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恒星を生物学的に考察してみる

この投稿は,iGEM・Synthetic biology(合成生物学)・Japan Advent Calendar 2022の24日目です.

メリークリスマス!
みなさんこんにちは!iGEM UTokyoのチームリーダーを務めております東京大学理科二類一年のなぎ(@Angelo_Stellare)と申します.
アドベントカレンダーの12/24の枠をTokyoTechのばみやさんから強奪しました譲ってもらいました!いい話.ありがとうございます!
tax_freeが「題材は本当になんでもいい.昨日の夜ご飯についてでもいい⁽¹⁾.分量も七言絶句とかで構わない(意訳)」と言ってたので,「医学科で仮面浪人してた一年間で研究室入って実験してた経験がiGEMで活動する上で役に立っている」という話でもしようと思ったのですが,それだとあまりに自分語りすぎて面白みに欠ける気がしたので,今回はもう少し捻った話でもしたいと思います.
というわけで,合成生物学からあまりにかけ離れたお話をしちゃいますがお許しください(これは本当に申し訳ないので,後書き的なのでちょろっとiGEMの話をします).

(以下の文章は私の恒星に対する拙い理解をもとに書かれています.間違いもたくさんあると思われるので,間違い等見つけたらしれっとDMで教えてくれると嬉しいです)

早速ですが,皆さんは恒星⁽²⁾を知っていますか?

恒星とは

天体内部の核融合によりエネルギーを作りだし、自ら輝いている天体。

天文学辞典「恒星」(https://astro-dic.jp/fixed-star/)より引用

のことです.

いやまあ知らない人はいないですよね.みなさんが日頃恩恵を受けている太陽が恒星の一番身近で代表的な例です.
唐突なんですけど,私,生まれ変わったら恒星になりたいんですよ⁽³⁾.

「何を言ってるんだこいつ」
「生物以外に生まれ変わるなんてできるわけがないだろ」

などの意見が飛んできそうですね.
確かに「生まれ変わったら猫になりたい」「生まれ変わったらフムフムヌクヌクアプアア⁽⁴⁾になりたい」などの意見は納得がいくものの,無生物に生まれ変わりたいという意見は「どうやって生まれ変わるねん」となると思います.あなたの友人がいきなり「来世は壺になりたい⁽⁵⁾」とか言い出したらきっとあなたは「どこから壺は一個体として存在し始めて,どこで壺は死ぬのだろう…」と壺の生死の定義について頭を悩ませ始めるでしょう⁽⁶⁾.
ここでまずは生物の定義を一度見直してみましょう.

多くの生物学者が認めている生物の定義とは、以下の3つの条件を満たすものである。
(1) 外界と膜で仕切られている。
(2) 代謝(物質やエネルギーの流れ)を行う。
(3) 自分の複製を作る。

「生物の『3つの定義』を知っていますか?」(https://diamond.jp/articles/-/307698)より引用

恒星は外界とは膜で仕切られていないし,代謝も行いませんし,自分の複製を作らないように思われます.一般的に認められている生物の定義には恒星は当てはまらなさそうです(それはそう).
しかし一般的に生物だと認められていないものでも生死が定義できれば生まれ変わり先としては十分適切なのではないか?⁽⁷⁾と私は考えました.
というわけで恒星について少し考察していきましょう.

【注釈】
⁽¹⁾ちなみに私は最近夜ご飯にカレーメシを食べるのにハマってます.不健康.
⁽²⁾夜空の中光り輝いているあれ.東京だと街が明るすぎて夜空を見上げても星が見えなくて悲しいです.これが文明か.
⁽³⁾輪廻転生を信じていない人には厳しい導入かもしれない.
⁽⁴⁾タスキモンガラとも.ハワイ州の州魚に指定されています.顔がじわる.
⁽⁵⁾そういやiGEM TSUKUBAのプロジェクト案にフジツボ付着阻害剤の生合成がありましたね.フジツボは生物です.
⁽⁶⁾アニミズム的思想に則れば,無生物に宿る霊魂になりたいといったところでしょうか.
⁽⁷⁾生まれる瞬間と死ぬ瞬間があれば生まれ変われそうじゃないですか?私はいけると思います.


1.恒星の誕生

星間分子雲と呼ばれる主に水素分子からなるガスの集合体で恒星は誕生します.

