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9-0

19の秋、浮気された。
はー?と思うけど、はぁ…とも思う。
なんなんだ浮気って。人間のする所業ではない。
私の心はなんだかんだそこから腐った気がする。


本気で結婚するのかなって思ってた。
彼の好きな食べ物が売り切れていて
私がこれにする?と別のを提案しても
顔にわかるくらい怒ってこれが食べたいんだっていう
今思えば訳が分からないくらいに我儘だった。
じゃあ自分で作れ!と思いつつ、
ケーキ買って帰ろうと言うと
渋々納得してた彼の手を繋いで
ケーキと彼の手で両手が埋まって
カッポカッポとサンダルを鳴らしながら
帰るあの時間が好きだった。

20になってしまうじゃないか。
彼のせいでと思うのはもうやめにしよう。
どう頑張っても前を向いても、泣くのはやめにしよう。
自分を無下にするのはダメだよ。
自分のこと愛おしくてたまらないみたいな
そんな気持ちを持ち合わせられたらいいな。
私が誕生日を迎えようとすると
桜はいっつも満開になって祝福してくれるんだ。
ほら見ろ。自然は私の味方なのだぞ。
意味もなくショートケーキを2個も買って、
太るなと思いながら私がふたつ食べたの。
あんたと食べた時より何倍も甘ったるいな。

お幸せになんて言わない。
地獄で分け合ったケーキを最後の晩餐にでもしやがれ。
私は20歳になるんだから、幸せになるの。
誰かの手によってじゃなくて。自分の手で。

9から0になるなんて、あまりにも恐ろしい。
今まで培ってきたものが通用しなさそうだ。
だって0だもの。
だから私は0から手探りでまた泥まみれになりながら生きるよ。

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