『後宮の烏 1』読後感想
あらすじ
内容の感想
気になっていたけど読んでいなかった『後宮の烏』シリーズに手をつけました。先日、「完結したけど読み終わった?」と当然のように聞かれたものの読んだことがなかった中華風ファンタジーです。
十二国記がバイブルだと公言しているので、中華風ファンタジーは全部読んでるものだと思われています。(彩雲国も、烏はうまく……も完結待ちで読んでないです)
1巻を読んだ感想は、「あらすじにあった『禁忌』はまだ出てきていないよね……?」です。
まだであってほしいという願いが8割。残りの2割で(あれかな……)と作中描写を思い浮かべています。もっと壮大な「禁忌」であってほしい。
具体的な内容に触れると、1巻で「夏の王」「冬の王」の巡り合わせまでを一気に書くの、引き延ばしがなくて好感がもてます。そこを明かさないのグダるよな、ってところはきちんと明かしてる印象です。
今日は巡り合わせについてモダモダと考えていた日だったので、この本はタイムリーでした。
もし神がいたとしたら「人間の巡り合わせ」の手伝いはしないだろうな……(お互いに恋焦がれた蟻とか蝉がいたとして、巡り合わせを手伝うか? という人間的な視点からです)と思っていましたが、この世界における巡り合わせ・引き合わせの主体は烏漣娘娘であるので、そう言うこともあるのだろうと。烏漣娘娘については1巻だけではよく分からないですが、復権を望んでいるのかな? 多分。人間的な枠組みで動いている世界だな、という感想は現時点では大きく外れていない気がします。
ただ、老獪そうな冬官の描写とかはもっと欲しかったですね。衛青とかも。人物描写が主人公目線でしか描かれないの、物足りなくもあり、でもだからこそスピーディーに進めても話が飛ばないんだよなあと納得してる部分もあります。多分ここは好みの問題。
前半の人間関係を把握するキーマンになる先代の皇后に至っては、周辺からの印象と情報だけで一度も出てこなかったので逆にすごい……。たぶん、読んだ人のイメージ全員分集めても、彼女のパーソナリティに関する印象はほぼ一致する気がします。
悪役を「悪役」としてしか書かないの、今時の小説としては珍しい気がして好きでした。実はこういう考えでって心情を描いたり、辛い過去を描いたり、あるいは突き抜けて狂った人で誰も理解できなかったっていう落とし所が多い気がしません?
作風の話
・端々から感じる恋愛描写と、人の情に靡きやすい孤高の少女という設定は、中華風ファンタジーと平安あたりの宮廷貴族ファンタジーのあいのこならではなんですかね。「友」になることを望む高峻と受け入れる寿雪という締めですが、最終的にはくっつくんだろうな〜という雰囲気が。……読み手が俗なだけかも知れませんが。
恋愛描写は嫌いではないですが必要もないかな、と思う派の人間です。
・設定的に寿雪はもうちょっと靡かないでほしいなぁなんて思いましたが、本来激情家とは言わないまでも、情感豊かなのに感情を殺して生きてきた二人が凹凸を埋め合うように手を取り合うというシチュエーションは好きなのでいいです。
(凹と凹な気もしますが、互いを互いの懐に埋めて正になるならそれでもいいですもんね)
・進行が基本的に事件解決型オムニバスなのは、烏妃のもつ力故なんだと思うんですが、これどうやって完結させるのか気になります。
それこそ「禁忌」に触れたが乗り越える、くらいしか思いつかないんですよね。全7巻でそんなに長くないシリーズなので、風呂敷は広げすぎずに美しく終わってるんだろうなとは思えど想像がつきません。
ひと月くらいかけてまったり読んで、ハマったら考察やらなんやらしようかな。