恒星が誕生するeagle nebula(Credit: NASA, ESA/Hubble and the Hubble Heritage Team)

星間分子雲の中でも密度が高い箇所で星間ガス同士が重力で集まり,収縮を始めます.
この重力収縮に伴いガスの重力エネルギーが解放され,中心は高温になっていきます.高温になったガスでは圧力も高くなり,圧力により膨張しようとする力と重力により収縮しようとする力がせめぎ合うようになり,収縮が止まります.この天体のことを原始星と呼びます.

重力による収縮と圧力勾配による膨張が釣り合った状態は下の静水圧平衡の式で表されます.M_rは天体中心からの距離rより内側にある部分の質量です.

静水圧平衡の式

その後も周りのガスが原始星に降り積り,原始星の中心温度が1000万K程度になると水素原子の核融合が始まります.こうして核融合反応で光り輝く主系列星が誕生します.

2.恒星の死

恒星には死もあります.いわゆる超新星爆発と呼ばれるやつです.
核融合が進むと中心部が鉄で占められるようになります⁽⁸⁾.鉄の原子核は安定なので,鉄よりも重い元素はできません.
鉄で中心部が占められるようになると中心部の温度が高まり,恒星の中心部では黒体放射による光で鉄の光分解反応が起きます.

鉄の光分解反応

この分解反応は吸熱反応なので星の中心温度は下がり,その結果重力収縮がより進み,温度が上昇し鉄の光分解がさらに進むという正のフィードバックがかかり,重力収縮が一気に進みます.
急激に減圧した星内部は爆縮し,衝撃波や大量のニュートリノが生成され,外層が吹き飛ばされます.これが超新星爆発です(正確にはⅡ型超新星爆発.Ⅰ型については今回は省略します).
この超新星爆発を恒星の死としていいでしょう!⁽⁹⁾

ちなみにこのとき鉄より質量の重い元素(ウランまで?)が作られ,それまで核融合で作られた元素と一緒に撒き散らされます.これらの元素の一部が地球上の生物などを形成しているわけです.つまるところ私たちは実質昔恒星だったものからできてるわけですね.すごい!

【注釈】
⁽⁸⁾水素やヘリウムが燃え尽きて重力収縮し温度上昇が起きた後,次の元素の核融合が始まる温度まで達さなかった場合,収縮しながら縮退圧がガス圧を上回ってしまい,鉄が生成される以前に白色矮星となります.まあこれも星の死でしょう.
⁽⁹⁾このあと中心部からは中性子星やブラックホールが誕生しますが,それは人間で言うところの火葬した後の骨みたいなものでしょう.

3.恒星の輪廻

星間物質の輪廻(wikimedia commons)

超新星爆発は星間空間に大量のガスを放出し,それを材料として次の世代の天体が誕生したり超新星爆発の際に星間空間に放出されるエネルギーが星間物質の収縮につながり新しい星形成が始まったりする場合もあります.

さて,ここまで読んでくれたあなたならわかると思いますが,恒星は生まれる瞬間と死ぬ瞬間を定義でき,それに輪廻まで行います.これは生まれ変わり先として適切だと思いませんか?思いますよね!
でもこれだけだと誰でもかけそうな内容で記事として何か物足りない感じがあります⁽¹⁰⁾.
さて,そこで最初に私が書いたことを思い出してください.

恒星は外界とは膜で仕切られていないし,代謝も行いませんし,自分の複製を作らないように思われます.一般的に認められている生物の定義には恒星は当てはまらなさそうです(それはそう).

このページの序文より

恒星は外界とは膜で仕切られていない←ほんまに?
代謝も行いません←ほんまに??
自分の複製を作らない←ほんまに???

というわけで,早速考察していきましょう!⁽¹¹⁾

【注釈】
⁽¹⁰⁾内容に妥協は許されません.
⁽¹¹⁾以下だいぶガバガバ理論が続きます.反論したい気持ちもわかりますが,最後に全部回収する予定ですので,ひとまず生暖かい眼差しでご覧ください.

4.恒星に膜は存在するか

さてまず「膜」とは何者でしょうか?

膜(まく)とは、面積に対して厚みが無視できるほど薄いような物を指すのに用いられる呼称。一般的には、柔らかくひらひらしているようなものを指すことが多く、硬くて特定の形状を持ったようなものに対しては用いられない場合が多い。

wikipedia「膜」(https://ja.wikipedia.org/wiki/膜)

なるほど.要は厚みが無視できるような薄いものを膜というんですね.

