電撃文庫「アマルガム・ハウンド」を推したい。

承前


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 現在カクヨムで一部公開中の電撃文庫「アマルガム・ハウンド」について、1、2巻の刊行後、3話相当分がカクヨム公開となりそれも終了してしまった。
 本記事の筆者は延べて20年、年50冊ライトノベルを読んでる「だけ」のライトなライトノベルユーザーですが、本作品がこのような形で終わってしまったのが本当に悲しく、本記事執筆に至った次第です。

※現在1巻、2巻の冒頭が無料公開、3巻相当として3章が全体公開となっています。

1.「(サイエンス)ファンタジー捜査モノ」というジャンル事例

 本作品は掲題のジャンルに属している。ファンタジーとかSFとかの用語でどのような議論がなされているかとかは一切知った事ではなく、本ジャンルのファンである自分が勝手に決めてる区分であり、実例を挙げれば誰もがピンと来るものと確信している。以下に事例を挙げるのでこれらも是非。というか、これら作品が好きな人はアマルガム・ハウンドも絶対ハマると思ってます。

 言わずと知れた同ジャンル金字塔。ファンタジー世界と現代世界のコンフリクトが発生した社会で、刑事と剣士が異世界ゲート発生と同時に浮上したカリアエナ島(実質アメリカ管理下の国連信託統治領!!国連信託統治領が嫌いなオタクなんて居ない)の『サン-テレサ市警 特別風紀班』として異世界からもたらされた、あるいは異世界側へもたらした諸犯罪を捜査していくバディもの…ティラナかわいい…らけばい…

 第27回電撃大賞 大賞は伊達じゃなかった。架空の近未来のサンクトペテルブルクや欧州の雰囲気、抒情を素晴らしい筆致で配置しながら、顔の良いAIロボットとうじうじかわいい電索官が付かず離れずの心的接触を繰り広げるSF捜査モノ。人々はウィルス性脳炎への対抗として、タイトルにもなったユア・フォルマというインプラントを使用しており、それに付随する電脳記憶は刑事捜査にも使用できる。もちろん個人的経験丸ごとを改竄困難な形で記憶するそれへのアクセスは厳重な注意が必要で、それを可能とせしめる社会的要請を引き受けるのが『国際刑事機構<インターポール>電子犯罪捜査局』という形。お話はンン~ロボットとの色恋に繋がります??つながりそう??そっちはスーパー巨塔BEATLESSが待ち受けてるぞとハラハラしながら読める一作。

人類世界に魔物が流入し幾星霜。闘争と融和を経て至った現代社会で、人魔混合の『クリアト連邦共和国司法省 人魔調停局』の奮闘を描いた作品。処女厨両刀使いの女ユニコーンが人間主人公とまんざらでもない良い感じ???ってとこで終わった。この人魔調停局は前身が封建時代の魔物軍を離反した魔物らを含めた調停騎士団で…とあんまり掘り下げる間もなく続刊が途絶えた。残念過ぎる。

1-2.同ジャンルの良さとは

 物語で現代的な捜査をするからには捜査の主体となる組織が必要で、その組織が存在する理由や所属する団体・集団があって…と国家、人種、対立などなど我々が良く知るのと似通った形の何かが必然的に要請される。現代社会で生きる我々に無理なく理解できるそれらが用意され、そこに作品ごとのスパイスを加えて架空の社会が強度つよく生成される。
 現代社会にこういう技術/魔法があればどうなるか、どういう犯罪があり、どういう解決をこの組織と主人公が行うのか、というある種の思考実験を作家というウルトラスーパー超人たちが練りに練ってエンターテイメントに仕上げており、上述の本質的な取っ付き易さは世界設定の気づきのアハ体験、ここはこういう世界か!という読書の根源的楽しみの一つの得易さに繋がるのだ。

2.アマルガム・ハウンドにおける同ジャンルの"スパイス"

  本作品は魔法が存在する現代的な社会、大戦を経た法治国家において、魔法錬金科学の粋を極めた何にでも擬態可能な陸軍所属の流体魔法金属自律兵器アマルガム、その陸軍諜報部所属のハウンドの11番目、名称イレブン(かわいい少女ワンワン)が文人警官…の備品として(FBI的な )捜査局刑事部特捜班の流出アマルガムの捜査に協力する、という筋立てである。
 恥ずかしながら表紙とタイトルから、なんかかわいい少女兵器がなんかアクションで大活躍する系だろうなと思って発売当初はスルーしてしまっていたが、その実作中の大半は地道に足を使って捜査し、ここぞという締めにアクションが入るという正しく(サイエンス)ファンタジー捜査モノであった。
 戦争の傷跡があり、登録制の魔法使いが店舗を営んでおり、マジモンの呪術を使うカルト国家、指導者がおり、ハウンドを擁する陸軍とその研究所があり、力を失いつつあるが王家があり、その営みの中で捜査局は時に手遅れになりながら証拠を探し事件を解決に導いていく。それら営みのそれぞれが「かつてからそこにあった」手触りで描かれており、魔法が存在し、国家間の大きな戦争が存在していた社会があったらこんな感じなんだろうな、とじわりと認識できる凄腕の小説であった。
 かわいい少女ワンワン兵器であるイレブンは、表出される正確も含めて使用者の思うがままに擬態出来る。「ロボット兵器に心はあるのか」という我々が良く知る物語類型に当て嵌めて読むことも可能であるが、この作品は回答を保留している。冲方丁マルドゥックシリーズのウフコックみたいな有用性証明に必死…かと思えば兵器としてどの様な扱いを受けても構わないっぽいのに本作主人公テオに拘泥している節もあり本稿筆者は「罪深いかわいい少女ワンワン」という結論にはとりあえずは至った。
  

3.おわりに


 以上から本当に2+1巻でもう終わりというのは勿体なく、電撃文庫はもっと推していって欲しい。バディ捜査ものとして堅調?なユア・フォルマと同時に売り出すとか出来るのではないだろうか。
 あとはあぁ???勝手にジャンル設定してこれだけ???お前モグリすぎwwwwもっと他にあるだろこれとかこれとか!という指摘マジで渇望してるので教えて下さい。
 




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