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【大不評】それでも、産婦人科医が会陰切開をする理由

産婦人科医の大事な仕事として、会陰切開および切開・裂傷の縫合があります。
分娩をとることは助産師さんもされますが、切開および縫合は2021年現在医師のみが行っています。

タイトルの「大不評」は言い過ぎかもですが、妊婦さんからは会陰切開についてマイナスな意見をいただくことが殆どです。

今日は、なぜ会陰切開をするのか?
ということについて書いてみます。

1.会陰切開とは

分娩直前に会陰(おしもの出口の部分ですね)をハサミで切開する事です。

アートボード 1

切開する場所は大きく分けて上の図(今回のために、イラレで作ってみました笑)のようになってますが、
私も含め現在は正中側切開が主流となっていると思います。
正中切開は産道が広がりやすい反面、後から述べる直腸障害へとつながりやすいです。
即切開は、後の痛みが少ないと言われていますが、産道が広がりにくい。
間をとって、正中側切開が多用されているのでしょう。

和痛分娩ではない場合、多くの場合は局所麻酔をしますので、切開時の痛みは心配しなくても大丈夫ですよ。

2.会陰切開をする時

・会陰進展不十分
赤ちゃんの頭の直径は10cmほどあります。
会陰は分娩の際、赤ちゃんの頭が通過できるように想像以上に伸びます。
ただ、それでも伸びが足りない場合は、会陰が思わぬ方向に裂けることを防ぐため、切開をします。

傾向として、初産婦さん、年齢が高い方、分娩が急速に進んでいる方は、
会陰進展が不十分な傾向にあります。

・胎児状態不良
分娩時は、胎児心拍陣痛図を用いて、赤ちゃんが苦しい状態じゃないかを確認しています。
会陰切開をする理由の一つに、胎児心拍陣痛図で赤ちゃんの状態不良がわかり、
赤ちゃんを早く出してあげるために会陰切開をすることがあります。
その上で、必要があれば吸引分娩・鉗子分娩などの急速遂娩(急いでお産を終了すること)をすることもあります。

3.会陰切開をしないと

・産道裂傷によるトラブル
切開をしなかった場合、まず考えられるのは自然に産道が裂けてしまう事です。
この場合、多くは肛門方向に避けてしまい、時には肛門括約筋の断裂(三度裂傷)や直腸との交通(四度裂傷)となります。
四度裂傷の場合は、病院によっては救急搬送になったり、緊急手術となることもあります。

また、切開をした創に比べ、裂傷でできた創は縁が不整である為、
縫合に難航する場合が多いです。
この縫合がうまく行かないと、後に傷が離開してしまい、創の治癒が遅れることがあります。

・胎児状態の悪化
胎児状態不良のまま放っておくと、赤ちゃんが低酸素状態が続き、場合によっては脳に後遺症が残ってしまうことがあります。

4.会陰切開をした後

会陰切開をした後は、産婦人科医が縫合します。
(助産院で裂傷ができた場合は、ホッチキスのような器具で閉創するそうです)
多くは、吸収糸(数ヶ月後には溶けてしまう糸)で縫合します。
しかし、表面の部分は糸が出て気になると思いますので、病院によっては分娩後3−5日目(創が治癒してくる頃)に抜糸します。
また、埋没縫合(縫い目が皮下になるような縫い方)をした場合は、抜糸はしません。

残念ながら痛みはあると思いますので、内服薬を遠慮せず使用しましょう。
頻用されているロキソプロフェンやアセトアミノフェンは授乳に影響はありません。
また、円座などを利用して創部に負荷がかからないようにしましょう。

会陰は血流が豊富なので、1ヶ月検診の頃には創があったかどうかわからないほど治癒していることが殆どです。

5.会陰切開を回避する方法

ここまで、会陰切開の必要性を説明してきました。
しかし、やはり会陰がぐんと伸びてくれて切開も裂傷もなければそれに越したことはないですね。

会陰を伸ばすためには妊娠後期からのオイルによる会陰マッサージをするといいでしょう。

6.最後に

バースプラン(妊婦さんがどんな分娩にしたいか、事前にイメージを膨らますもの)を拝見すると、
「できるだけ、会陰切開はしたくないです。」というプランを見受けます。
もちろん、産婦人科医も助産師も同じ。
「できるだけ、会陰切開はしたくないです。」

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ただ、会陰切開を回避したがために、胎児の状態の悪化や産道裂傷のトラブルを招いては元も子もないのです。。

我々も必要と思った際のみ医療介入をさせていただいております。
皆さんも納得のいく医療を我々が提供し、
素敵な自分の分娩になるといいですね。

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