・・・
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・さすがに恒星に「膜」は存在しなさそう…

うがぁ…論じてる対象が惑星とかだったら「惑星大気は当然膜!」という屁理屈理論が使えたのに…恒星だと流石に無理があるなぁ…
生命現象を起こす場と外界との間に明確な境界がないと流石に恒星が生物であると主張するのは厳しい気がするんですよね.うーん何かいい方法はないか…

いやでもこれ「膜」という明確な境界が欲しいってだけで,恒星と外界との間の明確な境界線を決めてあげれば耐える気がしますねこれ(え?)⁽¹²⁾.

ところで恒星と外界の境界線って恒星の半径にあたると思うんですけど,これは私の勉強不足かもしれませんが⁽¹³⁾,恒星の半径の定義?というかどこまでを恒星として見なすのか?がイマイチ把握できていないんですよね(有識者いたら教えてください).
というわけで先ほどお見せした静水圧平衡の式

静水圧平衡の式

この恒星の密度が一様だと仮定してあげるとM_r=(4π/3)ρ(r^3)より,上式に代入後積分してあげて,

静水圧平衡の式を積分した式.P_cはr=0での圧力.

さらにP(R)=0なので,

恒星中心部での圧力

M=(4π/3)ρ(R^3)より,

上式からρを消しただけ

気体の状態方程式を用いて,

μ:平均分子量,m_p:陽子質量,k_b:ボルツマン定数

という感じで表されるRが境界線だと定義すれば良さそうですね!⁽¹³⁾
試しに上の式にμ=1.5(まあ水素とヘリウムが大半を占めるでしょう)として太陽質量および太陽の中心温度を代入してみると7.5×10⁶kmと出てきて,太陽半径7.0×10⁶kmとオーダーレベルではだいたい一致するわけですね.いい話.

というわけで,こんな感じで求まるR(恒星の半径)を使って,恒星の中心から距離Rだけ離れた面の内部が恒星の内部だと勝手に定義してあげましょう!これで半径Rの球内が恒星,球外が外界と言えるわけです.

【注釈】
⁽¹²⁾耐えません.
⁽¹³⁾おそらく,というか確実にそう.
⁽¹⁴⁾ダメです(それはそう).途中で「密度が一様だと仮定する」とか言ってますし,これ以外にももちろん考えるべき要素(輻射圧の影響とか?)はいっぱいあります.

5.恒星は子孫を残すか

さて次に考えるのは「恒星は自分の複製を作るか」という問いです.
ここでまず注意したいのが,恒星は遺伝情報を持たない⁽¹⁵⁾ということです(それはそう).
というわけで恒星が子孫を残したとして,その恒星は形成されるときの周りのガスの質量やガスの組成以外におそらくこれといって形状を左右する要素は存在しないでしょう.これはもう環境要因なので仕方ない.地球上の生物にもエピジェネティクスってのがありますよね⁽¹⁶⁾.それと一緒です⁽¹⁷⁾(はい?).
というわけで恒星は等しく同じ恒星のシステムを作るということで,恒星が子孫を残すとしたら紛れもなくそれは恒星自身の複製と考えて良いでしょう.

さて,問題は恒星が子孫を残すかどうかという話ですが,前にも述べた通り恒星には輪廻がありましたよね…?

超新星爆発は星間空間に大量のガスを放出し,それを材料として次の世代の天体が誕生したり超新星爆発の際に星間空間に放出されるエネルギーが星間物質の収縮につながり新しい星形成が始まったりする場合もあります.

このページの第3節「恒星の輪廻」より

超新星爆発によって新しい星形成が始まる.これすなわち新たな個体の生成と捉えていいのではないでしょうか⁽¹⁸⁾.

というわけで,恒星は「自身の複製を作り出す」と言っていいわけですね⁽¹⁹⁾.

【注釈】
⁽¹⁵⁾この章の議論の一番大きな穴ですね.詳しくはまた最後の方でお話しします.
⁽¹⁶⁾なんでもかんでもエピジェネティクスを出せばいいというものではない.エピジェネティクスの研究者に怒られるぞ.
⁽¹⁷⁾違います.鵜呑みにしないでください.
⁽¹⁸⁾怪レい日本语くらい怪レい.
⁽¹⁹⁾ダメです.

6.恒星のエネルギー生成・エネルギー輸送

第1節・第2節でもお話しした通り,恒星は核融合によりエネルギーを生成します.もし核融合が止まってしまったら星内部の温度が下がり圧力も下がるため重力収縮が進み,電子の縮退圧で支えられた白色矮星となってしまいます.

