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通貨もデジタル?過去最大規模の実証実験をした「デジタル人民元」は成功するか?

中国は深圳市で10月11日から過去最大規模となるデジタル人民元の実証実験を行った。実験は抽選で市民5万人に1人当たり200元(約1,500円)を無料配布。高級品の店から軽食レストラン、スーパーマーケットなどで使用できる準備がされ、関係者は中国人民銀行(中央銀行)が発行する世界初のデジタル通貨実用化へ向けた一歩として実験を高く評価した。

なぜ中国は人民元をデジタル化したいのか?

中国が人民元を世界に先駆けてデジタル化したい理由は、中央銀行が紙幣やコインにかかるコストを下げられる、政府や税務署がお金の管理・統制がしやすしい、紛失や盗難のリスクが低くなる、などあります。国家側と国民側でメリットとデメリットを簡単にまとめるとこのようになる。

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出典元:Have a good cashless

しかし、1番の理由は国際的に信用度が低く”弱い人民元”をデジタル化して東南アジア諸国に普及させることでドル、ユーロ、円のように国際的な決済に使える基軸通貨にしたいという狙いがある。要は、利用者のニーズよりも国家のニーズ優先している。

現在、国際的な決済は米ドル主導の国際的な決済ネットワーク『SWIFT(スイフト)』がメイン。2018年の世界の決済では米ドルが38%、これに対して人民元は1.8%と大きくかけ離れている。中国はまず東南アジア諸国に中国製のスマホとデジタル人民元をセットで配りそのプラットフォームで貿易の決済をして一気に普及させることで、米ドル中心の経済圏とは別の経済圏をつくり人民元の国際的な地位を上げる狙いがある。

しかし、国際的な信用や人気も無く、使い勝手も悪い通貨である現在の人民元をデジタル化したところで、世界中で使われるようになるか?は疑問が残る。

実証実験で使われた人民元アプリはアリペイやウィーチャットペイと同じ

デジタル人民元の使い方はアリペイやウィーチャットペイと同じ。ユーザーはデジタル人民元のアプリをダウンロード。銀行口座と紐付けしてウオレット(デジタル財布)に入金。支払う時にアプリで生成したQRコードを店舗の決済端末で読み取り利用する。

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実証実験で使われたアプリのUIを見ると、アリペイやウィーチャットペイになんとなく似ている。

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仕組みも同じ、UIも同じとなると、中国で既に普及しているアリペイやウィーチャットペイと何が違うのか?

それらとの大きな違いは「オフラインでも使用できる」ことらしい。銀行口座に預けてある資産をアプリ上でデジタル人民元に変換しておけば、ネット回線に繋がっていない状態でも、端末同士で送金ができるという。まさに紙幣・硬貨(法定通貨)の代替であり、アプリは財布のような存在だが、さらに少額決済であれば銀行口座との紐づけや実名登録をしなくても利用でき、現金のように匿名性も保たれると現段階で公表されている。しかし、それがユーザーのメリットになるかは疑問である。

出典元:ハーバービジネスオンライン

アプリのUI/UX面の細かい使用感はわからないが、実証実験をした深圳市の一部のユーザーからは、既に普及している民間決済アプリの方が良いとの声もあったようだ。

現在アリペイやウィーチャットを使っている中国ユーザーが将来的にデジタル人民元への切り替えるかどうか?はその利便性、信頼性を含めた価値次第だと思われる。

今後の実用化への具体的なロードマップは公表されていないが、中国は2022年の北京冬季五輪の会場内での運用を計画中のようだ。

日本でも日銀が円のデジタル化を検討開始

中国以外でも、中央銀行が発行する通貨のデジタル化はアメリカやイギリス、カナダ、日本、韓国、スウェーデン、シンガポール、欧州などで既に調査・研究や開発が進められている。

日本でも日本銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行に向けた実証実験を来年度の早期に始めると発表した。

日本を含め、CBDCに関する世界の動きは、急速に活発化しているようだ。今後もこの動きに注目していきたい。

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