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「銀河の死なない子供たちへ」感想、あるいは・ちゃんへの最初で最後の手紙

今年の夏、施川ユウキの「終末3部作」の3作目、「銀河の死なない子供たちへ」の下巻が刊行されました。

不死の姉弟に育てられた少女ミラは、一人だけ成長することに戸惑いながらも、幸福な時間を積み上げていく。
ある晩、姉弟の母親から二人の出自に関する秘密を明かされて…。(Amazon 内容紹介より)

※以下は「銀河の死なない子供たちへ」のネタバレを含みます。







人類のいなくなった地球で不老不死の身体を持ち悠久の時を生きる幼い姉弟が、初めて人間の少女ミラと出会い、いっしょに暮らすことになる……、というのがざっくりとした「銀河の死なない子供たちへ」のあらすじです。何万年という月日すら一瞬に感じてしまう不死の姉弟にとって、人間の一生などまさに一瞬でしかなく、彼らには必ず「お別れ」のときが訪れます。

この「時間軸の異なるもの同士がいっとき共に過ごす」というテーマ、すごくアイドルとオタクの関係に似ていませんか?(アイドルオタクという人種には、病状が深刻化すると「すべてのものをアイドルに喩えたがる」という悪癖があります。)

オタクからするとアイドルなんかすぐ卒業しちゃうし。でもそれはアイドルにとってもたぶん同じことで、自分が活動を続けててもオタクなんかバンバン推し変したり他界したりしてくし。物理的には触れられるくらい近くにいるのに、ステージの上と下では実は流れている時間そのものが違う。

遠くないうちに必ず訪れる「別れ」に対してどう向かい合うべきか、というのは、オタクにとって避けられない命題です。「銀河の死なない子供たちへ」の登場人物たちは作品の中で同じ命題について考え、それぞれ結論を出します。


・ちゃんへ(正確には元・ちゃんなのだろうけど、めんどうなので)

・ちゃんたちと過ごした2年間は、僕にとってとてもかけがえのないものになりました。8つの季節の記憶は全部、心の奥の箱の中に大切にしまってあります。だから、・ちゃんが・ちゃんとして経験してきた、楽しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと。叶えられた夢と叶わなかった願い。その思い出の片隅に僕がいれたなら、とってもうれしいなと思っています。

どんなときも相手の気持ちを考えてしまう、・ちゃんの優しさが好きでした。そしてそんな優しい・ちゃんには幸せになる資格があります。これはほんとにまじでめっちゃある。2年間いっしょにいた僕が保証します。だから、胸を張ってドヤ顔で幸せになっていいです。
同じ空の下、同じ世界、同じ時間軸の、知らない場所にいる・ちゃんの幸せを、僕はいつまでも祈っています。

最後に。
「銀河の死なない子供たちへ」で不死の少年が少女に送ったのと同じ言葉を・ちゃんに送ります。

「未来は君とともにある。」

さよなら、元気でね。

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