さて,恒星は一般的には「水素やヘリウムといった原子を燃料として,核融合によりエネルギーを作りだし輝いている系」といったようにみなされますが,収縮する力である重力に対抗する圧力(ガス圧・輻射圧)は温度に依存して大きくなるため,「核融合で取り出したエネルギーでもって自らの形を維持している系」とも捉えることができるのではないでしょうか.
ということは恒星は「生きる⁽²⁰⁾ために核融合によりエネルギーを取り出している」と捉えられそうですね.
そのようにして作られたエネルギーは輻射輸送や対流輸送により恒星表面に運ばれ光として放出されます.これは恒星のエネルギーの流れとして捉えて良いのではないでしょうか.

【注釈】
⁽²⁰⁾「生きる」の定義がなされてないですね.よくなさそう.

7.恒星のホメオスタシス

さてここからはオマケになりますが,恒星の安定性をホメオスタシスとして捉えることもできそうですね.核融合のエネルギー生成率について見ていきましょう.
太陽質量の2倍以下の構成ではp-p連鎖で水素の核融合が行われます.これは¹Hを結合させて⁴Heを作る反応です.

p-p連鎖の正味の反応

エネルギー生成率εは温度依存性が強く,ρT⁴に比例します.
太陽質量の2倍以上の質量の星ではCNOサイクルで水素の核融合が行われます.こちらはC原子,N原子,O原子を触媒として進む核融合サイクルなのですが,正味の反応はp-p連鎖と変わりません.
こちらのエネルギー生成率εはさらに温度依存性が高く,ρT¹⁶に比例します.
他にもヘリウムの核融合反応であるトリプルアルファ反応はさらに温度依存性が強く,ρ²T²⁴に比例します,
これの何がすごいかっていうと,中心核でのエネルギー生成率をL_c,恒星表面からの放出エネルギーをL_*とすると,普段はL_c=L_*の状態が保たれています.
仮にL_c>L_*となったとき,中心の温度Tと中心圧力Pが上昇することで恒星は膨張します.その後,膨張したことによりρ,T,Pが下がり,エネルギー生成率εが低下します.これによりL_cも減少することで元のL_c=L_*が保たれるというわけですね.どうですか?ホメオスタシスっぽく見えてきませんか?

8.恒星は生物か

まあ結論から言いますと,もちろん違います(それはそう).

まずは膜の存在.生物における「膜」は外界と自らの境界を分けるものとして必要だと捉えられています.
確かに膜が存在しなくとも「自己」と「外」の境界をはっきり決めることができればまだ生物と言っても差し支えないかもしれません.しかし今回の例では境界を定義する上で数式を用いている(数式を用いること自体は悪くはないですが…)上にその定義の中に仮定や近似などが入っており,当然”明確”な境界は決まっておりません.
例えば宇宙空間に「水の表面張力で自己と外界を分け隔てており,それ以外は地球上の生物と同じように代謝を行い分裂して子孫を残すようなシステム」が見つかった時私たちはそれを「生物」と呼べるでしょうか.他の水分子が周りにも存在した場合など,その系の自己と非自己の定義はより一層困難を極めるでしょう.そこの区別が難しいからこそ「膜で自己と外界を隔てている」という条件を今は外せないのでしょう.
とはいえ上記の例はあくまで「液体」の例.液体だと分子間力が働いている粒子間は全て自己として捉えて境界を定義できるかもしれません.しかしガスの集合体は…どの分子までを自己とするのかが非常に曖昧で,明確な自己非自己の境界線を引くことが難しそうです.残念.

次に子孫を残すか.これに関しては「遺伝情報を持たない」というのが一番危うそうですね…
例えば「人間と同じように意思疎通もできて代謝もするが,遺伝情報という概念がなく個体間に生まれた子供はある一定の形状をとるだけで親の遺伝情報を引き継がないようなシステム」が見つかったら,私たちはそれを生物と呼べるでしょうか.これは難しそう.
でも上記の例はいってしまえば「人工知能的なコンピューターが内蔵されたロボットシステムが支配している文明が見つかり,ロボットシステムは定期的に個体の死が訪れたり新しい個体を生成したりしている時,その人工知能的なロボットシステムは生物といえるか?」というところに繋がってきそうですし,これは流石に生物と言えなさそう.
上記の例を仮に生物だと呼べたとしても,恒星の場合はシステム的な生殖・発生を行わないのが問題になりそうですね.そんな勝手に自然発生的(?)にぽんぽん生まれてくるものを「発生だ!子孫を残すんだ!」なんて言われてたまるか!というわけでこちらも恒星についてはダメそう.残念その2.

