新聞折込に入れるビラも法廷頒布枚数は7万枚。こちらには立候補届けを出した際に渡される証紙を一枚一枚に張り付けるビラとなります。
はがき作成264600円
名刺作成25800円
ポスター作製費1137500円
ビラ作成453600円
印刷費は188万1980円となりました。
続いて広告費です。
街宣車関係(車本体、看板)、事務所の立て札や看板、タスキなどが挙げられます。歩行中や運転中に出くわす街宣車、選挙事務所はパッと見て注目を得られますのでデザイン性を持たせたり、統一感を持たせたりと色々な工夫がなされております。
街宣車には、
看板を載せるためのキャリア
看板(2700*1300*700)
スピーカー(150W2speaker)
音響バッテリー
アイソレーター
照明 20W防水蛍光灯x4&40W防水蛍光灯x2
シガーライターインバーター
ワイヤレスマイク
などなどの装備が求められます。軽自動車タイプでしたらおよそこの半額程度になります。改造車となりますので、実際には前日あたりに警察署に直接運転して持ち込み、検査&許可を得ることとなります。事務所もそうですが、立候補届が受理されるまでは布などで被らせた状態となります。なお、街宣車はトヨタリースさんの選挙セットを借りることとしました。
選挙自動車立札・看板作成50,000円
選挙運動用たすき作成20,500円
個人演説会立札・看板作成194,400円
事務所立札・看板作成162,000円
事務所立札・看板設置39,000円
街宣車代 57,240円
広告費は52万3140円となりました。
これ以外にも雑費として、事務所のトイレ用品であったり、電気代であったり、ユニフォーム的なアイテムを揃えたりこまごまと支出があります。
・食糧費:5000円
運動員食料飲料代:5000円
・雑費:27130円
運動員用ブルゾン
事務所フロア用マット
事務所トイレ用品
運動員駐車料金
新聞代
事務所電気代など
ざっくりと3万2130円ほど計上します。
最後に供託金です。小選挙区では300万円、比例選挙区にも並行して立候補する場合には+300万円を供託金として税務署に納め、その証明を立候補の際に提出します。こちらはある意味全候補者平等の金額となります。
ざっと、選挙までに掛かる費用を算出してみますと914万9203円。恐ろしい金額です・・・。
さて、最低事前準備は整ったとしまして、公示日を迎え立候補届を出し長い長い12日間の選挙戦がここから始まります。
選挙期間中に掛かる費用
まず一番大きいのは広告費でしょうか。選挙期間中は証紙を張り付けたビラを新聞に折り込むことが出来ます。折り込み費用は配送?会社によってことなり大体一枚4円前後の相場なのではないかと思われます。新聞を取っていない人が多くなっている昨今ということもあり、地域新聞紙と全国紙に分けて折り込みを行いました。ひたすら証紙を張り付け(早ければ一時間で1000枚くらい一人で出来ます)続け、貼り終えたものを配達営業所まで段ボール箱何箱にも詰めて持っていきます。最初の土曜日と次の週の土曜日の朝刊に間に合うように持ち込むパターンが多いのではないかと思います。
ビラ新聞折込 地域紙 58,320円
ビラ新聞折込 全国紙 213,840円
街宣車代 149,040円/12420
街宣車もレンタカーでしたので毎日1万2420円の費用が掛かりまして、広告費で大体42万1200円の出費となります。
同じく引き続き選挙事務所代が発生しております。家屋費として12万5750円掛かりました。
事務所得借上料
バーチャルオフィス代金
月額15,750円
選挙用事務所代金
月額賃料95,000円
管理費5,000円
駐車場借上料
月額賃料10,000円
次に人件費です。多くがボランティアで成り立たせるのが選挙であったりしますが、街宣車を運転したり、ウグイス嬢(女性)・カラス(男性)として連呼をしていただいたり、受付対応や電話での対応をする人など、事務員や労務者をお願いすることが可能となっております。上限金額は決まっておりますが色々とグレーなエリアともされております。自分の陣営はそもそも資金はありませんので本当に実費のお礼レベルの費用です・・・。
事務員報酬 一日平均6時間 4日間 時給1,100円
労務者報酬 日給9000円 4日間 3万6000円 二人で7万2000円 一人二日間で1万8000円
人件費は13万150円程度となりました。また12日間の運動員の食料飲料代として食糧費5万7882円程度掛かりました。1日5000円以下、朝昼晩で20人でやったとして250円以下・・・ほとんどボランティアです・・・。事務員さん運動員さん労務者さんの通勤?に掛かる交通費として6万9502円ほどかかりました。
これ以外の雑費としまして通信費、文具日、運動員駐車料金、新聞代や電気代などで1万9047円ほどこまごまと掛かります。
選挙期間中に掛かる費用としてはおよそ82万9719円でした。
選挙後に掛かる費用
さて、長い12日間の戦いの後の開票作業、当選落選が決まったのも束の間で、実際には撤退準備、会計報告準備などやることは多く残っております。
選挙が終えた瞬間に電話であったり電気、水道、そもそも事務所自体の解約作業をまず行います。月契約となりますので、選挙終了からその月一杯支払いをする必要がありまして、家屋費としては12万5750円掛かりました。
事務所得借上料 15,750円+100,000円+10,000円
バーチャルオフィス代金
月額15,750円
選挙用事務所代金
月額賃料95000円
管理費5000円
駐車場借上料
月額賃料10,000円
街宣車はレンタカーでしたので翌日の料金も発生しますのでササっと看板に張り付けてあるものを剥いで処分し、返却します。広告費としてレンタカー代11,880円。そしてこれがかなり手間であったりするのですが、県庁所在地にある選挙管理委員会への報告で何度もダメだしを受けたりして行き来します。事務所の中の必要品(パソコン)などをちょっとずつちょっとずつ引き取りに行きます。受かっていれば意気揚々と作業も出来ますが敗残兵となると惨めなものですのでトラウマのように事務所の扉を開けては整理や掃除をする感じですね。いろいろなものをファイリングしたりと文具日や交通費が費用として発生します。
・街宣車代
翌日自己負担分11880円
・文具費:2000円
・交通費:2万5000円
選挙期間後に掛かる費用はざっと14万3630円。
結論(総額)
立候補準備のための支出:915万1608円
選挙運動のための支出:91万5292円
選挙後の費用及び雑費:7万6652円
合計1014万3552円
いかがでしたでしょうか?
およそ国政選挙を戦う上で必要な金額を列挙してみました。高いか安いかは人によって異なると思います(いや、高いと思うのがマジョリティだと信じます)。選挙区によってはもっと費用が掛かるところもあれば掛からないところもあると思います。
参考までに当選した自民党議員の収支報告書での金額は5253万5426円でした。
衆議院選挙1回実施にかかる費用は事務的費用だけで588億円。「選挙にはお金がかかる」そして「選挙が政治を捻じ曲げる」と言われており時代に合わない古い制度の公職選挙法などを令和の時代に合わせて無駄なものを取り除いてスリムになっていくべきだと思います。電子投票の時代へ!
星も引き続きそういった世の中を目指して活動を続けてまいります。
最後までご覧いただきありがとうございました。