最後に代謝を行うかですね.代謝とはなんでしょう.

生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わること、また、それに伴ってエネルギーが出入りすること。

デジタル大辞泉「代謝」

確かに恒星は核融合という化学(?)的な変化を通してエネルギーを取り出して自己の形を保ち,またエネルギーの輸送を行います.しかし個体を構成する物質は入れ替わってはいないですよね.
私たちは外界から複雑な分子を取り入れ,その複雑な分子を単純な分子へ変化させることで生じる結合エネルギーなどをATPという形に変換して,ATPの結合エネルギーでもって生体に必要な新たな物質を合成します.不要になった物質や作りすぎた物質,構造が崩れすぎたタンパク質などは外の世界に排出され,必要になった物質は外から取り入れた物質から新たに合成されます.この一連のエネルギー代謝および物質代謝の二つでもって「代謝を行う」と呼ぶのです.
さて,恒星は外界から物質を取り入れているわけではなく,自己の一部であるガスをエネルギーの供給源にしています.物質代謝も行いません.
これではまるで「生まれた瞬間に決められた量のグルコースを細胞内に蓄えています.このグルコースが尽きてしまったら死んでしまいます.新しくグルコースを生成したり外から取り入れることはできません」という状態の生物的システムと同じではないでしょうか.
うーん…これは…流石に代謝も行っていない判定になるかなぁ…残念その3.

というわけで見事に三つの項目について全て生物的要素は満たしていなさそうですね…
しかしそもそも「生物」の定義が完全には固まっていない以上,何が生物で何が生物でないかなんて論じるのは無理があるのかもしれません.
少なくとも今は地球上でしか生物が発見されていませんが,もし地球外で生命らしきシステムが発見されてしまった時に「これも生物!」「あれも生物だ!」みたいになっていくと,いつしか生物の定義が広がりまくって,結果的に「あれ…?これ恒星も生物にできるんじゃね…?」のような事態に発展しかねないのかもしれません.
もしかしたらこのような事態を回避するためにも,改めて「生物」の定義をより厳密なものにするべきなのかもしれませんね…⁽²¹⁾

【注釈】
⁽²¹⁾ちなみにそういうのは地球外生命体が見つかってからやればいいだろという反論はあまりにも正しいです.正論すぎてスリランカになりそう.

9.おわりに

ところでなんでこんな話題を思いついたかというと,私は昨年他大の医学部医学科で一年間仮面浪人していた経験があり,生化学の授業で一通り人体の代謝は見てきているんです.高校時代から生物学は好きだったのですが,医学科で受けた代謝の講義で代謝システムが生物が生物たる所以な気がしてきて以降,生物の「エネルギーの授受」と「エネルギーによって自己の形を保つ」といった部分に惹かれました.
話は変わりますが,私が仮面浪人をしてまで東大を目指したのは医学よりもアストロバイオロジー(宇宙生物学)に惹かれたためです.しかし東大入学当初の私は宇宙はもちろん物理に関しても全くと言っていいほど知識がありませんでした.
東大に入ってからさまざまな宇宙物理の授業を履修したり自分で勉強したりしているうちに,生物の”エネルギーを取り出して自己の形を保つ部分”に惹かれていた私は
「恒星って核融合でエネルギーを作り出して自己の形を保ってるし,なんか生物と似てておもろいな」
と思うようになり,今回の記事に至ったというわけです.ちなみに今は興味がだいぶ宇宙(それも惑星)に傾いてきています.

さらに全く記事とは関係のない話をしますと,去年一年間医学科に通っている間に遺伝子治療と再生医学をやっている研究室に週2〜3日のペースで通ってたんですよね.そこで一通りの実験手技を身につけさせてもらった経験が今iGEMで生きている気がします.少なくとも今年のプロジェクトで即戦力(に本当になれていたかはわかりませんが)としてウェットで動かせてもらえたという点はかなり大きな経験になったと思います.
本当にiGEMに関連するような話はごくわずかしかしていなくて申し訳なくなりますね.私は4代目のチームリーダー(UTokyoがiGEMに出場するのは三年目の年)なのですが,三年目で成長するか衰退するか決まるみたいなジンクスあるじゃないですか.あれのせいでかなりプレッシャーを感じていますね(笑).
今年の意気込みはAwardとってあわよくばtop10やFinalistを狙いたいなぁということでこの記事は締めようと思います,
ここまで読んでくださった皆様,本当にありがとうございました.

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